砂浜をしばらく歩いていると、夜の闇にも次第に目が慣れて、打ち寄せてくる波の動きもよく見えるようになってきた。
「・・・・止めなよ、直・・・・。まったく・・・・・・。子供みたいだよ・・・・?」
そんな風に史生が咎めるのが楽しくて、俺は余計にふざけて見せながら、引き際を攻めて遊んだ。
一頻り走り回ったあと、ちょっと休憩しながら、
「おまえもやってみろよ。おもしろいからさぁ・・・・」
と、史生を誘ったが、
「やだよ。直ってばなんでそんな大人気ないことできるのさ・・・・」
そう言って笑っているばかりだった。
俺と史生は、その後もずっと並んで浜辺を進んで行った。
史生はゆっくりと歩きながら、そして俺は相も変わらずふざけながら・・・・・・。
と・・・・、急に大きな波が打ち寄せてきた。
波を避けようとして身を翻すと、今度は史生にぶつかりそうになった。
慌ててかわそうとしたが、・・・・・・失敗。
俺は砂浜に転んでしまった。
――――っ、いってぇ――・・・・。
バツ悪く、起き上がろうとした俺の目の前に、史生が手を差し出してきた。
くっそ――。
思いっきり笑ってやがる・・・・。
一瞬、ムッとしたが、仕方なく俺は手を伸ばして、史生の助けを借りることにした。
・・・・・・!
史生の手を握ってみて、びっくりした。
異常なほど、手が冷たいんだ。
俺の手が熱過ぎんのかな・・・・? 走り回った後だし・・・・・・。