小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第9話 Side 一誠〜





Side 一誠


 昨日アーシアと遊ぶ約束をした。待ち合わせは12時。俺は30分前に待ち合わせ場所についていた。この際、昨日渚の言っていたデートうんぬんは、考えないことにする。

 服装は、無難に赤いTシャツに、ジーパンだ。渚も出かけるようで、いろいろ準備をしていた。

(しかし、あいつの私服は私服っぽくない感じだよなぁ。確かに似合ってはいるけど)

「イッセーさーん」

 そんなことを考えていると、アーシアが走ってこちらに向かっていた。

「はわう!」

 見事に転ぶアーシア。格好はいつものシスター服だった。

 俺は駆け寄って、アーシアに手を差し出した。

「ほら」

「はぅぅ、すみません。ありがとうございます」

 パンパンとアーシアは服をはたく。

「それじゃあ、行こうか」

「はい!」

「とりあえず、繁華街に行ってお昼にしよう」





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「あぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・・」

 不思議な光景だ。ハンバーガショップのレジの前でシスターが困惑している。

「あ、あの注文は・・・・・・?」

 対応に困っているのは店員さんも同じようだ。

 お昼をどこで食べようか、迷っていると「あそこがいいです」とアーシアが言ったので、ハンバーガショップに入ったわけだが、どうやらアーシアはこの手の店に入ったことがないようだ。

 俺が「手伝おうか?」と聞いたが「大丈夫です。一人で何とかして見せます」と胸を張って宣言していたから、見守っていたが・・・・・・・・・。

 アーシア・・・・・・・・、キミは日本語をしゃべれないじゃないか。

 見かねて、俺がフォローを入れた。

「すみません。俺と同じメニューでお願いします」

「わかりました」

 店員さんもそれで注文を受け取ってくれた。アーシアは軽いショックを受けているようだ。

「あぅぅ、情けないです。ハンバーガー一つ買えないなんて・・・・・」

「ま、まあ、まずは日本語から慣れていこうぜ」

 落ち込むアーシアを励ましつつ、俺とアーシアはハンバーガーのセットメニューを受けて取って、空いている席へと向かった。

 店内を移動中、どの客もアーシアを目で追っていた。シスターが珍しいってのもあるだろうが、アーシアがかわいいのもあるだろう。

 窓際の空いている席に対面で座ったが、アーシアは一向に食べる気配がない。もしかして・・・・・食べ方がわからないのか?

「姫君、こうやって包んでいる紙をずらして一気にかぶりつくのですよ」

 苦笑いしながら、ハンバーガーの食べ方を教えてあげて、手本としてハンバーガーを食べる。

「そ、そんな食べ方があるなんて! すごいです!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて新鮮な反応なんだ。本当にかわいいなアーシアは。

「ポテトもこうやって手掴みです」

「なんと!」

 フライドポテトを食べる俺を興味深そうに眺めるアーシア。微笑ましくて思わず顔が笑いそうになる。

「いやいや、アーシアも食べな」

「は、はい!」

 ハンバーガーに小さくかぶりつき、もぐもぐと口を動かして食べ始める。

「お、おいしいです! ハンバーガーっておいしんですね」

 目を輝かせながら言うアーシア。

「ハンバーガー食べたことないの?」

「はい。テレビではよく見るのですが、実際に食べたのはこれが初めてです。感動です! おいしいです!」

ふと、普段何を食べているのか気になったので聞いてみる。

「普段は何を食べてるの?」

「パントスープが主です。お野菜やパスタの料理も食べますよ」

 なんとも質素な食事だ。おそらくは教会だからだろうが。

「そうか、そうか。なら、今度また別のものを食べに行こうな」

「はい!」

 パクパクとおいしそうに食べるアーシア。

(さて、食べ終わったらどうしようか? ・・・・・・・・・・・・・うーん。ゲームセンターでいいか)

「アーシア」

「は、はい」

「食べ終わったら、ゲームセンター、通称ゲーセンに行くぞ」

「はい!」

 しばらくして、食べ終わったアーシアを連れて俺たちは、ゲームセンターへ移動した。

「――――ん?」

「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」

 誰かに見られていたような気がするが、気のせいだろう。





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「峠最速伝説イッセーッ!」

 アクセルを踏んで、カーブの手前で手早くギアチェンジ。そして、相手の車両を一気に抜き去った。

「速いです! 速いです、イッセーさん!」

 フッ、見ているかアーシア? 俺のハンドルさばきに酔いしれな!

 俺たちはゲーセンのレーシングゲームをしていた。

 オカルト研究部に入るまでは、帰宅部だったのでゲーセンにはよく行っていた。レーシングゲームだろうとなんだろうと余裕だぜ。

『WIN』

 俺の勝利を告げる文字が画面に映し出される。ふっ、俺に勝とうなんて、百年早いのだよ。

少し、自分に酔っていると、いつの間にかアーシアがいなくなっていることに気づいた。

 キョロキョロと辺りを見渡すと、クレーンゲームの前にアーシアが張り付いている。

「どうした?」

「はぅ! い、いえ・・・・・・。別に何でもないんです」

 俺が声をかけると、なにやら誤魔化してくる。

「何かほしいのか?」

 クレーンゲームの中を見ると、人気キャラクター『ラッチューくん』の人形があった。ネズミを元にデフォルメしたかわいいマスコットキャラクターだ。

 この人形、確か日本初なのに世界的に人気があったな・・・・・・・。アーシアも好きなのだろうか?

