小説『魔法少女リリカルなのは 〜俺にできること〜』
作者:ASTERU()

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7. 翠屋訪問









 あれから時間がたち、今は放課後。
 今日は他の奴らと遊ぶ予定もないし、さっさと帰ろうとする。
 しかし―――




  「……なんか用か?」




 帰ろうと下駄箱に向かうと、そこには高町、月村、バニ……バニングスが居た。
 こいつら待ち伏せしてたな。




  「えっと…、ユウ君。 これからだけど時間ある?」




 高町が遠慮がちに声を掛けてくる。
 確かにこの後は特にすることないからヒマではあるけど……




  「これからみんなで翠屋に行くんだけど、よかったらユウ君も一緒にどうかな?」



  「ちょ!? なのは! なんでこんな奴のこと誘うのよ!!」




 高町が翠屋に誘ってきた。
 バニングス、まだ根に持ってたのか…
 しかし翠屋か。
 あれ以来なんか気まずくて行ってないんだよなぁ、
 まぁあんだけ色々やった訳だし。
 てか正直行きたくない。
 よし、ここは断っとくか…




  「悪ぃけど遠慮しとくわ」



  「え……、なにか用事があるの?」



  「いや、この後は特にやることねぇんだけど、ちょっと翠屋には行きづらくてな…」




 断られて悲しそうな表情をするなのは。
 俺も行きたくない理由を正直に答える。




  「行き辛いって…、どうして?」



  「いや、前にお前の家族とちょっとな……」




 そう言って言葉を濁す。
 言えねぇ……、行き辛くなったきっかけに高町が関わってるなんて絶対言えねぇ……!



 とりあえずこのまま帰ろうとするが―――




  ギュッ




  「なにす……、んでしょうか?」




 高町が俺の服の袖を掴む。
 まだなにかあるのかと思って高町に問いかけようとするが、思わず丁寧語で話してしまう。
 お前、なんで―――




  「喧嘩でもしたの!? 
  だったら駄目だよ! 仲直りしなきゃ!!」




 高町は瞳に涙を溜めて悲しそうに叫ぶ。
 ってかなんで泣きそうになってんだよ!?




  「いや、喧嘩ってわけじゃ…」



  「じゃあどうして!?」




 正直に話そうにも、話せばこいつは絶対泣く。
 ったくこいつはホント泣いてばっかだな……
 はぁ、しゃあねぇ。




  「わぁったよ! 行くよ! 行きゃあいんだろ!」

 


 俺がやけくそ気味に叫ぶと、高町は泣きそうな顔を徐々に笑顔にかえていく。




  「うん♪」



  「お前らもそれでいいか?」




 一応確認の意味を込めて、
 今まで黙って俺たちのやりとりを見守っといた。
 月村とバニングスに尋ねる。
 まぁ月村はOKだすと思うけど、バニングスは…




  「私は構いませんよ。」



  「ふん! ……別にいいわよ。」




 意外だな。バニングスの奴がOKを出すとは……
 と言うか月村お前―――

  


  「なぁ月村。 敬語、やめてくれねぇか?
  俺達、一コしか歳違わないんだからさ」



  「いやでも、そう言うわけには―――」



  「敬語」



  「……わかったよ、これで良いユウ君?」



  「おう」

  


 俺の言葉に諦めたのか、月村は普段通りだろう言葉使いで話す。
 なんか敬語って落ちつかねんだよなぁ。




  「さてと、翠屋に行きますか。 高町、月村、バーニング」



  「バ・ニ・ン・グ・ス! 何回言えばわかるのよ!!」



  「なんかバニングスって言いにくいんだよ。 舌噛みそうだ。
  それにバーニングってのも案外ピッタリだと思うぞ。
  ほら、お前ってすぐ怒るし、起こった様子もなんか火山が噴火してるみたいだしな」
 


