小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第36話〜





Side 渚


「リアス先輩、学園を大きな結界で覆っています。よほどのことがない限りは外に被害は出ません」

 学校に着くと匙くんが現状報告をしてくれた。生徒会メンバーと祐斗を除くオカルト研究部のメンバー全員が集まっている。

「これは被害を最小限に抑えるものです。正直言ってコカビエルが本気を出せば、学園だけでなくこの町そのものが崩壊します。さらに言うならすでにその準備に入っているみたいです。私の下僕がその姿を確認しています」

 ずいぶんとはた迷惑な存在だな。自分勝手が過ぎる。

「攻撃を抑えるためにも私と眷属はそれぞれの配置で、結界を張り続けます」

 そう言いながら、ソーナ会長は学園の方を見つめた。学校に被害が出るのは免れないので、それを悔やんでいるのだろう。

「ありがとう、ソーナ。あとは私たちが何とかするわ」

「リアス、相手は桁違いの化け物ですよ? 確実に負けるわ。あなたのお兄様に―&#8212;」

「あなただって、お姉様を呼ばなかったじゃない」

 リアス先輩がソーナ会長の言葉を遮って、首を横に振りながら言った。

「すでにサーゼクス様には打診しましたわ」

 朱乃先輩が二人の会話の中に割って入りそう言った。

「朱乃!」

 非難の声をリアス先輩があげる。

「リアス、あなたがサーゼクス様に迷惑をかけたくないのはわかりますが、これはもうすでにあなた個人で解決できるレベルを超えているわ」

 怒った口調で朱乃先輩が言うと、リアス先輩も渋々ながら納得したようだ。

「サーゼクス様が到着するのは一時間後だそうです」

 いつものニコニコ顔に戻った朱乃先輩がそう言った。

「一時間・・・・・・・。わかりました。その間、シトリー眷属の名にかけて結界を張り続けます」

「一時間後ね・・・・・・・・・。さて、私の下僕悪魔たち。私たちはオフェンスよ、結界内に入ってコカビエルの注意を引くわ。これは死戦よ! それでも死ぬことは許さないわ! 生きて帰ってあの学園に通うわよ、みんな!」

『はい!』

 リアス先輩もソーナ会長も覚悟を決めたみたいだ。僕たちもそれに応えるように力強く返事をする。そして、僕たちは結界の中に突入した。





■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■





 堂々と正面から入り込む。兄さんはすぐさま、プロモーションで『女王(クイーン)
』に昇格して、力の底上げをはかった。

 そして、突入した学校には、異様な光景が広がっている。

 校庭の中央に神々しい輝きを放つ剣が四本宙に浮き、それを中心として怪しい魔方陣が校庭全体に描かれていた。

 魔方陣の中心部にはバルバー・ガリレイが佇んでいる。

「これはいったい・・・・・?」

 兄さんがみんなの気持ちを代弁するように言った。

「四本の聖剣を一つにするのだよ」

 バルパーはおかしそうに口にした。

「バルパー、あとどれくらいでエクスカリバーは統合する?」

『ッ!』

 空からコカビエルの声が聞こえると、みんなに緊張が走った。視線を空中に移す。そこには月明かりを背に浴びるコカビエルの姿があった。

「五分もいらんよ、コカビエル」

「そうか、では頼むぞ」

 コカビエルはバルパーに向けていた視線を、僕たちの方に移した。

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私たちが――」

―ヒュッ! ドオオォォォォォォォォォォォォンッ!

