照準座標が定まったところで、また史生の声がした。
――― 「シークレット・アクセス、OK.もうメイン・アクセスでは動かないよ・・・・。これで、一安心だね」 ―――
「史生・・・・、じゃあ直ぐに電磁波放射の準備に取り掛かってくれ。急がないと編隊が射程範囲内を離れる・・・・。
放射の照準座標はわかるな? 今の俺と長老の話を聞いてたか?」
――― 「うん、編隊の中央だね? 直ぐに編隊の位置を捕らえて、照準を設定するよ」 ―――
「よし、頼んだぞっ。史生・・・・」
返事の代わりに、再び史生の実況が始まった。
――― 「メイン・パネルに人工Moonと人工Moonの裏側に存在する編隊を2分画ずつで映し出すよ。
直、送信するから一緒に観て・・・・」 ―――
「ああ・・・・・・」
俺は史生が言う通り、プライベート・ルームのメイン・パネルにコントロール・ルームから送られてくる映像を映し出した。
・・・・・・いた!
敵の編隊だ・・・・・・。艦影があんなにたくさん・・・・・・。
俺たちに出来るのだろうか・・・・。
俺は情けなくも、不安になってきた。
けれど・・・・、もう一つの心が、そして、Bluesが“大丈夫”だと励ましてくれている。
そうさ、大丈夫だよな・・・・。
俺は顔を上げて、パネルを見据えた。
――― 「直、照準設定 OK。いつでも放射できるよ」 ―――
史生から準備完了の報告が入った。
俺は目の前の画面に向かって尋ねた。
「長老、直ぐにも電磁波を放射してよろしいでしょうか・・・・」
長老は、一度背後を振り返り、仲間と確かめ合うように頷き合って、そしてこう答えた。
「私達は、今の今まで彼らと通信を取り、我々の思いを、また地球の方針をわかってもらおうと説得に努めていました。
しかし・・・・、やはり聞き入れてもらえないようだ。仕方ありません。
直ぐに電磁波を放射し、彼らが動けないようにしましょう。そうすれば、彼らも考えを変えるかもしれない・・・・」
長老の表情は苦悩に満ちていた。
それが手に取るようにわかって、俺も胸が痛んだが、・・・・・・覚悟を決めた。
「では、長老・・・・、始めます。史生・・・・・・、直ぐに放射開始だ」
――― 「了解」 ―――
直ぐに通信機からコンピュータの作動音が流れてきた。
――― 「電磁波放射システム作動・・・・。直、あと数秒もしたら衛星から電磁波が放射される・・・・・・。一緒に観てて・・・・」 ―――