小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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箒Side−



私はいま、鈴の部屋の前にいる



なぜ、部屋を知っているのか?



……ま、まあいいじゃないか



扉をノックする



鈴side-



「はあ……」



ため息がこぼれる



中国政府の指令で転校してきたIS学園



それから数日授業など聞こえているわけでも、ましても聞いているわけですらなかった



考えているのはただ一つ



―――士に嫌われている?



ただそれだけ



憂鬱だ……



コンコン



扉がノックされる



同居人は今いない

何故いないかそれすらも覚えていない



そして同居人ならノックなどしない



誰だろう?



無視するのも悪く思い



扉を開ける。そこには



ポニーテールの黒髪の似合う少女が立っていた












たしか、箒だっけ?を部屋に入れて五分強



お互いに向かい合って座っているが一言も話していない



何をしに来たんだろう?



そんな疑問もすぐに消し飛ぶ



―――ああ、士の事か



そんな推測を立てた直後、箒が沈黙を破った……



「単刀直入に聞くぞ……士となにがあった?」



「は?そんなことあんたには―――」



「いいから話せ……!」



その声はとても同い年の女子が出すような声色ではなかった









「―――と、言うことよ」



全てを話した……IS部の事も全て



「ふむ、そういうことか……」



「ええ……」










「で?お前はいつまで落ち込んでいるつもりだ?」





箒が「今度はどこに行くんだ?」みたいなノリで聞いてくる



「あんた……私の話聞いてなかったの……?」



睨むように彼女を見る



しかし……



「ああ、聞いていた

それで?いつごろから明るかっただろうお前に戻るんだ?」



「あ、あんた!!」















「甘えるのもいい加減にしろ!!」











そう、言った



隣にいや、寮全体に響くような大きな声で

そう言い放った



「甘える?私が?」



「そうだ!甘えているんだ!

お前は、自分自身にも士にも甘えている!



可決策を見つけてもらおうとしてただ待っているだけのお前は士にも

すぐに謝ろうとすれば謝れた

おまえ自身にも甘えているんだ」



……っ!

…………


……はは……確かにそうかもね

でも……でもね……箒



「私は……確かにあんたの言う通り甘えてたのかもね……

でも、私は……私は



やっぱり怖いよ……」



そう、全て自分自身のわがままで士の体を壊してまでつくったものを

私は一発で壊したのだ



そんなのって……



思わず唇を噛む









そして、頭に暖かい何かが置かれる……



箒の手だった……

あんなにも怖い表情をしていた彼女が優しく微笑み頭を撫でてくれている



「あ、あんた……」



「つ、士ならこうすると思ってな……」



自然と涙がにじむ



「ふん!まったく……吹っ切れたか?」



手を離し腕を組みながら問うてくる箒



「うん……」



なにを今まで悩んでいたんだろう……



馬鹿みたいじゃない!



「ありがとね……そ、その聞いてくれる?

私と士の出会いって言うのかな?」



「ああ……」











私は転校してから数日でわりとクラスに溶け込んでいた



それもそのはず……皆を笑わせるために頑張って頑張って日本語も勉強したし

皆の話にも合わせていたから



嫌われないように頑張っていた



それもまた楽しかったのかもしれない



しかし、そんな日常も崩れるのは一瞬だった



目をつけられていたのだ……よくいる、いじめっ子3人組みに



最初はたいした事ない嫌がらせだった……



しかしそれはどんどんエスカレートしていった



肩を持てば自分も苛められる



一人、また一人と級友は減っていった



ただ一人の少年を除いて



その少年は苛められている私を助けては大丈夫?とは聞かず



こう、聞いた



―――昨日のテレビ見た?



