小説『自称一般人』
作者:jack()

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ジリリリリリリリリ!!





・・・朝か
のそのそと布団から出て居間に向かう。


「竜!今アタシの魚取っただろ!!」

「油断する方が悪いんだよ!!」

家は朝っぱらから煩いなぁ。
お前らは親父におかずを取られていることに気づけ。

俺は制服に着替えて、家を出る。





「あ〜怠い」

今は人通りの多い時間帯だが、小さく呟いた言葉は俺にしか聞こえない。
なんか毎日言ってる気がする。
街を歩きながらそんなことを思っていると


「・・・・ください!」


近くから少しだけ声が聞こえる。
語尾から察するに怒っているようだ。
その声がした方向へ足を運ぶ。
歩いている内にどんどん狭い道になっていく。







着いた先は袋小路で、川神学園の制服を着た少女と、巷で不良と呼ばれていそうな格好をした男たちがいた。
隠れて会話を聞き取る。


「だから離してください!!」

「そんなに嫌がんなよ〜
ちょっと遊んでくれるだけでいいんだからさぁ」


ナンパかよ。
しかも朝からとか頭可笑しいんじゃねえか?
路地裏に連れ込むとか変な所で頭使ってるし・・・

まさかこれは俺が助けるパターンですか?
武神来いよ、美少女が困ってんぞ。





・・・つまり俺が助けるパターンらしい。
めんどくせえなぁ。
これが天だったら、速攻で学園に向かってるのに・・・

さあて、やりますか。

気配と足音を消して男たちへ近づく。

まず、前にいる男のがら空きの首に手刀を叩き込み意識を断つ


「「っ!!」」


仲間の異変に気づいてこっちを向くが、そんなことはお構いなしにもう一人の男を蹴り飛ばす。
もちろん加減はしてるよ?最低限だけど。
少女に言い寄っていた最後の男が、ナイフを構えて怒鳴り声を上げる。

「なにもんだテメェ!!」

「通りすがりのモブAだ。さっさとその子を離せ」

「テメェ!調子乗ってんじゃねえぞ!!」


仲間がやられたことか、ナンパの邪魔をされたことか、俺の回答のどれか、もしくは全部が気に入らなかったのか解らんが、男は俺にナイフを刺そうと振りかぶる。

俺は、男がナイフを持っている手を掴み、背負い投げで地面へと叩きつける。
男はピクピクとした後に動かなくなった。
顔を上げた俺は、少女と目が会った。


「・・・ハッ!!あ、ありがとうございました・・・ッ!!」


その出来事を見ていた少女は、男を地面に叩きつけた音で我に返ったのか、慌ててお礼を言って来たが、手首を痛めたのか、手首を押さえて顔を歪める。
これを見た俺は、水の入ったペットボトルを出して、ハンカチを水で濡らし、絞った物を少女の手首に当てる。


「使え・・・返さなくていいから・・・それと、俺のことは誰にも言うな」


なんか会話が苦手な奴みたいになっちまったが、まあいいだろう。
口止めをして俺は、返事を聞かずにその場を立ち去る。


学校間に合うといいなぁ。
走らないけど・・・





side伊予



・・・凄い人だった

私は、さっさと歩いていく彼を、ボーっと見つめることしかできなかった。

彼は、恐るべき速業で不良たちを倒してしまった。
まるで当然かのように。

見惚れる暇も無く、気づいたら不良が二人気絶していた。
ナイフを持った男もお構いなしに、背負い投げで地面に叩きつけていた。

その音で我に返る。
彼にお礼を言ったが、男に握られた手が痛んで顔が歪んだ。

それを見た彼は、私に応急処置をしてくれた。
お礼を言う前に、ハンカチは返すなと言われてしまった。

そして、簡潔に自分のことは言うなと言われた。
私の返答を待たずに、彼は珍しい銀髪を靡かせて去って行った。



彼は誰なのだろうか?

制服を着ているから川神学園の生徒だとは解るが、何年生だろうか?

同学年?それとも先輩?

何故あんなに強いのだろうか?



彼に対する疑問は尽きない。

彼のことをもっと知りたい。





私は、助けてくれた彼のことを考えながら、学校へと歩いて行った。



時計を見て、全速力で走ったのは余談である。

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