支えている俺の腕と膝に、その重みがずっしりとかかってきた。
「・・・・・・史・・・・生・・・・? 史生っ・・・・、お願いだ・・・・、瞳を開けてくれ・・・・!
『また』・・・・何なんだ? 続きを聞かせてくれ・・・・・・。史生・・・・・・、嘘だろう・・・・・・っ?
・・・・史生――――――――っ!!」
俺の中で何かが砕け散った。
・・・・・・まだ、こんなに温かいのに・・・・。口元には、微笑みさえ浮かべているというのに・・・・。
おまえはもう、生命(いのち)の営みを経ってしまったというのか・・・・・・?
俺は何の為にここへ来たんだ・・・・・・っ。
泣きたかった。泣き叫びたかった。
しかし・・・・、一滴として、俺の瞳から涙か流れることはなかった。
こんな時に・・・・、どうして・・・・・・? 俺は・・・・・・。
悲しさと悔しさがとめどなく込み上げてくる。
爆発によって起こった火の手が、次第に俺と史生を取り囲もうとしていたが、俺にはもう、そこから動く気力もなく、
ただじっと、史生の亡骸(なきがら)を抱きしめているだけだった。
・・・・・・カツ、カツ、カツ・・・・・・。
静かに靴音が響いてきた。だんだん、近づいて来ているってこともわかった。
しかし、“誰が・・・・?”とは思わなかった。
今ここへ誰が来ようと、関係ないと思っていたからだ。
俺は身動き一つすることもなく、史生を抱きしめたままうずくまっていた。
靴音は俺の背後で止まった。
静かに・・・・、しかし、やや語気を強めた靴音の主の声が響く。
「・・・・バカヤロー、何やってんだ。死ぬぞ、そんなとこでうずくまって・・・・・・」
―――――!? 史生か・・・・・・?
俺は一瞬、背後からの声を史生のものだと感じてしまった。
しかし・・・・・・、そんなわけはない。 史生はこうして俺の腕の中にいるじゃないか・・・・。
そうだよ、冷静に考えると、声の主は征生以外には考えられないじゃないか。
そう気づいた時、俺は顔を上げ、振り返って征生に訴えていた。
「征生・・・・っ、史生が・・・・・・、史生が、俺を庇って・・・・・・」
俺の動揺とは対照的に、征生は全く驚いた様子も見せず、ゆっくりと俺の横に跪(ひざまず)くと、
穏やかな瞳で史生の全身を見つめていた。
やがて、征生は史生の頬にそっと自分の手を当てて、いとおしそうに優しく撫でると、一言だけ、
「そっか・・・・。よかったな・・・・、史生・・・・・・」
そう言って微笑んでいた。
俺には落ち着き払っている征生がわからなかった。