小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

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雍也も史生も、ちょっと驚いた表情で俺を見ている。

「俺は、AMコアが上がれば、その後のメンテナンスを負うだけだと思ってたんだが・・・・、そうじゃないのか・・・・・・」

雍也が軽く溜息をついたあと、俺に言った。


「メンテナンスだけで納まらせやしないよ。このことはずっと前から考えていたんだ」
俺が笑いかけると、

「ま、こうなったら、最後の最後まで面倒見てもらうことにするか・・・・・・。よろしくな」
雍也も笑って答え、手を差し出してきた。

パシッ・・・・。

大きく音を立ててお互いの手を合わせたあと、俺たちはしっかりと握手をして、無言のうちにこの計画の成功を誓い合った。


「じゃ、そういうことだから、二人はこれからメイン・コントロールルームへ行ってくれ。
俺はその間、部長への報告を済ませることにするよ」

俺が次の指示をすると、二人ともうなずいて、さっそくメイン・コントロールルームへと向い始めたが、部屋のドアを出るときになって、史生が足を止めた。

「雍也、プログラミングの変更について、直に説明しなきゃいけないことがあるから、先に行っててくれないかな・・・・。
時間はそんなにかからないから・・・・・・。すぐ、あとを追いかけるよ」

史生の言葉に、雍也は軽くうなずいて、部屋を後にした。

その様子を見送ったあと、史生はくるりと振り返って、俺のほうへ真っ直ぐ戻ってきた。


俺は、史生の取った行動をそれ程変だとは思っていなかったのだが、俺の中の20’sは、ちょっと不思議に思っているようだった。

目の前に戻った史生に、すぐに反応していた。

「どうしたんだ? プログラミングの変更なんて、見りゃわかることじゃないか。今更説明なんて・・・・・・」

言いかけた俺に、史生は更に近づいてきて、すれ違う直前で足を止め、俺の肩に手をかけて、耳元で静かに話し始めた。

「もちろん、そんなこと必要じゃないよ。僕が話したかったのは、そんなことじゃない。・・・・・・実は、雍也のことなんだけど・・・・」

「雍也がどうかしたのか?」

俺の問いに、史生は一瞬戸惑ったような表情をしたが、ふぅっと溜息をついてから、また話を続けた。

「直は聞いてないかな・・・・・・。最近、雍也についてよくない噂を耳にしたんだ。何か裏でやってるようなんだけど・・・・。
もちろん、ああいう性格だから、もともと誤解を受けやすいとは思うけど・・・・。
でも、噂っていうのは、何もないところからは起こらないし・・・・ね。
・・・・・・で、そんな彼にコントロール・アクセスを教えちゃったりしていいのかな・・・・って思ったんだ。
面倒なことにならないとも限らない・・・・からね」

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