1話「何事モ知ッテル彼女ニ警戒セヨ」
「先輩」
ある日、俺は校舎裏に呼ばれた。
「大好きです」
しかもかなりの美少女。
長い漆黒の髪をなびかせて俺の瞳に潤いを与え、
濡れた瞳で俺を見つめる。
「付き合ってください」
俺がこんな美少女の願いを断れるわけがない!
「いいよ」
俺は即答した。
そう答えるとその美少女の濡れた瞳は、輝きを持ち、
「ありがとうございます!では、失礼します!」
そう言って、走り去っていった。
「可愛いな〜」
「おい、丞、お前あの子と付き合うのか?」
「うん」
「ずりー!俺に分けろ―」
「バーカ。魁人になんかわけるかー!」
そんな馬鹿な言い合いをしてると後ろから江島がやってきた。
「この高校の一年の咲間真登だな。今年に入ってもう5回は告白されてるぞ」
俺は、高校二年生の六条丞。現在彼女いない歴=17年だったのだが、たった今だ、彼女ができた!
「お前は裏切り者だ。彼女ができたんだから、お前はもう歴同会を抜けてもらう」
「あぁ。俺はもう歴同じゃねー!」
歴同会。俺や江島や魁人、同じクラスの伊藤や賢木などの彼女いない歴=年齢のやつらが組んだ同盟。
つまり、彼女いない(歴)と年齢が(同)じ奴らが集まる(会)というわけだ。
「いーなー」
「俺も、歴同会抜けて―よ」
「なんで丞なんだよ」
授業が終わって歴同会のやつらが俺に話しかけてくる。
「先輩!」
そこに、俺の彼女がやってくる。
「一緒に帰りませんか?」
咲間ちゃんの提案。もちろん受けないわけがない。
「うん」
そう言って、俺は歴同会のやつらを見下して教室を出た。
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「彼女、なんであんなに美少女なんだよ!」
「丞にはもったいねー」
「なんであいつにあんな子が…」
「なに、直に別れるよ」
「え、江島どういうこと?」
「あいつには言ってないけどな…」
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「咲間ちゃん」
「真登で良いです」
そう言って真登ちゃんはうつむく。
可愛い…。
「真登ちゃん。どっか行きたい場所行こうか?」
デートというものを誘ってみる。
「えっ!いいんですか?」
OKでた―――!
これは、デートだよな!デートでいいんだよな!
「どっか行きたい場所ある?」
「あの…」
「ん?」
「アイスクリーム屋さん」
そう言って真登ちゃんはまたうつむく。
可愛い……。
仕草がいちいち可愛いよ。
「先輩の家、こっちですよね」
えっ、真登ちゃんなんで知ってるの?
「先輩のいきつけのアイスクリーム屋さんあるじゃないですか、そこ行きましょう」
えっ、えっ?
「うん」
―アイスクリーム屋さん―
「あたし、ベリーショートにしますけど先輩はいつものでいいですか?」
「うん。いーよ」
…………。
あれ?
「はい。どうぞ。カフェモカです」
あ、あってる…。
俺がいつも食べるやつ……。
えっ、えっ、えぇぇ!
「正直、先輩が付き合ってくれるんなんて意外でした」
吃驚してる俺の事を無視して真登ちゃんは一人で語りだす。
「だって、先輩三年生の天久先輩に憧れてたし、スタイル抜群な人だったし、しかも、先輩、歴同会のメンバーと結構仲良かったから彼女なんかいらないのかなって思ったり、しかも、家でもお姉さんの風呂覗きが習慣でしたし、部屋でもエロげーとかギャルげーしてたし、それなのに意外と少女漫画も好きで、ベタな展開とか好きだし、しかも先輩の友達チャラい友達結構いるし、そっち方面の人かなって思ったりしてたから…」
「ちょっ、チョット待って!」
俺のその一言で真登ちゃんのマシンガントークを止めた。
「なんで、そんな、俺の家の事情とか知ってるの?」
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「江島、それ本当か?」
「あぁ。あいつは、丞のストーカーだ」
「でも、なんでお前がそれを知ってるんだ?」
「まぁ、俺情報屋だし、情報網の広げ方にもコツがあるんだよ」
「大丈夫なのか?丞」
「多分な。そろそろ彼女もボロをだすころさ……」