「なんだよ、その“歩き方が俺”ってのは・・・・。俺、そんな変な歩き方してっかな・・・・・・?」
「ううんっ、変じゃないわ」
大きく首を横に振りながら、さやは続ける。
「肩の揺らし方とか、リズムの取り方とか・・・・。そんなのがね、そのままなの」
当たり前だろっ、俺は俺なんだから・・・・。
それにしても、この前も今も、そんなとこ見てたのか・・・・・・。
全く暇なヤツ・・・・。
呑気だよな。もっと他に考えることがあるだろう・・・・、この状況でさぁ・・・・・・。
俺は多少あきれたが、まぁさやが俺を信じてくれたことで、“良し”としようと思った。
「あなたが高橋くんだってことはわかったけど・・・・・・、どうしてそうなっちゃったの?
それに、ここはどこ?」
さやは安心したのか、次々に質問を投げかけてくる。
俺は、疑われるのを覚悟で、本当のことを言ってみることにした。
いずれは言わなきゃいけないことだし、信じてもらわなきゃいけないことだ。
「あのさ・・・・、ここは俺たちが住んでた世界から言うと、10年後の世界なんだ。西暦2004年ってことなんだけど・・・・・・」
また、“そんなの信じらんないっっ!!”って連呼するさやを想像しながら、恐る恐る説明し、様子を伺った。
しかし・・・・・・、
「ふ―ん、そっか。10年後なのか・・・・・・」
俺の想像に反して、さやはうなずきながら言った。
うそっ・・・・。
今回は信じちゃうわけっ?
なんでだよ・・・・。わかんね―ヤツ。
まぁ、すぐに信じてくれたほうが、俺も楽でいいけど、それってあまりにも・・・・・・、だよな・・・・。
「ホントに10年後って信じてくれるワケ?」
ちょっと不安に思って聞いた。
「なによ、信じないほうがいいの? せっかく素直に信じてあげてるのに・・・・・・」
あ・・・・、やべっ。怒ったかな・・・・・・。
「フフフッ、うそ。怒ってないよ。
良くわかんないけど、今まで通ってきたとこの設備とか、乗り物とか、どう考えても、私たちが普通使ってるのとは違うし・・・・、
高橋くんはフケちゃってるし・・・・・・。なんとなく未来に来てしまったかなぁ・・・・って、思ってたんだ」
俺の気持ちをすぐに読み取ったかのように、さやは笑ってそう答えた。
ふ―ん・・・・。
結構いろんなこと考えてたんだ。わりと観察力あるじゃん。見直したよ。
「そっか・・・・。わかってくれてたんだ。ありがと・・・・・・。さやに理解してもらえて、安心したよ。
俺の不注意のせいで、おまえをタイム・トラベルに巻きこんじまったんだ。
ごめんな。俺、ちゃんとおまえのこと、守るから・・・・・・」
さやのこと感心しながら、ホッとして出た言葉は、いつもの俺から考えられないほど、素直な言葉だった。