小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第22話〜




Side 渚


深夜PM 11:50

 僕たちは旧校舎の部室に集まっている。みんなそれぞれリラックスできる方法で待機していた。

「皆さん、準備はおすみになられましたか?」

 部室の魔方陣が光ってグレイフィアさんが現れた。グレイフィアさんを確認するとみんなが立ち上がる。

「開始時間になりましたら、魔方陣から戦闘フィールドへ転送されます。そこではどんなに派手なことをしてもかまいません」

 なら、思う存分派手にやるとしよう。

「あの、部長」

 兄さんが部長に話しかけた。

「何かしら?」

「部長にはもう一人、『|僧侶(ビショップ)』がいますよね? その人は?」

 言われてみれば、そんな人がいたことを思い出す。確か・・・・・・ギャ、ギャスパー?だったかな?

そして、僕と兄さん、アーシアさんを除くメンバーが何とも言えないような顔をした。

「残念だけどもう一人の『|僧侶(ビショップ)』は参加できないわ。いずれそのことについても話すわね」

 彼が出てくるのはもう少し先のはずだから、まあいいだろう。

「今回は両家の皆様もほかの場所から中継で戦闘をご覧になります。さらに魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されております。それを忘れないようにお願いします」

 大物が見てるって聞かされて兄さんは少し緊張しているようだ。

「それと、渚様」

「はい。なんですか?」

 突然、自分の名前が呼ばれる。話の流れてきに僕に話を振る感じじゃないと思うんだが・・・・・・・。

「これをどうぞ」

 そう言って、グレイフィアさんが差し出してきたのは「|悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」によく似た駒のようなものだった。

「これは?」

「特例のため、急遽作成した人間を一時的に眷属にする『|仮の駒(フェイク・ピース)』です。与えられた人間は人間と悪魔のハーフのような状態になるので注意してください」

 僕は|仮の駒(フェイク・ピース)を手に取って眺める。人間と悪魔のハーフねぇ・・・・・・。日光がつらくなるのだろうか?

「それに駒の特性はありません。今後は眷属にするかのお試し期間用として使用するものでもあります。ただ・・・・・・」

「ただ・・・・・・なんですか?」

 グレイフィアさんは一回言葉を切る。

「その駒はプロトタイプであり、製作には四大魔王の一人であるアジュカ・ベルゼブブ様が直接製作に関わっているのでどんな仕掛けが施されているか・・・・・・」

「はぁ・・・・・・・」

 なんかやばいことでもあるのだろうか?

「あの方は隠し要素を仕込むのが好きですから」

 ・・・・・・ちょっと不安になってきたんですけど。

 でも、駒が渡されるのは一回きりだから、お試し期間があるというのはいいと思う。

僕は覚悟を決めて、駒を体に押し当てる。すると、|仮の駒(フェイク・ピース)は僕の体に溶け込むように消えた。

「そろそろ時間です。魔方陣の方へ」

 全員が魔方陣へと移動する。そして、魔方陣が形を変え、光を発した。





■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■





 戦闘フィールドである駒王学園のレプリカに着いて、ゲームについての説明が終わり僕は作戦のために朱乃さんとともにいた。

「兄さんたちはうまくやってくれてますかね?」

「そんなに心配することありませんわ。小猫ちゃんもいますもの」

「そうですね。僕たちは兄さんたちのがんばりに期待しましょう」

 朱乃さんは翼で宙に浮かび、僕は魔力で空中に足場を作ってそこに立っている。僕たちの視線の先には体育館があった。

中では敵の「|兵士(ポーン)」3人と「|戦車(ルーク)」1人がいて、兄さんと小猫ちゃんが戦っている。ちなみに、僕の役割は朱乃さんの護衛だ。

―「「「イヤァァァァァァァァァァァ!!!!」」」―

 突然、体育館から悲鳴が響き渡る。

「兄さん? どうしたの?」

 耳につけていた通信機で、何があったのか兄さんに訊いてみた。

『アハハハ! どうだ、見たか! これが俺の技だ! その名も『|洋服破壊(ドレス・ブレイク)』! 俺は脳内で延々と女の子の服をはじけ飛ばすイメージをし続けたのだ!!』

 兄さんは僕の声を無視して、声高らかに自分の技を自慢し始めた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あらあら」

 僕の頬はおそらく引きつっているだろう。結局教えてもらえなかった兄さんの魔力の使い方はまさかのセクハラだった。朱乃さんは知っていたのか、それほどの動揺はないみたいだ。

