ザザーン ザザーン
と静かに波が揺れる。
そこにいた1人の剣士は
ただ小舟で俗世間を見渡していた。
灰色の世界・・・
薄暗い世界・・・
ちっぽけな世界・・・
どれも自分が関わるには幼い世界だった。
「・・・っ・・けて!」
ふとか弱き声がした方へ目をやると、
ザブザブと波をかきわけ、必死に助けを乞う、
小さき人の姿。
(・・・?人か?)
めんどくさいのでその場を通り過ぎようとするが、
自分が今「暇」だったことに気づく。
女の左腕をぐいっと引きあげ、
一睨みする。
そのまま小舟にザバンと拾い上げると、
ゲホゲホと咳をこんだ。
女・・・というより、まだ少女に近かった。
しばらく咳き込んだ後、少女は自分の服が水で濡れ、
体が冷えていることに気づき、自らの手で体を覆った。
「・・・あ、ありがとうございます!」
「・・・・」
鷹は黙ったまま、どこか遠くを見つめる。
「私はティア、って言うんです。
あの・・・お名前は?」
「ミホーク。」
「ミホークさん、どうもありがとうございました。」
「・・・。」
「どこへ行こうと思った?
こんな所でお前のような女が一人で溺れているなんぞ、常ではない。」
ミホークは遠くを見つめたままだ。
ティアは小舟の後ろのほうに移動し、少しの段差に腰かけた。
「私、エクソシストなんです。
それで、
この十字架をシッケアールのとある方に届けるように言われました。
それで、その・・・。」
「迷ったというわけか。
ここはそのシッケアールとは反対方向だ。」
ミホークは「ハーッ」と深いため息をついた。
「はい、お恥ずかしながら。」
「まぁ、よい。
どうせ帰るつもりだった。」
「帰る?」
ティアはその言葉の意味が分からず、小首をかしげた。
「頼んだのは私だ。」
ミホークはティアの方へ目をやると、
そう言った。
「えっ?でも、ミホークさんはミホークさんでも、「七武海」のミホーク さんですよ?」
「・・・私だ。」
また遠くを見る鷹の目。
「ええっ!?もっと自信過剰な人なんだと思ってました。
だってあの七武海に所属しているんですもの。
威張ってばかりいる人なのか・・・と。」
ギロリ
と少女を睨みつける鷹の目。
「ごめんなさい。」
その目が怖くて、ティアは条件反射で謝ってしまう。
しばらく沈黙がながれた。
「あの。」
最初に沈黙を破ったのは、少女ティア。
「乗せていっていただけますか?」