小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

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「さや、あらかじめ言っとくけど・・・・、今から俺たちが会う人って言うのは・・・・、実は・・・・・・、この世界のさや、おまえ自身なんだ・・・・。
10年後のおまえ・・・・。さや、おまえ、未来の自分に会う自信あるか・・・・・・?」

俺の質問に、さやは戸惑っていたようだが、すぐに、

「大丈夫。わたしは大丈夫よ。高橋くんもついててくれてるし・・・・・・、それに、会わないと何にも出来ないでしょう? 
わたしも未来のわたしに聞きたいことがいっぱいあるの・・・・。ちゃんとこの状況が理解できるように、わたし、頑張るわ・・・・・・」

そう答えてくれた。

ホント、そこいらのヤローどもよりも、肝の据わったヤツだよ、おまえって・・・・。

俺は、力強いさやの言葉に、ホッとした。
そして、改めてマンションのメインゲートの開閉システムにカードを挿入した。


ピ―――――ッ。

確認音が鳴って、ス――――ッとゲートが開く。
さやに目で合図をしながら、中に足を踏み入れ、奥へ向かって歩いた。

エントランスの中は、ホール状になっていて、真ん中に今は動いていないが、小さな噴水が作られている。
その噴水の向こうに、二機のエレベータがあり、噴水の上は吹き抜けになっている。

「すご―い・・・・。きれいなとこだね・・・・・・」

さやが思わず声をあげている。

壁や床は、大理石で埋め尽くされ、差し込んでくる夕日が反射して、ホントに綺麗だった。


さやの部屋は、この15階建てマンションの14階にあり、一番南の端に位置していた。

俺たちはとうとう、この世界のさやの部屋の前に立っているのである

俺は、別に見慣れた風景でどうということない・・・・、という記憶と、すごくドキドキして逃げ出したいような感情を一緒に体験している。
20’sの記憶と、Teen’sの感情の板挟みだ。

しかし、ここまで来たら会うしかない。
横にさやもいる手前、弱音も吐けやしない。
俺は覚悟を決めて、インターホンを押した。


「・・・・はい・・・・・・?」

インターホンから流れてきたさやの声に、俺は一瞬、ドキッとしたが、次の瞬間には、

「あ・・・・、俺だけど・・・・・・」

何事もないかのように、答えていた。

「直ね? 待ってたわ。すぐ開けるから・・・・・・」
インターホンの声は、優しくそう言った。

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