 何かを投擲するような音のあとに、爆音が辺り一帯に鳴り響いた。

 爆風が生じる。そして、爆風が発生した場所にあった体育館は跡形もなく消し飛んでいた。

「つまらん。まあいい、余興にはなる」

 体育館があったところには、光の槍が突き刺さっていた。ただし、以前に見たものよりも数十倍の大きさだったが。

「さて、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおう」

―パチン

 コカビエルが指を鳴らす。すると、暗闇の中から何かが近づいてきた。

「ケルベロス!」

 忌々しそうにリアス先輩が言った。3つの首を生やしたいかにも狂暴そうな犬。地獄の番犬と言われる存在だ。

「本来は地獄。つまりは冥界へ続く門の周辺に生息しているのだけれど、人間界に持ち込むなんて!」

「ヤバいんすか?」

「兄さん、首が三つある犬がヤバくないわけないだろ!」

「ナギの言うとおり! 消し飛ばすわよ!」

 リアス先輩は気合が入っているな。さて、僕もやりますか・・・・・・・。

「『白銀魔術礼装(セイグリットワルツ)』」

 右手に握った鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)黄金色の聖約(ティルヴィング)へと変わる。そして僕の髪が銀色に染まった。

「イッセー、あなたは今回サポートよ! 倍加した力を仲間の誰かに譲渡して、強化させなさい!」

「わかりました!」

 兄さん後方へと下がる。もともと、サポート役のアーシアさんと一緒だ。

「なら、僕が兄さんの護衛になります」

「頼んだわ、ナギ! 朱乃!」

 僕も後退する。リアス先輩は朱乃先輩とともに空へ舞う。ケルベロスは二人の方に飛び出していった。

 首の一つがリアス先輩に向けて、炎を吐いた。

「リアルに怪獣だね」

「そうだな」

 なんだか、感慨深く感じながら見守る。

「甘いですわ」

 リアス先輩に向かって吐かれた炎は、朱乃先輩が前に入り炎を瞬時に凍らせた。

「くらいなさい!」

 そして、朱乃先輩の後ろから、リアス先輩がケルベロスに向けて滅びの魔力の塊を放つ。しかし、他の二つの首がそれを迎え撃つように炎の弾を吐きだした。

 空中でしのぎを削る。リアス先輩の魔力とケルベロスの火炎。しかも、追加でケルベロスは炎の弾を発射しているので、徐々にリアス先輩が押され始めた。

「すきあり」

 しかし、小猫ちゃんがケルベロスの頭に拳を打ち込んだことで、さらに追加の炎の弾を発射させないようにする。

「くらいなさい」

 朱乃先輩が得意の雷をケルベロスへと落とす。追撃でリアス先輩の魔力もケルベロスの脇腹に直撃した。ケルベロスの脇腹はリアス先輩の魔力によって、ごっそり持ってかれているが、いまだにケルベロスの眼光は鋭い。まだまだ、動くことができるようだ。

 そんな中、後ろに気配を感じて振り返る。そこにはもう一匹のケルベロスがいた。

「兄さん、アーシアさん、後ろだ!」

 すぐさま、2人に注意を促し駆け出す。

「ガァオァァォァォァォォォ!ッ」

 叫び声をあげながら、ケルベロスも駆け出してきた。

 目と足を強化し、祐斗には少し劣るであろう速さで接近する。そして、ケルベロスが振るう前足を、続いて噛みついて来ようとする首を避ける。

「セイッ!」

 回避した首をすれ違いざま一閃。何の抵抗も感じさせることなくケルベロスの首を落とした。ケルベロスの傷口から血があふれ出す。宙を舞う首は塵になった。

「加勢に来たぞ」

 そう言いながら現れたのは、青い髪に緑のメッシュが入ったゼノヴィアさんだった。彼女は僕と同様に首を斬り飛ばす。これで残る頭は一つ。宙を舞っていた首は僕が斬ったのと同様に、塵となって消えた。これが魔を滅する聖剣の力なのだろう。

「聖剣の一撃。魔物に無類のダメージを与える」

 即席の連携。僕よりゼノヴィアさんの方が効果的な攻撃ができるので、ケルベロスの注意を僕が引きつけている間に、彼女がケルベロスの胸元に聖剣を突き刺した。

 その瞬間、ケルベロスの体が塵と化し宙に霧散していった。これで、こちらの方は一応片付いた。リアス先輩たちの方を見る。

「部長! 朱乃さん! ケルベロスを屠れるだけの力を得ました!」

 どうやら、大丈夫そうだ。兄さんもどの程度倍加すれば相手を倒さるか判断がつくようになったらしい。後で、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』のおかげだと知って、ちょっとガクッとなったのは、この時の僕はまだ知らない。