『イッセー、小猫、朱乃、ナギ。聞こえる? 私よ』

 リアス先輩の声が通信機から聞こえた。

『朱乃、ナギ。準備はどう?』

『問題ありませんわ』

『そう。なら、例の作戦通りにお願いね!』

 リアス先輩はそう言って、通信を切った。

「それじゃあ、兄さんたちが出てきたらお願いしますね。朱乃先輩」

「任せてください」

 そう言ってから、すぐに兄さんと小猫ちゃんは外に出てきた。

「いきますわ!!」

 朱乃先輩は空に向けて、手を掲げる。

―ドオォォォォォォォォォォォンッ!!―

 体育館に向かって巨大な雷が降り注いで、目の前にあった体育館を吹き飛ばす。

「|撃破(テイク)

 朱乃先輩が僕に微笑みながらそう言った。

『ライザー様の「|兵士(ポーン)」3名、「|戦車(ルーク)」1名、戦闘不能!』

 グレイフィアさんの声がフィールドに響いた。

「お見事です」

「あらあら、ありがとうございます」

 下を見ると、兄さんが小猫ちゃんから距離を取られていた。あんな技を使ったんだから当然だろう。

「・・・・・・兄さん、ハーレム王になるとか言いながら、女の人に嫌われそうな技を使ってるのはなぜでしょうか?」

「それは、イッセーくんがスケベだからですわ」

 一発で納得する返答だった。

『みんな、聞こえる? 朱乃が最高の一撃を決めてくれたわ。これで最初の作戦はうまくできたわね』

 リアス先輩が考えた作戦は、重要地点を破壊すること。そして、それに相手の眷属を巻き込むことだった。それによっていきなり4人も倒せたのはいい出だしだろう。

『あの雷は一度放ったら二度目を打つのに時間がかかるわ。連発は不可能。まだ相手の方が数では上よ。朱乃の魔力が回復したら、私たちも前に出るから、それまで各自お願いね。ナギはしっかり朱乃を守るのよ』

「了解です」

 部長に返事をして通信を切った。

「よろしくお願いしますね、ナギくん」

「任せてください――ッ!」

 |すべてを知るもの(アルヴィーズ)が警鐘を鳴らす。方向は小猫ちゃんと兄さんのいる方だ。

「ナギくん?」

 朱乃先輩が不思議そうな顔で僕を見てくるがそれに応えている暇はない。僕は兄さんと小猫ちゃんの方に急降下した。重力と魔力放出の推進力を得た僕は瞬く間に兄さんたちのもとに降りる。

「渚!?」

「先輩!?」

 驚いた二人をしり目に、僕は距離の近い兄さんを突き飛ばした。兄さんは突然のことでなすすべもなく突き飛ばされる。あとは小猫ちゃんだが、|すべてを知るもの(アルヴィーズ)の鳴らす警鐘が一層大きくなる。このままでは間に合わない。僕は小猫ちゃんを庇うように押し倒して、魔力障壁を急速に構築した。

―ドォンッ!!

 直後、障壁に爆発が叩きつけられる。急ごしらえの障壁では完全に衝撃を防ぐことができずに、地面に着いた腕が耐え切れなくなり、肘を着く形になるが、なんとか防ぐことができたようだ。

「ぎりぎりセーフかな」

下を見ると小猫ちゃんの顔がすぐ目の前に。ほんのちょっと5cmほど近づけばキスができるだろう。

普段表情があまり変わらない小猫ちゃんもこれは恥ずかしいのか顔を赤くしている。僕もつられて顔が赤くなるのを自覚した。

「な、ナギ先輩・・・・・・?」

「大丈夫、小猫ちゃん―――ッ!?」

 心なしか瞳が潤んでいるように見え、小猫ちゃんが蠱惑的に見えた。女の子ではなく女の表情とでも言えばいいのだろうか? 戦闘中にもかかわらず、生つばを飲み込んでしまった。

 そして、ちょっとずつ顔が近づいていき―――

「二人とも無事か!?」

―――ものすごい勢いで離れた。覆いかぶさった体勢から起き上がる。小猫ちゃんもすぐに起き上った。顔は真っ赤である。

(僕は何をしようとしていた!? これでは兄さんのことは言えないぞ!?)

 軽く自己嫌悪に陥っていると、空中から声をかけられる。

「あら、残念でしたわ」

 事前の情報で見た人だ。確か、敵の「|女王(クイーン)」である。彼女がこちらまで飛んできた。

「ナギくん、彼女は私が相手をしますわ」

 いつの間にか降りてきていた朱乃先輩がそう言って、僕の前に出ようとするが、僕はそれ止める。

「僕が行きます。朱乃先輩はまだ魔力が十分ではないでしょう。なので、兄さんたちと祐斗と合流してください」

 僕と朱乃先輩は見詰め合う。先に折れたのは朱乃先輩だった。

「わかりましたわ。ここはお任せします」

「ありがとうございます」

「お気になさらず、イッセーくん、小猫ちゃん、行きますわよ」

 朱乃先輩は二人を引きつれてこの場から移動する。

「逃がさな―&#8212;」

「やらせるとでも? 「|女王(クイーン)」、ユーベルーナさん」

 魔術を発動しようとしていたユーナベールに斬りかかる。彼女はそれを避けるために魔術の発動を中止した。

「ふふふ・・・・・・・。たかが、魔力の多い人間が私を倒せるとでも?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 僕は何も答えず、|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)を構えた。

(『|四次元視(プリズスキャルブ)』!)

