小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

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支えている俺の腕と膝に、その重みがずっしりとかかってきた。

「・・・・・・史・・・・生・・・・? 史生っ・・・・、お願いだ・・・・、瞳を開けてくれ・・・・! 
『また』・・・・何なんだ? 続きを聞かせてくれ・・・・・・。史生・・・・・・、嘘だろう・・・・・・っ?
・・・・史生――――――――っ!!」

俺の中で何かが砕け散った。

 ・・・・・・まだ、こんなに温かいのに・・・・。口元には、微笑みさえ浮かべているというのに・・・・。
おまえはもう、生命(いのち)の営みを経ってしまったというのか・・・・・・?

俺は何の為にここへ来たんだ・・・・・・っ。


泣きたかった。泣き叫びたかった。

しかし・・・・、一滴として、俺の瞳から涙か流れることはなかった。

こんな時に・・・・、どうして・・・・・・? 俺は・・・・・・。
悲しさと悔しさがとめどなく込み上げてくる。


爆発によって起こった火の手が、次第に俺と史生を取り囲もうとしていたが、俺にはもう、そこから動く気力もなく、
ただじっと、史生の亡骸(なきがら)を抱きしめているだけだった。




・・・・・・カツ、カツ、カツ・・・・・・。

静かに靴音が響いてきた。だんだん、近づいて来ているってこともわかった。

しかし、“誰が・・・・?”とは思わなかった。
今ここへ誰が来ようと、関係ないと思っていたからだ。

俺は身動き一つすることもなく、史生を抱きしめたままうずくまっていた。

靴音は俺の背後で止まった。

静かに・・・・、しかし、やや語気を強めた靴音の主の声が響く。
「・・・・バカヤロー、何やってんだ。死ぬぞ、そんなとこでうずくまって・・・・・・」


―――――!? 史生か・・・・・・?

俺は一瞬、背後からの声を史生のものだと感じてしまった。

しかし・・・・・・、そんなわけはない。 史生はこうして俺の腕の中にいるじゃないか・・・・。
そうだよ、冷静に考えると、声の主は征生以外には考えられないじゃないか。

そう気づいた時、俺は顔を上げ、振り返って征生に訴えていた。

「征生・・・・っ、史生が・・・・・・、史生が、俺を庇って・・・・・・」

俺の動揺とは対照的に、征生は全く驚いた様子も見せず、ゆっくりと俺の横に跪(ひざまず)くと、
穏やかな瞳で史生の全身を見つめていた。

やがて、征生は史生の頬にそっと自分の手を当てて、いとおしそうに優しく撫でると、一言だけ、
「そっか・・・・。よかったな・・・・、史生・・・・・・」
そう言って微笑んでいた。

俺には落ち着き払っている征生がわからなかった。

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