小説『自称一般人』
作者:jack()

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突然だが『決闘』をご存じだろうか?

一対一で闘うあれだ。

昔はよく行われていたが、現代では全くと言っていいほどなく、あるとしても『タイマン』と言う名前になっており、それをするのも不良たちばかりで、現代の一般市民には程遠いものになった。

何故そんな話をしたのかって?


『ただ今から、第一グラウンドで決闘を行います。決闘内容は武器有りの戦闘です。見学希望者は―――』


ってわけだ。
この川神学園には合法的に決闘ができる制度がある。
そして、それが今行われようとしている。

互いが川神学園のワッペンを重ねると、決闘成立となる。
決闘の方法は、闘いだけではないが、基本は闘いになる。
その場合は学園側が用意した様々な武器を選び、使うことが出来る。
武器はレプリカのため、生死に関する心配はない。
今回の決闘は闘いのため、このルールが適用される。

そして対戦者たちは・・・


「2年F組 川神一子!」


川神一子

武神と名高い川神百代の義妹であり、川神流を使う。
才能はある方ではないが、その分を努力で埋めようと日々の鍛練を欠かさない。
使用武器は薙刀。


「2年F組!クリスティアーネ・フリードリヒ!」


クリスティアーネ・フリードリヒ

本日より、この学園の生徒となったドイツからの転校生。
転校生のため情報が無いが、見たところの実力は川神一子と変わらないようだ。
レイピアを使うらしい。


現在はこの二人を中心に円が出来て、ギャラリーの数は相当なものだ。
ただの決闘ならこんなに人は集まらないが、この決闘ではトトカルチョが行われている。
風間ファミリーのリーダーである風間と、その一員である直江がグランドを駆けずり回って賭け金を集めている。
こんな儲けの機会はないため、俺もどちらかに賭けるつもりなのだが、二人の実力がそう変わらないから困っている。

普段からこの場所を使っている川神一子の方が少し有利だが、その程度じゃあ決定的な勝因には至らないだろうしな。


名前を呼ばれた二人が一歩ずつ前に出る・・・ん?


「風間―」

「はいよー。どっちにいくらだ?」

「クリスの方に3万」

「まいどありぃ!!」

「長い間迷っていた様子でしたが、何故転校生の方に賭けたのですか?」

「ん?勘だ勘」

「その勘で何回当ててると思っているんですか・・・
そこまで言いたくないのなら詳しくは聞きませんが」

「そいつは助かる」


ちなみに俺の隣には冬馬がいて、その隣に準がいる。
小雪?背中だけど?


「儂が立ち会いのもと、決闘を許可をする。
勝負が決まったと思えば止めるが良いな?」


学園長の言葉に二人は頷く。


「いざ尋常に、始めいっ!!」

「はあああああ!!」


開始の合図を聞いた瞬間に川神が先制をかける。
川神は休ませる間もなく攻撃を仕掛けるが、クリスは避けるだけで反撃をしようとしない。
その後も川神の攻撃の手は休まらず、傍目からは川神が有利に見えるだろう。
だが、クリスはただ攻撃を避けているわけではない。
おそらく薙刀の動きに目を慣れさせようとしているのだろう。
・・・そろそろ仕掛けるころだろうな。


「セイッ!!」

「っ!!速い!!」


クリスがものすごい速さで突くが、川神はなんとかかわして距離を取る。


「なんだ!?今突いたのか?」

「威力もかなりありそうですね・・・」


準も冬馬もかなり驚いている。
あれを喰らったらかなりのダメージを負うな。

「せいやー!!」

川神は、声と共に薙刀を回し始める。
徐々に回転数が上がっていき、威力がどんどん増していく。
どうやら、川神は此処で決めるつもりらしい。


「川神流―――」


薙刀を大きく振り上げる。


「―――山崩し!!」


そしてクリスの脚へと振り下ろす。
川神はフェンシングの有効範囲が胴しかないのを知ってて脚に攻撃をしたんだろうが、あの親バカ父がそんな隙の出やすいスポーツをやらせるわけがない。
動きを見るからにも、あいつは全身が有効範囲であるエペをやっているだろう。

「ふっ!」

「なっ!避けられ…」

「セイッ!!」

「っ〜!!」

「よっし」

クリスは薙刀をいとも簡単に避けて、肩に突きを放つ。
川神は突きをもろに喰らって、声にならない悲鳴を上げて倒れこむ。
そしてガッツポーズをしてしまった俺。
この制度は儲かるからいいな。

「そこまで!勝者クリス!!」

学園長の声が響き、二人が歓声に包まれる。
風間ファミリーの奴等は、二人に駆け寄る。

ん?なんで勝敗が解ったかって?
川神が歩いた時に、やけに脚に力を入れていたからな。
修行好きな川神のことだ、重りを脚に付けていてもおかしくはない。
そして外す暇なく負ける。予想通りだ。

「さぁ。第2Rといきましょうか」

川神は重りを外して再戦を挑むつもりらしいが、甘い。
学園長が勝敗を宣言しているから、再戦はないだろう。
相手の実力を見誤る方が悪い。

そんなことを考えながら、教室へと踵を返して歩いて行った。

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