小説『リリカル世界の魔導師が遊戯王GXの世界にログインしました。』
作者:ラドゥ()

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ターン1 リリカル世界の魔導師は遊戯王GXの世界にログインしました。






『童実野(どみの)町』。



それは初代デュエルキング、武藤遊戯(むとうゆうぎ)を輩出した町であり、去年は伝説となったデュエル大会『バトルシティ』の会場となった町としても知られている。



故にこの町は“決闘者(デュエリスト)の聖地”とも呼ばれているが、そんな町の一画にその屋敷の姿はあった。



日本式の建築様式のその屋敷は現在社会の歯車の一部となっているデュエルモンスターズがI2社長“ペガサス・J・クロフォードによって生み出される前から存在しており、長い歴史を感じさせる。



そんな屋敷の一室にその少年の姿はあった。



「…………」

かりかりかり



あでやかに輝く黒髪を持つその少年は机に一冊の本を広げ、それを見ながらなにやらノートに書き取っていたが、やがてその手を止め「ふう」と溜息をつくと体の凝りをほぐすかのように「んっ」と一つ伸びをする。



「…ふう。そろそろ休憩するかな」



彼の名は更識遊斗(さらしきゆうと)。



かつて前世では時空管理局に勤めていた魔導師であり、現在ではこの更識家の長男。そして






転生者である。





















どうもこんにちわ。前回オーディーンの爺さんの手により転生させられた更識悠斗だ。



転生してからは更識『遊』斗という名前でこの更識家の長男をやらしてもらってる。(まあ長男と言っても上に一人姉がいるのが)



この世界に転生してから既に五年ほどの時間が経っており、俺も今年で五歳になった。



……これまでのことは正直思い出したくない。



別に家族に虐待されてるとかはないよ?むしろ愛されてると思うよ?



でもさ?転生、つまり産まれ代わるってことは赤ん坊から人生をやりなおすってことじゃんか?つまりは飢えないためにも母親の母乳をしゃぶったり、おしめの世話をするために思いっきり局部を晒してしまうはめになるわけで。



……後は察してくれ。一言だけ言うとご飯が離乳食にかわり、一人である程度の自分の世話ができるように成長するまでにだいぶ俺の精神は削られたと言っておこう。



さて、そんな俺が現在なにをしているのかというと、それは勉強である。



まだ五歳で早いと思われるかもしれないが実はそうでもない。



俺が転生したこの世界で産まれたこの『更識(さらしき)家』。最初はただでかい屋敷を見て「おお金持ちなんだな今回の実家は。やっふーい!」くらいにしか思ってなかったのだが、実はこの家ただの金持ちではなく、なんでも昔から日本という国にある特殊な仕事をもって仕える家柄なんだとか。



その仕事とは『対暗部用の暗部』。つまりは日本の不利益となる、また不利益をなそうとしている敵対力への対処、俗にいう『カウンターテロ』というやつである。更識家はそんなカウンターテロを代々家業としてきた専門家集団なのだ。



なのでこの更識家に産まれた人間は幼いころからそれ相応の英才教育を受けることになっており、俺も双子の妹とともに三歳のころからその教育を受けている。



更識家の教育は多岐にわたり、国語や算数などの学校で習う基本科目は元よりハッキング技術や施設への潜入技術に尾行術などの諜報活動用のスキルなどの特殊なスキルを身につける訓練もある。小学生に上がることには武術の特訓も開始する予定なんだとか。



その勉強を受けているうちに、俺は重大な問題が自身の身に発生していることを知った。



それは算数以外の科目の初心者用の問題で『満点』を取れなかったことである!!



……え?それがなんで問題なのかって?



よく考えてみてほしい。俺は前世で十一歳という若い美空で死んだとはいえそれでも小学五年生分。それも『聖祥小学校』という進学校で教育を受けたんだ。そこらの小学生クラスの問題程度なら楽勝で溶ける……はずだったんだか、結果は以下の通りになってしまった。



算数:100点
国語:30点
理科:60点
社会:30点
英語:20点



……とりあえず英語と社会はしょうがないんだと言い訳させてもらいたい。いくら進学校っつっても英語はまだ習い始めたばかりだったし、社会は前世とは歴史上で起こった出来事や地名などが大分違ってきているので赤点は取るべくして取った点数と言えるだろう。



だが国語と理科は正直言いわけはできない。前世ではそれなりにできたはずだが気づいたら殆ど内容を忘れていたことに気づいたのだ。



これが高校生や大学生でやる内容なら問題はないが、これが仮にも五歳時教える内容だということが問題に拍車をかけている。





ご さ い に お し え る な い よ う で だ ぞ!?