 目を魔力で強化する。視界が二重にぶれ始めた。

「だんまりですか・・・・・・まあ、いいわ。くらいなさい!」

 ユーベルーナは僕に向かって、魔術を使ってくるがぶれた視界に映る光景を見て、僕はその爆発を回避する。

「あら? 避けましたか・・・・・・。なら、これはどうです!」

―ドォン! ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!

 今度は視界を埋め尽くすような爆発の連続をするようなので、爆発に紛れるようにして急降下する。

「アハハハハ! どうかしら? 私の爆発は?」

 ユーベルーナは完全に僕を舐めきっているようで、わざわざ自分の視界を悪くするような攻撃をしてくれた。僕にとってはありがたい限りなので、文句はない。

 しかも、彼女は僕に気づいている様子はない。ならば、これはチャンスだろう。

 魔力放出で急上昇。ユーベルーナの背後に駆け上がる。そして、そのまま|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)を振り上げる。ぶれた視界のなかで彼女に避ける様子は見られない。

「フッ!」

「なっ!? ―――キャァ!」

 無防備な背中に|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)による一撃を叩き込んだ。彼女はもろにくらって、吹き飛んでいった。

 しかし、いかに無防備で僕自身を魔力で強化した状態だったといえど、|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)ではやはり攻撃力に欠けるようだ。その証拠に彼女は、瞳に憤怒の炎を宿りながらこちらを睨んでいる。

「よくも、やってくれましたね・・・・・・・・。ここからは手加減しませんわ!」

 ぶれた視界には僕を完全に囲むように爆発が起きている。僕はその場を転がるように退いた。

―ドドドドドドドドドドドドドドォンッ!

 すると先ほどよりも短い間隔で、連続した爆発が起こった。あのままあそこにいたら確実にやられていただろう。

「これも避けますか・・・・・・・なら、次はこれです!」

―ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!

 今回は先ほどのように短い間隔ではないが、避けた先を爆発させて追いこんで行くつもりらしい。このまま避けることは可能だが、避け続けても意味がないのでここら辺で仕掛けるとしよう。

 魔力放出を細かく行い、爆発を避けながらどんどんユーベルーナへと接近していく。すでに僕の手から|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)は消えており、代わりに右手に魔力を纏わせはじめた。

「ええい! 当たりなさいッ!」

『ライザー様の「|兵士(ポーン)」3名、戦闘不能!』

 突然アナウンスが流れた。どうやら祐斗か朱乃先輩がやってくれたらしい。

「本当に遊んでいられなくなりましたわね」

ユーベルーナは次々と爆発を起こすが、見える範囲は|四次元視(プリズスキャルブ)で、見えない範囲は|すべてを知るもの(アルヴィーズ)のおかげで、察知できるので、すべてを回避する。

 回避しながら近づいていき、ついにユーベルーナはとの距離が5メートルほどになった。この距離では自分もまきこむ可能性があるので、彼女は自身の得意魔術である爆発を使うことができない。つまり、爆発がやんだ。

「この―&#8212;―」

 別の魔術を発動しようとしたユーベルーナに、左手で掌底を叩き込んで弾き飛ばす。

「グハッ!」

そして、吹き飛んでいるユーベルーナに右腕に纏わせた魔力を解放した。

「『|神討つ剣狼の銀閃(フェンリスヴォルフ)』ッッ!!!!」

―ゴォォォォォォォォォォォォッ!

 僕の右腕から、膨大な量の銀色の魔力が放たれた。以前、堕天使に使った時より圧縮率が上がっているので、比例して威力も上昇している。

 ユーベルーナは辛うじて、防御の魔術を発動したようだが、入念に準備していたならともかく即興の防御ではなすすべもない。|神討つ剣狼の銀閃(フェンリスヴォルフ)はその防御ごとユーベルーナを飲み込んでいく。そして、|神討つ剣狼の銀閃(フェンリスヴォルフ)が地面にぶつかる。

―ドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!

 着弾した地点は大きなクレーターができていた。そして、すでにそこにユーベルーナの姿はない。

『ライザー様の「|女王(クイーン)」戦闘不能!』

 グレイフィアさんのアナウンスが戦場に鳴り響くのを、僕は右腕から余剰魔力を吹き出しながら聞いた。


Side out


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