Eightは何も言わず、じっと俺を見ていた。
多分、俺と同じように、EightもMPから説明があっているのだろう。
「じゃあ、記憶をもらうな・・・・」
俺はそう言って、EightのMPを左に回し、出てきたボタンを押し続けた。
前の時とは違い、一ヶ月だけの記憶だったので、今回は頭がクラクラするようなことはなかった。
Eightの記憶が入ってきた。
・・・・・・なんか、泣いてばっかだな・・・・、まったく・・・・・・。
けど、・・・・そっか、そうやって史生と知り合ったのか・・・・・・。
病院のベランダから、いつも俺がローラースケートやってるのを見ててくれたのも・・・・、史生だったんだ・・・・・・。
「ありがとう、Eight・・・・。おまえに感謝するよ」
MPをEightに戻しながら、俺がそう言うと、
「へへ・・・・っ、どういたしまして・・・・・・」
Eightは頭を掻きながら、照れていた。
俺がEightから記憶をもらっている間に、さやもさやさんから記憶をもらっていた。
その後も二人で楽しそうに盛り上がっている。
そんな二人のさやを眺めていると、
<私の役目もこれで終了しました。Teen’s、あなたともお別れです。私を外して、28歳のさやさんにお渡しください>
静かにBluesの声が響いてきた。
・・・・・・お別れか・・・・。
何か淋しくなるな・・・・。この一ヶ月、ずっと一緒だったから・・・・・・。
<私も淋しいですよ・・・・。けれど、あなたと一緒に楽しい時を過ごさせていただきました。ありがとう・・・・、Teen’s>
俺の方こそ・・・・。君のお陰で無事に帰って来れたんだし・・・・・・。
ホントにありがと、Blues。
・・・・じゃあ、お別れだ・・・・・・。
Bluesはもう何も言わなかった。
俺はこの一ヶ月の間、決して外すことのなかったBluesを、自分の首からゆっくりと外した。
目の高さまで高く掲げて、眺めてみる。
俺なんか相手にしてて、苦労したんだろうな・・・・。
もう決して響いてはこないBluesの声を俺は思い返していた。