小説『魔法少女リリカルなのは 〜俺にできること〜』
作者:ASTERU()

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アリシアの性格がよく分からん……


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 




41. 闇の書の真実









 アリシアとの邂逅後、なぜか絡まれていた。


 
  「訂正を要求するよ! おこちゃまって言わないで!!」


  「……“訂正”とか“要求”とか、よくそんな難しい言葉知ってんな」


  「えっ……そ、そう? えへへへ〜〜……、ハッ!? は、話を逸らさないで!!」



 しばらく話してみて感じたことだが、この姉妹、性格がまるで正反対だ。
 フェイトは大人しいが、アリシアはとにかく元気である。
 まぁ意外と頑固なところはそっくりではあるが―――



  「聞いてるの!」


  「あ〜聞いてる聞いてる。 アリシアね、了〜解。 
  んで、アリシア。 お前はなんであいつ等に絡まれてたの?」


  「うっ!?」



 俺の発言を聞いて途端、アリシアは黙り込んでしまった。 
 俺が視線を合わせようとすると、あからさまに視線を逸らそうとするため、
 なにかを隠そうとしているのがバレバレだ。



  「……じゃあなアリシア。 達者で暮せ」


  「まっ、待ってユウお兄ちゃん!? わかったから、話すから!! 
  だから置いていかないで!!!」



 そのまま踵を返してこの場を去ろうとするが、アリシアが泣きながら服にしがみ付いてきた。
 しかもユウお兄ちゃんって……まぁいいけどよ……



  「で、もう一回聞くけど、なんであいつ等に絡まれてたんだ?」


  「……た」


  「……なんだって?」



 俺の質問に恥ずかしそうに俯きながら、ボソボソとなにかを呟いている。
 ったく、またこれかよ……



  「……要するに、迷ったんだな」


  「ううぅ〜……ッ、そうだよ! 迷っちゃったの!! 
  だってしょうがないじゃない、ここに来てからまだそんなに経ってないし、
  お姉ちゃんもお姉ちゃんの友達ともいつの間にかはぐれちゃったんだから!!!」



 アリシアは顔を真っ赤にしながらヤケクソ気味に叫んだ。 
 そんなに恥ずかしがるようなことじゃねぇのにな。 
 でもやっぱりお姉ちゃん=フェイト、友達=なのはだよな。
 何やってんだよあいつ等。



  『ユウ、いじめっ子?』

  『……何処でそんな言葉覚えた』

  『テレビ』

  『……知識ってもんも大概にしとかねぇとな。 
  まぁ確かに、こいつをからかうのは楽しそうではあるがな』



 こうまで大げさなリアクション取ってくると、ホント弄りがいがある。 
 でもまぁ、この辺にしておくか。


 
  「母さんはどうしたんだ?」


  「……母さんは用事があって今はこっちに来てないの。
  私とお姉ちゃんだけこっちに来て、それで学校に通ってるんだ」



 プレシア達がこいつを一人にするとは考えづらい。 
 恐らくはアリシアとフェイトだけでも学校に通わせたいってことなんだろうな。


 
  「……お前の家、どこだよ」


  「え……」


  
 アリシアは意味がわからないといった風に聞いてきた。 
 ……俺そんなにヘンなこと聞いたか?



  「お前の家の場所だよ。 近くまでなら送ってってやるから」


  「……あ、ありがとう……。 えっと、翠屋っていうお店の近くにあるマンションだよ。
  大きいからすぐにわかると思う」



 翠屋の近くにあるマンションね……。
 もしかして半年ほど前にできたっていう高級マンションか? 
 しっかし今更だが、見ず知らずの俺に自分の家を教えるとか、こいつに警戒心ってもんはないのかねぇ。



  「道はわかるからついてこい。 こっちだ」


  「ま、待ってよ!」



 歩き出した俺の後に、アリシアはついてきた。 
 その後はアリシアやヤミと代わる代わる談笑していたが妙な気配を感じ、その場で立ち止まってしまう。



  『「ユウ(お兄ちゃん)?」』


  「……アリシア、俺の傍から絶対離れんなよ」



 俺がクロを起動すると、アリシアは驚いていたが、俺の言う通りそのままじっとしていた。
 しばらくすると、辺りが結界に囲まれ、目の前に昨日見かけた仮面の男が現れる。



  「……よく気付いたな」


  「なんかイヤ〜な視線感じたんだよ。 お前が付けてるその悪趣味な仮面、とっとと外したらどうだ?」


  「…………」



 軽口を交わすが、正直言って状況はあまり良くない。
 俺一人なら負ける気はサラサラないが、こっちにはアリシアがいる。 
 一応リンカーコアはあるみたいだが、フェイトやプレシアに比べると遥かに小さく、
 自分の身も護れないだろう。



