小説『ハーフ 【完結】』
作者:高岡みなみ(うつろぐ)

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 聡美はレオナから聞いた話を何度も反芻していた。
 今の状態のまま続けていては銀行口座一つ作るにも支障がでしょうだ。そして最大の難関は就職。社会的な性、と言う壁だろう。
 心の性はさんざん考えてきたことだが、自分の中で確固たるものができつつあることは感じていた。躰の性…性転換を意味するのだろうか。確かに脱毛を開始しはじめ、女性ホルモンを使い始めてはいる。しかし性転換手術は遙か先のことのようにも思える。が、避けて通ることはできないだろう。
 自分が何を求め、どうなりたいかを考えることは容易なことではなく、その一つ一つは後戻りできないことばかりなのだ。
 心療内科の初診日まではまだ一週間近くある。ある程度考えをまとめておきたい。私は何者で何をしたいのか。単に女性であると主張するだけではダメなのだ

 そもそも、何から始まったかを思い返してみると「聡」から「聡美」と名乗りはじめたことが発端になっている。ここのの中の葛藤はいくつもあるが男性名で呼ばれることが嫌でたまらなくなってきたのことが始まりだ。ここの葛藤はほぼ整理はついてきたと思う。社会的な性別、特に名前の変更ができるのなら、変更したいという欲求が沸き立ってきていた。

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