「何があったんだよ・・・・。
ドロボーか? けど、そこは防犯態勢整ってるはずだぜ・・? 安全だと思ったから、おまえを一人にしたのに・・・・・・」
俺がびっくりして聞くと、さやはわめきだしたいのを必死で堪えるように、ゆっくりと話し出した。
「・・・・直さん、違う。ドロボーなんかじゃないわ・・・・。二人の子供にやられちゃったのよ・・・・・・」
・・・・・・二人の子供?
俺は何だか、心当たりがあるような、ないような、不安な気分に襲われた。
・・・・・・もしかして・・・・?
そう思った時、さやはまた話を始めた。
「お姉さんから聞いてたの、男の子と女の子の兄妹の家庭教師をしてるって・・・・。
今日からわたしがお姉さんの代わりをするってことも聞いて、ちゃんと二人のデータも貰ってたの。
だから、今朝 二人が訪ねてきたときに、何の疑いもなく部屋に入れちゃったら・・・・・・、ひどいのよ・・・・っ!
『おまえなんかに習いたくないや!』って、めちゃくちゃに散らかされちゃった・・・・」
そこまで言うと、さやはポロポロ涙を零し始めた。
・・・・・・あのさやが泣くなんて、一体あいつら、何考えてんだっ!
さやを泣かせた原因の兄妹っていうのは、言うまでもなく、“ふみ”と“すず”だ。
そう、あの修兄さんの子供たち・・・・・・。
あいつら、根はいい子たちなんだけど、初対面の人に対しては、その人の度量を測るために、いろんなテストをするんだ。
随分前、さやさんも今回のさやへのやり方と同じ手口で、やられている。
人を試すのも、まあ悪くはないけど、あいつらの場合、ちょっと度が過ぎるんだよな。
最近は特にそうだ・・・・・・。
ここは一発、言ってやらなきゃな・・・・。
さやの鼻を啜る音が一段落して、俺は言った。
「さや・・・・・・、びっくりしただろうけど、気にすんな。あいつら、いつもこうやって、人を試すんだ・・・・。
けど、その散らかった部屋の中、おまえが片づけることはないからな。
俺があいつらに言って、ちゃんと片づけさせて、おまえに謝らせるからさ・・・・・・。
おまえはゆっくり朝飯でも食べて、待ってろよな。なっ? いいか・・・・?」
さやはコクン、コクンとうなずいて、次第に落ち着きを取り戻していた。
けれど結局、画面が消えるまで、いつもの笑顔を見せてはくれなかったのだった。