「イッセー! あなたの譲渡を私と朱乃、二人同時にできないかしら?」

「・・・・・・・・どちらも倍加した力の七割か八割しか、譲渡できませんけど可能です!」

 兄さんは少し考えるような素振りをするとそう言った。

「それだけあれば十分よね、朱乃?」

「はい、いけますわ」

 二人は顔を見合わせてそう言い、兄さんに譲渡するように言った。すぐさま、兄さんは二人に近づいて、肩に触れる。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)! ギフト!」

Transfer(トランスファー)!』

 兄さんの体を通して、膨大な力がリアス先輩と朱乃先輩へと流れ込んでいく。そして両者から、魔力があふれ出した。

「いけるわね、朱乃!」

「はい! 天雷よ! 鳴り響け!」

 リアス先輩の不敵な笑みに応えるように、朱乃先輩が雷の照準をケルベロスへと合わせる。しかし、それを察知したのかケルベロスはその場から逃げようとしていた。

「逃がさないよ」

 だが、ケルベロスは逃げることはできず、その四肢を無数の地面から生えた剣によって貫かれた。この能力と声は祐斗だ。思わず笑みがこぼれる。ナイスタイミングだ!

 そして、逃げられないケルベロスに朱乃先輩の雷が降り注いだ。今まで見た中で最も大きな雷。校庭の半分以上を覆い尽くしそうなほどの大きさだった。

―ドオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!

 全身を揺さぶられるような轟音が鳴り響いて、思わず耳をふさいでしまう。ケルベロスはその身を雷に焼かれて無に帰した。

「くらえ! コカビエル!」

 ケルベロスが消滅して、即座にリアス先輩がコカビエルへと手を向けそこから、必殺である滅びの魔力の塊が撃ち出された。

「でかい!」

 兄さんがその大きさに驚愕して声を出す。いつも撃ち出している魔力の十倍近くの大きさだ。

 対するコカビエルはただ、右手をかざしただけ。それで防げるのか? と思ったがその通りだったらしい。

 リアス先輩が撃ち出した滅びの魔力をコカビエルは、かざした右腕で防いでいる。そして、コカビエルは受け止めていた腕を上に向けて、リアス先輩が放った魔力の軌道をずらし、天高くに消えていった。

「なるほど。赤龍帝の力があれば、ここまでリアス・グレモリーの力が上がるか。これはひどくおもしろい。それにそこの女はどうやらバラキエルの力を宿しているようだな」

 右手を握ったり開いたりしながら、笑うコカビエル。そして朱乃先輩の方を見た。

「・・・・・・私をあの者と一緒にするなッ!」

 目を見開いて、激昂した朱乃先輩が雷を連続して落とすがコカビエルは歯牙にもかけず、鼻で笑うとその翼ですべてを薙ぎ払った。

 バラキエル・・・・・・堕天使の幹部の名前だ。そう言えば、朱乃先輩は人間と堕天使の間に生まれたんだったな・・・・・・・。

「・・・・・・・・・完成だ」

 バルパーの声が聞こえる。そちらを向くと、校庭の中心にあった4本の聖剣が今までにないほどの輝きを放っていた。

「四本のエクスカリバーが一つになる」

 神々しい光が辺りを覆う。そして、宙に浮いている四本の聖剣が重なっていき、一本の聖剣になった。

「エクスカリバーが一本になった光で下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない」

 衝撃的な告白。タイムリミットは二十分それまでにコカビエルを倒さなければ、町ごと僕らは全滅ですか。

 校庭の魔方陣が光り、力を帯び始める。リアス先輩のお兄さんであるサーゼクス・ルシファーの到着は間に合わない。到着したころにはこの町はなくなっている! これは本格的にまずくなってきた・・・・・・・・・。


Side out


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