  「なんのようだ?」


  「……お前にはここで消えてもらう。 計画の邪魔になるのでな」


  「お前の都合なんざ知るかよ。 ここで消されたら、それこそはやて達に消されちまうからな」



 俺は刀を、相手は拳を構え、互いに対峙する。
 だがこんな街中で結界なんて張っちまったら管理局がすぐに飛んでくるのに、こいつなに考えて―――



  「――――キャッ!!?」


  「ッ!? アリシア!!」



 いきなり背後から気配を感じると同時に、アリシアの悲鳴が聞こえた。
 急いで振り返ってみれば、目の前にいるはずの仮面の男がもう一人いて、気絶したアリシアを抱えていた。



  「まさかっ! お前等二人―――」


  「動くな」



 ナイフをアリシアの首元に突き付けながら、仮面の男は静かに告げた。 
 その声からそれが脅しでないことが伝わってくる。



  「……約束しろ。 俺がなにもしねぇ限り、そいつに手をださねぇって」


  「お前がなにもしなければ……なっ!」 


  「カハッ!!?」



 背後にいたもう一人の仮面の男が俺の正面に回り込み、そのまま拳を鳩尾に叩き込んでくる。
 俺はたまらず膝をついてしまい、そのまま何度も蹴られていく。



  「……そろそろトドメを差してしまえ。 急がないと管理局が来る」


  「はいはいっと……。 それにしても笑っちゃうよね。 
  こいつ等ホント、無駄な努力積んじゃってるんだから」


  「ゴホッ! ……どうい、う……ことだ」



 こいつ等あの時はシャマルを助けてたみたいだが、やっぱりなんか目的があんのか。
 一体何が―――



  「冥土の土産に教えてやるよ。 アンタ等のしていることはみ〜んな無駄。
  闇の書が完成してもあの子は助からない。 それどころか、完成したらあの子は死んじゃうんだよ。 
  なんたって、闇の書は壊れているんだからね!」


  『ぇ……』



 仮面の男の口から放たれて言葉に、俺もヤミも茫然としてしまう。
 今、こいつはなんて言った。
 はやてが……死ぬ?



  『ヤミ、どういうことだ! あいつの言っていることはホント―――』


  『あっ……あぁっ……あっ……』


  『ヤミ……?』



 闇の書の一部であるヤミに事の真偽を聞こうとしたが、なにか様子がおかしい。
 まるで何かに苦しんでるみたいな―――


  
  『おいヤミ!! しっかりしろ!! ヤミ!!』


  『ああああああああああああああああ!!!』


  『ヤミッ!!!』



 ヤミが叫び出した後、こちらからいくら呼びかけてもまるで反応しない。
 クソッ、なにがどうなってんだよ!



  「余計なことは言わなくていいの。 さっさと始末しなさい」


  「そうだね。 もう少しでお父様の悲願が叶うんだもんね。
  闇の書なんてなくなっちゃえば、もうこれ以上お父様は苦しまずに済む!」



 そう言いながら仮面の男は、高密度のスフィアを生成。
 この一撃で決めるらしい。
 


  (まずはこの状況をどうにかしねぇと……、成功する確率は五分五分ってとこだが、やるしかねぇ!)



 痛みで意識が飛びそうになるのを懸命に堪えながら、魔法陣を展開。
 普段使わない魔法だけど、成功してくれよ!



  「弾け、ろ……ッ、閃光ぉ! ――――ヴァンジーロスト!!」



 瞬間、強烈な閃光が辺りを覆い尽くし、全てが真っ白に染まる。
 俺はその隙にアリシアを抱えている方の仮面の男に近づき、アリシアを奪い返す。



  (二人で転移するのは時間がかかる。 まずはコイツを―――!)



 アリシアを翠屋付近に転移させる。
 後は俺が―――




  ――――ヒュンッ!




  「な……」



 突如飛来してきた鋭利な魔力弾が俺のわき腹に突きささる。
 閃光が止み前を向けば、目を抑えながらこちらに手をかざしている仮面の男。



  (ヤベェ、ドジっちまったな……。 
  でも、アリシアだけでも先に転移させといて良かった……)



 余りの痛みに意識が朦朧としてしまう。
 本格的にヤバくなってきた。



  「「ユウ(君)!!!」」

  
  (なのはにフェイトまで……とうとう来ちまったか)



 なのは達が来たんじゃ、短距離転移だったら管理局に捕捉されちまう。 
 残された方法は長距離転移しか―――
 


  『……なのは、フェイト。 翠屋の近くにアリシアが居るから拾ってやってくれ』


  『『え……』』



 薄れそうになる意識の中で、なんとか二人にアリシアのことを伝えた後、
 倉庫から“聖女のレンズ”を取り出し、長距離転移を行った。









◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


プレシアはアリシアにフェイトのことを詳しく話していません。
子供にそんなこと言っても混乱させてしまうだけ。
或る程度成長してから話す予定です。

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