  「あんたねぇ!!!」



  「落ち着いてアリサちゃん!」



  「そうだよ!ここはいったん冷静に―――」




 バニングスは俺の言葉に怒りを露わにし、襲いかかってこようとするが、
 傍にいた高町と月村に止められる。
 うん、やっぱりお前はバーニングだ。




  「ちょ! 離しなさいよ!! 
  ていうか一発殴らせなさいっ!!!」














 









 暴れるバニングスをなんとか沈めた俺たちは翠屋の前にいる。
 やべぇ、スゲェ帰りたい…




  「ちょっと!早く入りなさいよ!」




 後ろにいるバニングスが入るように怒鳴る。
 確かにここまでの道中で腹は括った。
 でも心の準備ぐらいさせてくれても―――




  「あらなのは、おかえり。……その子達はお友達?」




 聞き覚えのある声に一瞬ビクっとする。
 まさか今の声って―――




  「うん♪ そうだよお母さん!」

  「そう♪ いらっしゃい、ようこそ翠屋へ。
  私はなのはの母親の桃子よ」




 やっぱり桃子さんかよ!
 ってこんなことしてる場合じゃ―――




  「初めまして、なのはちゃんの友達の月村すずかです」



  「アリサ・バニングスです。突然お邪魔してすいません」




 俺が軽いパニックにおちいってる間に自己紹介をする月村とバニングス。
 ってかバニングス、俺とはえらい違いだな!?




  「あら、そっちの子は?」




 なるべく桃子さんに視線を合わせないようにしていると、周りが自己紹介をするなか、
 俺だけなにも言わないのを疑問に思ったのか尋ねてくる。
 よし!1・2の3でいくぞ。
 1・2の―――




  「お母さん!ユウ君だよ!ほら、前に話した!」



  「……え……」




 高町ぃ!!!おまっ!
 せっかくこっちから話しかけようとしたのに!




  「……ユウ君?」



  「……久しぶり、桃子さん」




 俺は観念して顔を上げ、桃子さんと視線を合わせる。
 桃子さんは最初は驚いていたが、徐々にその表情を喜びにかえる。




  「ホント久しぶり! でもどうして会いに来てくれなかったの?
   恭也も美由紀も、あなたに会いたがってたのよ」




 どうやら気まずいと感じていたのは俺だけのようだ。
 俺の心配っていったい…




  「とりあえずこんなところで立ち話もなんだし、中に入って。
  アリサちゃんとすずかちゃんもね」




 桃子さんに促され店内に入る。
 高町から聞いた話では翠屋はここいらじゃ有名な店で、何度か雑誌などでも紹介されたらしい。
 主な客は学生や主婦だそうだが、まだ下校時間には早く、
 お昼もとっくに過ぎているため店内には客はいない。




  「桃子、お帰り。 頼んでたものは見つかったかい?」

 
 店に入ってすぐに桃子さんに声を掛けたのは、恭也をそのまま大きくしたような黒髪の男性。
 ……まさかこの人、高町の父親ってことはないよな。




  「ただいま、貴方。 ちゃんとあったわよ。
  後、なのはがお友達を連れてきたの」



  「ほぉ、そうか!! 
  こんにちは、僕はなのはの父親の士郎だよ。
  みんな、これからもなのはと仲良くしてやってほしいな」




 以前高町の父親に抱いていたロリコン疑惑を取り消す。
 …まさか夫婦揃ってこんなに若いとは。
 


 高町の母親といい、父親といい、この人たちなんでこんなに若く見えるんだ!?
 まさか若い頃に変な薬でも飲んで、永遠の若さでも手に入れたんじゃないだろうな。




  「「ただいまぁ」」




 俺が高町夫婦の若さに驚愕していると、後ろから男女の声がする。
 ……うん、間違いないね。




  「お帰り恭也、美由紀。 
  今なのはが友達を連れてきてね―――」




 俺の予想通り店内に入ってきたのは恭也と美由紀。
 


 周りはお互いに自己紹介を始め、いつの間にかまた無反応でいる俺に視線が集中する。
 …っし!今度こそいくぞ!!
 1、2の―――




  「ほらみんな、ユウ君よ。覚えてるでしょ?」




 桃子さぁぁぁん!!!今度はあんたかよ!