と、嬉しかった

ただただ嬉しかった



心配ではなく普通に話しかけてくれるのがたまらなく嬉しかった

そんな彼に惹かれていくのも無理ではなかっただろう



そんなある日



昼休みだったろうか

私は苛められていた



黒板消しについたチョークの粉を頭にかけられ、油性ペンで机に落書きされる

強くは言い返せなかった



言い返すと暴力で返ってくるのは分かっていたから



しかし、彼女はまた皆を笑わせようと明るく振舞う……

それが3人組を煽り、



悲しく見える



ただただ耐えていると……



『いい加減にしやがれ!』



彼が机を殴りつけながら叫ぶ



『ふざけやがって……お前ら三人もそうだけどな

見て見ぬふりしてるお前ら全員ゴミ以下だ!

こいつが頑張ってるから皆も変われるかなとか思ったけど

とんだ検討違いだよ!』



そんな彼の名前を呼ぶ3人組の一人



『士……ならお前が守ってやれよ

アハハハハハハ!



なんなら結婚しちゃえば?』



その言葉に士は完璧にキレた

『黙れ!

おい!お前らは気づいてんだろ!?

こいつが頑張って俺らを笑わせようとしてる事くらいな!』



『なんで、気づいてやらないんだ!こんなゴミ共にびびってんのか?

ふざけやがって!こんな脇役の代表みたいな奴ら俺から言わせればパセリと変わらん!

こっち側に……鈴の味方してやろうぜ!」



たった二人しかいない側にもゆっくり人数がそろっていく



それはその3人を除くものになった



『な、なんだよ!お前ら!

やんのか!」



『はん!しょうもないこと言いやがって

コレがこいつが……凰鈴音が笑顔でつないできたものだ!』



『は、はん!それがなんだってんだよ!』



『自分一人が闇に堕ちたとしても、誰かを笑顔にしたい

 そう信じてる!

 こいつが人の笑顔を作るなら、俺はこいつの笑顔を作る!

 お前らは知らないだろうがな……こいつの笑顔、悪くない』



涙が止まらなかった



正直、そのあとの事は覚えていない

落ち着いたときにはクラスの皆が謝ってきていた



その日の放課後……



肩は並べず少し前を歩く彼に問う



『どうして助けてくれたの?』



すると彼は―――士は振り返り、



『言ったろ?お前の笑顔を作るって……



それに……これも言ったぜ?

お前の笑顔悪くない……ってな



だから……





―――ずっとじゃなくてもいいから笑っててくれよ』





恋を自覚した瞬間だった














「ほーう

で?自分の好きな男ののろけ話を延々と聞かされた私はなんて言えばいいんだ?」



「ご、ごめ……って

あんたも!?」



「ふ、ふん///

悪いか?ちなみにあの金髪もだぞ……」



イギリスの……セシリアだっけ?



まったくあの男は昔から変わらない



「まあ……私はそろそろ失礼させてもらおう」



「う、うん……ありがとね

……それと





―――負けないから」



「ふん、こちらの台詞だ」



士Side−



「はあ……はあ……」



俺はいま……





走ってます!

鈴の部屋に向かって



ってかどこだよ!?

鈴の部屋



次の角を右に曲がろうとしたとき



「おっと!」

「きゃっ!」



ぶつかりかけた人影



……鈴だった



呼吸を落ち着けて声をかける



「えっ……と、だな……」



「う、うん」



「そ、その……ゆ、許す!」



「うn……って、は?」



「えっと、いやお前の事だからきっと部のこと気にしてるんだろうな

とか思ったから許す!」



「……ぷっ」



「ちょっ……何笑ってるんだよ!」



「だって許すって……アハハ……なにそれ?」



「わ、悪かったな!」



「ハハ……ううん

私こそごめんね



その……私のこと嫌いになってない?」



不安げに上目遣いで俺を見つめる鈴



そんなの……



「当たり前だ……



いつか言ったよな



俺はお前の笑顔を作るから

お前の笑顔は悪くないだから―――」



そこでポンと頭に手を置き



「笑っててくれよ………ってな」



「う、うん!」





そこで箒とセシリアが乱入してきて

また口論を始める



3人で……



それを見つめる俺の顔はたぶん優しい顔してたんじゃないかな?

自分で言うのもなんだけどさ





そのあと泣きながら伸びに伸びきったラーメンを捨てたのは別の話(前話参照)

-6-
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