小説『ハーフ 【完結】』
作者:高岡みなみ(うつろぐ)

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 翌朝、今日は自主休校にした。また、高橋に「体調が芳しくないので休みます」とメールをいれた。
 美容院が開く同時に無理矢理カットの予約を入れてもらった。
 帽子をかぶっていつもの美容室へ行くと、いつも担当してくれる美容師さんのてが空いていたのでカットしてもらえることになった。
「どうしたんですか? あざまであるし」
「ちょっと父親と揉めちゃって」
「ちょっとどころじゃないでしょ。DVですよ、これ。」
「大がかりな親子げんかと思うしかないわよ。で、この頭を何とかしてほしいんだけど、どうしたらいいと思いますか」
 美容師はちょっと考えてから
「分かりました。任せてください。軽いパーマのかかったショートボブにしましょう。かわいく仕上げてみせますよ」
と言った。
 そして2時間後にはすっかり印象の変わった聡美が鏡に映っていた。

 昨夜はほとんど眠ることができず悶々としていた聡美だったがカットが済み、お昼頃には一息つけるようになった。そして玲子に電話を入れようと携帯見ると奈津実からの着信があった。折り返しかけてみるとすぐに奈津実が出た。
「お母さんから聞いたんだけど、昨日お父さんがそっちにいたんだって?」
「うん。まぁね」
「なんか寝ぼけた声ねぇ、お兄ちゃん。緊迫感ゼロなんだけど」
「昨日寝てなくてさ、今になってやっと眠くなってきた」
「そういう話しじゃなくてさ、何があったの」
「うーん、たぶん想像している通りよ。お母さんから聞いたんでしょ。少し話を始めたかと思ったら、いきなり髪を切られたわ。今美容院の帰り。前の髪型結構気に入ってたんだけどね」
「お父さんはなんて言ってたの?」
「今からでもやり直せるからやり直せって言ってた。いつも冷静なお父さんが私の胸ぐらをつかんで揺するなんて生まれて初めてだったからかなり驚いたわ。それと女の恰好しているんだったら帰ってくなって言ってた」
「まぁ、それくらいで済んだんなら、まだましかな。でもね、お兄ちゃんにもここまで引き延ばした責任はあると思うわよ」
「まぁね、それを言われるとつらいわ。私のことで手一杯だったけど、そんなの言い訳だよね。ところでさぁ、そろそろ『お兄ちゃん』はやめてくれないかな」
「じゃぁなんて呼ぶの?」
「お姉ちゃんじゃない?」
「無理無理。でも、なんか考えておくわ」

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