  「え……ユウ君? ユウ君!? 
  うわぁ、久しぶりだね。 私だよ、覚えてる?」



  「おう、久しぶり。 元気にしてたか、美由紀」




 美由紀は俺を見ると眼を輝かせた。
 どんだけ会いたかったんだよ。



 恭也の方を見ると、黙ってこちらに視線を向けていた。




  「……久しぶりだな、恭也」

  「……前から聞こうと思ってたんだが、母さんにはさん付けで、
  どうして俺や美由紀は呼び捨てなんだ?」




 こちらが仏教面であいさつをすると、
 恭也も同じように仏教面で俺がタメ口を使う理由を聞いてくる。
 なんでタメ口なのか…か。
 そりゃ―――




  「なんかお前らのこと年上ってゆう風に思えねんだよな。
  タメ口、やめた方がいいか?」



  「いや、俺もお前のことは年下には感じない。
  さん付で言われても、なんだかバカにしてる風に聞こえるからこのままで良いよ。
  それと、久しぶりだな、ユウ」




 そう言って笑みを浮かべる恭也。
 俺もニヤリと笑い返す。



 周りは俺たちについていけていないのか茫然としている。
 しかし一人だけ例外が―――




  「君がユウ君か、初めまして。 それと……――――」




 士郎さんはこちらに向けて笑みを浮かべた後、いきなり頭を下げた。




  「――――ありがとう。 
  君のおかげで家族がバラバラにならずにすんだ。
  正直、感謝してもしきれないよ。」



  「よしてくれ、俺は大したことはしてねぇよ。
  偶々気付いて、偶々言った言葉が的を射てただけだ」



  「それでもだよ、本当にありがとう」




 大の大人に感謝されるのって、なんか照れ臭いな。
 でもホント、良かったよ…



 店内の空気が和んでいく。
 さてと、なんか食い物でも食べるかな―――




  「スカートめくる様な奴が感謝されるって、あんた一体なにしたの?」



  「大したことなんてしてねぇよ。 
  それとまだ根に持ってんのか?
  何度も言ってるだろ、目瞑ってたから見てないって」




 バニングスが昼休みことをまだ追求してくる。
  


 高町家の面々の反応は呆れたり苦笑したりと様々。
 小学生がやったスカートめくりだ。
 それに俺が言ってることを信じてるのか特になにも言わない。
 しかし―――




  「本当でしょうね? ほら、なのはもなんか言いなさいよ。
  あんたも被害者でしょ!」


  


   ピシッ





 バニングスの発言に、空気が凍り付く。



 言われた本人である高町はその時のことを思い出したのか、
 顔を真っ赤に俯いている。
 月村はまたかと呆れ、桃子さんと美由紀は頬に手を当ててニコニコしている。



 そして、士郎さんと恭也は―――




  「「……ユウ(君)」」
  



 さっきまでの笑顔が嘘のように、ありったけの怒気を込めて、
 俺に射殺すような視線を向けてくる。
 さっきまでの和やかの空気はどこいった!?



 ってかみんないつの間にか端の方に避難してるし!?
 桃子さんに美由紀!?
 あんたら笑ってないでこいつらをどうにか―――




  「その話」



  「じっくり聞かせもらおうか」




 徐々に俺との距離を詰めてくる士郎さんと恭也。



 こ、こうなったら―――




  「戦略的撤退っ!」



  「「逃がすかぁ!!」」




 素早く出口をくぐり抜け、全力疾走。
 俺は持てる力を全て振り絞り、翠屋からの逃亡を図る。



 しかし五分後―――



 奮闘もむなしく、二人に捕まった俺は道場へと連行。
 そのまま三時間、地獄のような特訓を受けるのだった。









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