小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

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その時のきれいだった月を思い浮かべながら、取りとめもないことを考えているとき、その声は聞こえてきた。

<おにいちゃん・・・・・・>

おにいちゃん・・・・?
俺、妹はいるけど、声が違う。
違うも何も、男の声だ。
それも、俺の声に似ている。

空耳だろうな・・・・。

そう思うことにしたが、
<おにいちゃん、早く来て・・・・>
また聞こえてきた。

空耳じゃない。あまりにもはっきり聞こえすぎる。
けど、早く来いって、どこへ行きゃいいんだ?

<聞こえていますね? Teen’s。私が案内しますから、ご心配なく・・・・>

今度は違う声が聞こえてきた。とても落ち着いた男の声だ。
ちょっと金属音が入るのが気になるが、俺はこの声の主達のところに早く行かなきゃなんないと思った。
なんだかおもしろいことが起こりそうだし、この声に着いて行くことに決めた。

よし、行こう。
思わず席を立ったとき、ちょうど授業終了を知らせるチャイムがなった。



そして、俺は走っていた。

俺のことを<おにいちゃん>と呼ぶヤツが、<急げ>と言ったから・・・・・・。

そして、俺のことをなぜか<Teen’s>と呼ぶヤツの指示に従って進むと、そこは学校から5分くらいの、公園に隣接する、歴史資料館だった。


そう言えば、小学校の頃、よくここへ来たっけ。
修兄さんってば、歴史なんかも好きで、ここでもいろいろと教えてくれたんだ。
最近は全然足を運ばなくなったな。

中に入ると、ひんやりしてて、ちょっと暗くて・・・・、思ったとおり人も少ない。
ふ―ん。昔のまんまだな。
なんだか妙にうれしくなったりした。

建物の一番奥に映写室がある。どうやら、俺を呼ぶ声の発信源はここのようだ。

ここに来て、急にドキドキしてきた。一体、誰なんだろう。
ま、とにかく入ってみるか。

俺は一息、深呼吸して、覚悟を決めてから、暗幕の中に入って行った。
真っ暗で何も見えない。
隙間から入る光を頼りに、ようやく人らしい影が見えてきた。

一人か?

一人だけはっきりとわかる。
ほかには・・・・・・? 声の主は二人いたはずだが・・・・・・。

何度も確認したが、どうやら一人だけらしい。

そう認識したとき、映写室の8ミリフィルムがまわりだし、映画が始まった。
その光に浮かび上がった人物を見て、俺は思わず後ずさってしまった。


俺だ・・・・・・。
俺がいる・・・・・・!?

-8-
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