小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

照準座標が定まったところで、また史生の声がした。

――― 「シークレット・アクセス、OK.もうメイン・アクセスでは動かないよ・・・・。これで、一安心だね」 ―――

「史生・・・・、じゃあ直ぐに電磁波放射の準備に取り掛かってくれ。急がないと編隊が射程範囲内を離れる・・・・。
放射の照準座標はわかるな? 今の俺と長老の話を聞いてたか?」

――― 「うん、編隊の中央だね? 直ぐに編隊の位置を捕らえて、照準を設定するよ」 ―――

「よし、頼んだぞっ。史生・・・・」

返事の代わりに、再び史生の実況が始まった。

――― 「メイン・パネルに人工Moonと人工Moonの裏側に存在する編隊を2分画ずつで映し出すよ。
直、送信するから一緒に観て・・・・」 ―――

「ああ・・・・・・」

俺は史生が言う通り、プライベート・ルームのメイン・パネルにコントロール・ルームから送られてくる映像を映し出した。

・・・・・・いた!
敵の編隊だ・・・・・・。艦影があんなにたくさん・・・・・・。

俺たちに出来るのだろうか・・・・。
俺は情けなくも、不安になってきた。

けれど・・・・、もう一つの心が、そして、Bluesが“大丈夫”だと励ましてくれている。

そうさ、大丈夫だよな・・・・。
俺は顔を上げて、パネルを見据えた。


――― 「直、照準設定 OK。いつでも放射できるよ」 ―――

史生から準備完了の報告が入った。
俺は目の前の画面に向かって尋ねた。

「長老、直ぐにも電磁波を放射してよろしいでしょうか・・・・」

長老は、一度背後を振り返り、仲間と確かめ合うように頷き合って、そしてこう答えた。

「私達は、今の今まで彼らと通信を取り、我々の思いを、また地球の方針をわかってもらおうと説得に努めていました。
しかし・・・・、やはり聞き入れてもらえないようだ。仕方ありません。
直ぐに電磁波を放射し、彼らが動けないようにしましょう。そうすれば、彼らも考えを変えるかもしれない・・・・」

長老の表情は苦悩に満ちていた。
それが手に取るようにわかって、俺も胸が痛んだが、・・・・・・覚悟を決めた。

「では、長老・・・・、始めます。史生・・・・・・、直ぐに放射開始だ」

――― 「了解」 ―――

直ぐに通信機からコンピュータの作動音が流れてきた。

――― 「電磁波放射システム作動・・・・。直、あと数秒もしたら衛星から電磁波が放射される・・・・・・。一緒に観てて・・・・」 ―――

-159-
Copyright ©杜子美甫 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える