前書き
ガジル視点で行います。
『鉄竜(ガジル)VS手品師(ウテン)』
マグノリア、ガジルサイド
「へっ、サラマンダーにもいずれ雪辱を果たさなきゃならねえが、まずはあの増長した雷兄さんを潰す。随分とやってくれたからなぁ…問題無ぇよな?マスターイワン」
『ガァージル…今は信頼を得る事が重要だ。気付かれるな、あくまでフェアリーテイルの一員として行動しろ』
「んなもん、とっくにやってるぜ!」
『フェアリーテイルに罰を与えるのはまだ先だ!』
「ギヒッ、了解!」
闇ギルド、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のマスターであり、マスターマカロフの息子…ラクサスの父親のイワン・ドレアーと密告しているのは、ガジルだった。
いや、正確にはマカロフの依頼でレイヴンテイルに二重スパイをしていたのだ。
イワンとの会話が終わると、ガジルは駈け出した。
さて、ラクサスは何処だ?
…のど乾いたな…水でも買うか。
この行動がガジルの命を救う結果になるとは思いもしなかっただろう。
しばらく走っていたら、術式に嵌った。
「やべっ!?」
出てきた文字は、
<この術式にかかった者は、指定の建物に入るべし>
なんだこりゃ?
あっ、矢印が出た。
その先を行くと、ある一軒家に着いた。
「ここに入れってか?」
そう言って入っていくガジル。
マグノリア、ある一軒家
「ここに一体何があんだぁ?」
「It's Magic、ファントムのお兄さん!」
「!?」
ガジルは咄嗟に上を向いた。
そこにいたのは、宙に浮いてたウテンの姿があった。
<ウテンVSガジル、戦闘開始>
「僕は雷神衆の一人、ウテン!」
「ギヒッ、丁度良い、ラクサスがどこにいるのか白状させてやる!」
「出来るかな?」
そう言ったウテンは、行動を起こした。
「イリュージョン!」
「!?」
ガジルは咄嗟に後ろにさがった。
そして、ガジルがいた所にはナイフが突き刺さった。
「(なっ!?いつの間にナイフなんか投げやがったんだ!?)」
ガジルは驚いていた。
「ふふっ、僕の魔法に驚いたかい?」
「何したか知らねーが、上等だ!鉄竜棍(てつりゅうこん)!!」
ガジルは腕を鉄の棍にして殴りかかったが、ウテンに当たる直前で何かに当たった。
「(と、届いてねえ!?)」
こいつバリアかなんか張ってんのか!?
「だったら、鉄竜槍・鬼薪(てつりゅうそう・きしん)!」
ガジルの手を槍に変えて連続で突きを繰り出した。
だが、先程と同じ様に防がれた。
「(何だよこのバリアは!?)」
「無駄だよ。そんな攻撃、雑魚には通用しても僕には届きはしない!」
「!?」
「バミューダ、アスポート!!」
ガジルは咄嗟に鉄竜の鱗を展開させ、飛んで来た何かを防いだ。
「くそっ、また攻撃が見えなかった…」
「どう?僕達雷神衆に勝てる奴は…いないんだよ!」
次の攻撃に備えて身構えるガジル。
「ぶー」
ウテンがはずれと言わんばかりの発言と共に、ガジルの頭上に巨大な鉄球が現れた。
「なっ!?どわぁー!?」
間一髪避けたガジル。
「おいおい!?こんなモンどっから出しやがった!?」
「ふふっ、なんなら鳩も出そうか?」
ポン
ウテンは手を出した後、シルクハットを出した。
「そうだ。次は胴体を真っ二つにしてあげようか?勿論、タネ無しでね」
「(遊んでやがるなコイツ…つかこいつ、宙に浮いてるから風の魔導士かと思ったら、バリアを張ったり、ナイフを換装したり、無ぇ場所からモノを出させたり…コイツの攻撃よく見えないぜ…)」
「じゃあ少し早いけど、フィナーレだよ!閃光眼(フラッシュアイズ)!」
ウテンのセカンドの魔法、フラッシュアイズにより、眼から強烈な光を発した。
「ぐっ!?」
ガジルは思わず目を瞑った。
そして光が収まると、そこには、
「な、なんだこりゃ!?」