いくら俺が前世で管理局の仕事にかまけて勉強をおろそかにしてたからってこれはさすがにまずいと思った俺は、精神年齢合計十六歳のプライドもあり、こうしてきっちりと基礎から復習しているというわけだ。



ちなみに今教科書として使っているのは『猿でもわかる国語』。小〇館から出ている初級者用の国語の問題集。前世では国語の類は大の苦手だったので、今世ではその弱点を無くそうと重点的に勉強している。



後はデュエルの勉強にも力を入れている。



この世界に産まれていろいろ調べてみたのだが、この世界デュエルモンスターズが産まれたのは約十数年前。歴史は浅いはずなのだが社会の隅々まで浸透しており、なんとプロデュエリストなんて職業や将来デュエルモンスターズに関わる職業を目指す者たちが進むデュエルアカデミアなんてものも存在し、デュエルをより楽しむために立体映像(ソリッドヴィジョン)システムを内蔵した決闘盤(デュエルディスク)なんてものも開発され一般に普及しているほどだ。



デュエルの腕前が社会的地位に大きな影響をもたらすというオーディーンの爺さんの言葉は本当だったわけだ。



なので俺は将来このデュエルアカデミアに入ろうかと思っている。



このまま家業を手伝ってもいいのだが姉さんがいるので更識家の家長を継げるわけでもないし、このデュエルモンスターズに関係する能力が有能な人材の条件の一つとして重視される世界において、デュエルアカデミアを優秀な成績で卒業することは、どんな仕事においても大きなステータスになるので、入っておいて損はないと思ったからだ。



(そのためには今から勉強しとかないと)



最初、俺は「デュエルなら前世でやりまくってたんだ!デュエルアカデミアなんて楽勝だぜ!!」と思っていたが実はそうでもなく、この世界では前世の頃よりカードの種類がかなり増えており、さらに知っているカードでも効果の内容が違っているというカードが多々あり、そのためか前世では全く知らなかったコンボ、戦術、戦略が存在し、また前世では可能だったコンボ、戦術、戦略が不可能になっている場合もある。



そのためか、実はデュエルアカデミアに入学するには国語や数学などよりもデュエルについての知識を、一番勉強しなければいけない状態になっていたりする。



(さすがデュエルモンスターズが社会の一部になっている世界。ワクワクさせてくれるじゃないか)



……まあ勉強することは多いが知らないことを学ぶのは結構好きな方なのであまり苦にはなってないが(その代わり一度習った内容をまた習うのは苦痛でしょうがないけどね)。



とそんなことを考えていると、



こんこん

「ゆーとー。開けていーいー?」



ノックと共にドアの向こうから女の子の声が。この声は…。



「いいよー」



とりあえず入室の許可を出すとドアが開き、そこから一人の少女が現れた。



彼女は更識(さらしき)織姫(おりひめ)。この世界での俺の姉であり、次期更識家の当主の座を確約されている少女である。



「どうしたの姉さん。なんか用?」

「なにかよう?じゃないわよ。もう晩ご飯の時間なのにいつまでたっても来ないから呼びに来たんじゃない」

「あれ?もうそんな時間だっけ?」



時計を見ると時間は午後七時前。確かにいつも晩飯を食べる時間になっていた。



ちなみに家は可能な限り飯は家族全員揃って食べる決まりがある。なので特別な事情がないかぎり一人でも欠けていたらいつまでたっても食べることはできないのだ。



「あー…ごめん。ちょっと待ってて?」



俺は手早く勉強道具を片付けると椅子から立ち上がり姉さんへと駆け寄る。



「お待たせ。それじゃあ行こうか」

「ええ早く行きましょ?わたしもうお腹ぺこぺこ」



そう言うと姉さんは俺の手を掴むと、はやくはやくと急かすように引っ張るので、俺はそれに苦笑しつつ大人しく従うことにした。



さて、今日のご飯はなんだろうな?



















「遊斗を連れてきたわよ!」

「ご苦労さま。じゃあさっそく食べましょうか」



食堂に入ったとたんに元気よく発せられた姉さんのその言葉に微笑みながらそう返すのは更識(さらしき)静花(しずか)。俺のこの世界での母親だ。



いつもにこにこと笑みを浮かべているおっとり美人。優しくて料理も上手い自慢の母親だ。…怒ると凄まじく怖いが。



「お兄ちゃん遅いよ…」

「あはは、ごめんな簪。勉強に集中して時間を忘れちゃって」



頬を膨らませて不機嫌そうに口を開いたこの子の名前は更識(さらしき)(かんざし)。俺の双子の妹だ。



活発な姉とは違い大人しい性格で引っ込み思案だが、女の子には珍しく戦隊物やライダー物などの勧善懲悪の特撮が大好きで、そのためか俺たち三人の中では一番正義感が強い。



「ははは。まあまあ落ち着け簪。優斗も織姫も早く席につきなさい。今日は優斗の好物のビーフシチューだぞ?」

「本当!?やった!母さんのシチューはおいしいからな」

「うふふ、ありがと♪」



簪を微笑みながらたしなめるこの男性は更識(さらしき)楯無(たてなし)。俺の父親にしてこの更識家の現当主でもある。口ひげがダンディな我が家の頼れる大黒柱だ。……完全に母さんの尻にひかれてはいるが。



ちなみに本名は更識(さらしき)孝明(たかあき)という。“楯無”とは本名ではなく更識家の当主が代々名乗る“仕事名”なのだそうだ。



俺は父さんの声に従って急いで自分の席に着く。目の前にはサラダとやわらかそうなパン。そして今夜のメインであるビーフシチューが並んでいた。



食欲のそそる香りをただよわせるそのシチューは具だくさんだがよく煮込まれているのか程よく形が崩れておりとてもうまそうだ。



「それでは全員そろったから食べるとするか。それじゃあ一緒に」

「「「「「いただきます!」」」」」



さあ腹いっぱい食べてまた勉強だ。がんばるぞ!!

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