「アーシア、ラッチューくん好きなのか?」

「え! い、いえ、そ、その・・・・・・・・・」

 アーシアは顔を赤くし、うつむきながら恥ずかしそうにうなずいた。

「よし。俺が取ってやる」

「えっ! で、でも!」

「いいから、俺が取るよ」

 善は急げということで、即お金を投入し、クレーンを動かし始める。

 こう見えてもクレーンゲームの成績はそれなりなのだ。

 そうは思ったものの、少し苦戦してしまい五回目でようやく取ることができた。まあ、何回もチャレンジして取れない人もいるのでそれなりにいい結果だろう。

「ほら、アーシア」

 人形を受け取ったアーシアは嬉しそうに胸に抱いた。

「ありがとうございます、イッセーさん。この人形、大事にしますね」

「おいおい、そんな人形だったらまた取ってあげるよ」

 そうは言ったが彼女は、首を横に振った。

「いえ、今日いただいたこのラッチューくんは、今日だけのものですから、大事にしたいんです」

 少し恥ずかしいが悪い気はしない。そこで、出かける前に渚がいたことを思い出した。

『いいかい、兄さん。兄さんはアーシアさんのお友達第一号だ。そして、アーシアさんは今日初めて友達と遊ぶんだ。お金は貸してあげるから、記念に洋服でも買ってあげるんだよ? いいね?』

 そう言って、結構な額のお金を俺に渡してくれたのだ。出世払いで返さなければいけないが、どうと言うことはない。

 時間を確認する。現在午後2時30分。大丈夫。まだまだ、時間はある。

「アーシア! 次はウインドウショッピングだ」

「はい!」

 俺はアーシアの手を引き、繁華街へと繰り出した。





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「ここに入ってみようぜ」

「え? で、でも・・・・・・」

「いいから、いいから」

 俺たちは繁華街で見つけた、ブティックに入った。

「いらっしゃいませ」

 入り口付近にいた、店員さんが迎えてくれた。丁度いい。俺のセンスでは不安があるが店員さんなら大丈夫だろう。

「すみません、彼女に似合う服を見繕ってもらえませんか?」

「綺麗な金髪ですね〜、これは腕が鳴るわ! 任せください!」

 サムズアップする店員さん。

「えっ! イッセーさん、私お金そんなに持ってないですよ!」

「大丈夫、俺が払うから」

 慌てるアーシアに言い聞かせ、アーシアは店員さんに連れて行かれた。



=数分後=



「お待たせしました〜」

 店員さんが持ってきた服を着るために、アーシアが試着室に入ってから数分がたった。どうやら着替え終わったらしい。しかし、待っている時間は居心地が悪かった。

「では、ご対面〜」

 試着室のカーテンが捲られる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 言葉が出なかった。

アーシアが着ているのは、ところどころにフリルがついていて、胸元に大きな赤いリボンがついている白いワンピースだった。金の髪が白によく映える。

「ど、どうですか・・・・・・・?」

 アーシアがうつむきながら聞いてくる。

「えっ! ああ、すごい! すごく似合ってるよ、アーシア!」

 本当によく似合っている。店員さんも「さすが、私!」と自画自賛していた。

「あ、ありがとうございます」

 顔が赤くなっていくアーシア。なんだか俺まで恥ずかしくなってきて顔が赤くなってきた気がする。

「店員さん、これ買います!」

 即決だった。

「ありがとうございます。そのまま、着ていきますか?」

「そうしてください」

「かしこまりました。少々、お待ちください」

 店員さんが、走っていく。

「イッセーさん、本当にいいんですか?」

 アーシアが不安そうに聞いてきた。

「いいって、俺からのプレゼントだから」

「お待たせしました。え〜、○○○○○円になります」

 聞いたとき思わず耳を疑った。だが、言った手前買わないわけにはいかない。俺はお財布からお金を出した。

「ありがとうございました〜」

 そして、着替えたアーシアを連れてお店を出る。

「イッセーさん、このお洋服ありがとうございました! 絶対、絶対大事にします!!」

 笑顔でアーシアが言ってきた。

「そう言ってもらえると、買った方としてもうれしいよ」

 その笑顔を見て、つられて俺も笑顔になった。

 その後、俺たちは日が暮れるまで遊び、アーシアが暫定的に厄介になっている部長の家に送り届けると、俺も家に帰った。とても充実した一日だっただろう。





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 え? 洋服の金額? 俺から言えるのは、渚から貰った金が一気に無くなったとしか言えない・・・・・・・・・。女物の服がこんなにするとは思わなかった・・・・・・・・・・。


Side out





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Side リアス


「あら、どうしたの? その服」

 帰ってきたアーシアを出迎えると、行った時と服装が変わっていた。

「イッセーさんが、プレゼントしてくれたんです!」

 アーシアがうれしそうに言った。

(あら、イッセーもやるじゃない)

「そうなの、よかったじゃないアーシア」

「はい! 私、この服絶対に大切にします!」

「ふふ、そう」

 思わず、微笑んでしまう。堕天使はきてないようなのでよかった。

(今度、イッセーを褒めてあげなきゃね)

 後日。そのことをイッセーに言ったら、ナギの入れ知恵だったそうだ。服の代金もナギが貸してくれたらしい。イッセーにはそのことは言わないようにきつく言っておいた。

(ナギは女性に気が使えるのね。いい子だわ)

 私は、ナギの好感度が上がった。


Side out

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