ガジルがいる足場以外全部消滅し、その下には針の筵になっていた。
「マジかよ!?」
「ふふっ、僕は物を構成させ、創り出す魔導士さ」
「こんな事出来る奴がいたのか!?これが雷神衆…」
「名残惜しいけど、最後のゲームを始めようか?ルールは簡単さ、君は二つの道を選ぶだけだよ。その場で嬲り殺しにされるか?下に落ちて串刺しになるか?」
「(おいおい、こりゃ少し厳しいな…だからこそ戦りがいがある!)」
ガジルはどこか楽しんでいた。
「シンキングタ〜イム」
ウテンの投げて来たナイフを避けながらナイフを食うガジル。
「(しっかし、コイツの魔法が解らねえとどうしようもねえしなぁ…)」
その時、次の攻撃を避けた時に、
バシャ〜ン
と音がした。
ガジルが給水用に買った水に当たった様だ。
「うをっ!?」
「ちっ、外したか」
「たくっ、ん?(なっ、これは!?)」
ガジルは何か気付いた様だ。
「(ギヒッ、そーゆー事か、まんまと騙されたぜ!)」
「?何を考えてるかは知らないけど、大人しくやられちゃi「な〜んだ」っな、何!?」
ガジルの反応は雅に、手品を知った観客のリアクションだった。
「お前の魔法のタネ、解ったぜ。ギヒッ!」
「なっ!?僕の魔法のタネが解けただと!?だったら証明してみろ!」
「ギヒッ、せーのっ!」
ガジルは、残ってた足場から勢い良く前に飛び出した。
「はっ!?や、止めろぉ、串刺しになるぞ!?」
「ギヒッ、バーカ」
普通足場の下に針の筵があると分かってるのに、飛び出す事は自殺行為でしかならない。
だがしかし、ガジルは、
スタッ
と何も無い所で着地した。
「ああ…あ…あ…」
「やっぱな、お前は床を消したんじゃねえ、見えなくしただけだ!テメーの魔法は、物を透明にする魔法だ!」
「ぐぅ!?」
図星を突かれたウテン。
つまりウテンの攻撃は、
ナイフや帽子や鉄球を創り出す→見えなくした物を見える様にしただけ
空中にいる→二階を見えなくしただけ
高速の攻撃→途中で見える様にしたから早く見えただけ
という風になっていた。
「や、やるね…だけど何故それに気付いたの?」
「さっき水筒を壊しただろ?それで状況が変わったんだよ!オレの後ろ、お前から死角に飛んだ水の飛沫、消し忘れてたな!」
ガジルは残っている足場と何も無い所の水飛沫に指を差した。
「し、しまったっ!?でも…それが何だと言うんだ!僕の魔法が解った所で、僕の勝ちは揺るがないんだ!お前からの攻撃は効かないんだからな!」
「ギヒッ、そいつはどうかな?鉄竜剣(てつりゅうけん)!」
ガジルは右手を剣に換え、チェーンソーの様に刃を回転させた。
「喰らえ!」
「む、無駄だ、僕には鉄壁のバリアg…」
「お前、俺が何のドラゴンスレイヤーだか忘れてる様だな?」
「何!?」
ズバン
ガジルが何かを斬り裂いた。
「ああ…あ…あ…」
ウテンがビビったのか、透明になってた部分が解けた。
「なるほど、それが鉄壁のバリアの正体って訳か」
ウテンのバリアは文字通りただの鉄の壁(窓付き)だった。
「俺は鉄のドラゴンスレイヤーだ。鉄壁なぞ切り裂けねぇとでも思ったか?ギヒッ」
「ああ…あ…あ…」
ウテンはもう青くなっていた。
完全にガジルにビビっていた。
「意外とちゃっちい魔法だったな、三流魔導士君よぅ」
ガジルは鉄竜剣の刃を回転させながらウテンに近づいた。
「く、来るなぁっ!?ぼ、僕は…僕は…ラクサス兄ィの親衛隊の…雷神衆だぁぁぁ!?」
「残念、お前はここで終わりだ!」
「ウワアアアァァァァァァァァァァッ!!?」
ウテンは泣きながら命乞いをして、ガジルが斬りかかった。
ドゴン
いや、斬りかかったんじゃなく、鉄竜棍で殴り、外へとぶっ飛ばした。
「ギヒッ。安心しな、殺しゃしねーよ!あっ、ラクサスの居場所聞くの忘れてた!?」
<勝者、ガジル>
そしてガジルは、ラクサスを探しに行った。