第91話〜誰が為の戦い、雌雄決す〜
昴「七星閃氣。・・武曲、解放・・」
昴の体が黄金色の光に包まれた。
刃「(七星閃氣? ・・・っ!? まさか!?)」
昴「ふっ!」
ドォン!!!
昴が村雨を一振りする。すると、傍にそびえ立つ大岩が砕けた。
刃「くくくっ、また楽しくなってきたねぇ!」
刃が正面から昴に突っ込み、斬撃を浴びせる。
昴「はぁ!」
ガキィィーーン!!!
刃「ぐぅっ!」
昴が刃の一撃を振り払う。すると刃はその一撃で後方に大きく弾かれた。
刃「!?」
数メートル飛ばされた所で止まった。
刃「(さっきまでとは桁違いだ・・)」
刃は昴の変化に驚愕する。
昴「七星閃氣の真髄はここからだ」
昴は構え・・。
ドン!!!
地を蹴り、刃へと飛びかかる。
ギィン!!!
刃「ぐおっ!」
刃は咄嗟に防いだものの、再び弾かれた。
昴「まだ終わりじゃないぞ・・」
ガキィン! ギィン! ガキィン! ギィン・・!
昴は連撃を刃に見舞う。刃はそれを何とか防いでいく。
刃「ちぃっ!」
刃は昴の斬撃を避け、昴に一撃を振るった。
パシン・・。
刃「っ!?」
昴は刃の斬撃を人差し指と中指と親指で掴む。
昴「軽いな・・」
刃「ちっ! ならば・・!」
刃は距離を取ると、詠唱を始める。
刃「獄炎!」
ゴォォォォーーッ!!!
突如、昴の立つ場所から黒い炎が現れる。
刃「地獄の業火で焼かれろ!」
昴は黒い炎に包まれた。
昴「その程度で業火で俺を滅せれると思うなぁ!」
ボン!!!
昴の気合一閃で黒い炎が吹き飛んだ。
刃「なっ!? 気合だけで獄炎を・・」
昴「次は俺の番だ」
ドン!!!
昴が地を蹴った。
ザシュ!!!
刃「ぐっ!」
昴の刀が刃を捉えた。
昴「まだまだ!」
ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ザシュ! ・・・。
刃「ぐっ・・ぐぐっ・・!」
昴は刃の前後左右から斬撃を加えていき、刃の体はどんどん傷を増やしていく。
昴「はぁ!」
ザシュ!!!
刃「がぁっ!」
昴は村雨を振り下ろし、刃の胸を斬り裂いた。
刃「くそっ!」
刃の体が淡い光に包まれ、傷が塞がっていく。
昴「大した治癒術だ。だが、お前の治癒術は于吉程万能ではないのだろう? 首を飛ばすか、胴を真っ二つにすれば、終わりだ」
刃「・・・」
昴「終わりだ、刃・・」
昴は村雨を構えた。
刃「くくくっ・・」
昴「?」
刃「あっはっはっはっ!」
刃は額に手を当て、天を仰ぎながら大笑いを始めた。
刃「これだよ! これこそが俺の求めていたものだ! 殺るか殺られるか! このギリギリの命のやり取りは堪らない!」
昴「・・・」
刃「七星閃氣。確か、氣功闘法の終着点とも言える奥義。人の身で、神と戦う為に編み出したと言われる奥義だったかな」
昴「起源までは知らないがな」
刃「俺は如何なる剣術、魔術も真似る事は出来るが、そればかりは真似出来ないな。それを極めた君には敬意を評するよ。だけど、今の今までそれを使わなかったという事は、その技には制限があるのだろう? 例えば、長時間使用する事が出来ないとか・・」
昴「・・だから何だ? なら時間が来るまで逃げ回ってみるか?」
刃「逃げる? そんなもったいない事はしないよ。ようやく待ち望んだものが目の前にあるというのに・・」
昴「・・・」
刃「時間制限なんて下らない。ならばその時間が来るまで君との戦いを楽しみ、時間内に君を倒そう」
昴「出来ると思っているのか?」
刃「くくくっ、心配ご無用。1つ教えてあげるよ。氣が身体強化に使えるように。魔力も身体強化に使う事が出来るんだよ。氣と魔力。両方を身体強化に回せば、まだまだ力は上がる。このように、ね!」
ゴォォ!!!
昴「っ!?」
刃の体が激しい光に包まれ、それと同時に昴に激しい衝撃が襲った。
刃「どう? 凄いでしょう? ただ、これをすると他の魔術は一切使えなくなるし、氣と魔力は相反する力だから、同時に使うと、ぐっ! ・・体への負担が大きすぎるのが難点だけど、それは君も一緒。これで条件は一緒だ。さあ、共に闘争を楽しもうよ?」
昴「お前はどこまで・・。良いだろう。今度こそ決着を付ける。行くぞ! 北郷一刀ぉぉぉぉーーっ!!!」
刃「その名前で呼ぶんじゃねぇ! 御剣昴ぅぅぅーーっ!!!」
ドン!!!
両者が同時に動き、激突した。
ガキィィーーン!!!
双方の刀がぶつかる。
昴「ぐぐぐぐっ・・!」
刃「ぎぎぎぎっ・・!」
両者鍔迫り合いになり、スッ・・と、僅かに距離が出来ると・・。
ガキィン! ギィン! ガキィン! ガキィン! ギィン! ギィン!・・。
超高速での斬り合いが繰り広げられる。
昴・刃「おぉぉぉぉーーっ!!!」
ガキィン! ギィン! ドォン! ギィン! ザシュ! ガキィン! ドォン!
両者の刀がぶつかり、体を捉え、地を爆ぜ、高速で動き回り、激しく戦い続ける。
ザシュ!!!
昴「ぐっ!」
刃の刀が昴の肩を捉える。
昴「おぉぉぉぉーーっ!」
ザシュ!!!
刃「がぁっ!」
昴は刀を掴み上げ、刃の胸を斬り裂く。
ザシュ!!! ブシュ!!! ザシュ!!!
遂には互いの刀が互いの体を捉え始め、血が激しく吹き出し始める。
互いに一歩も引かない。
斬り、斬られの応酬。
強大な力と力がぶつかり合った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※
愛「ご主人様・・」
愛紗が離れた位置で桃香の亡骸を抱きかかえながら昴と刃の激闘を見守っている。
星「別次元の戦いだな・・」
星が2人の戦いを見て驚愕する。
鈴「ヒック・・ヒック・・」
鈴々は桃香を抱きしめて、嗚咽を漏らしている。
紫「・・お互い速すぎて私の目では追いきれないわ」
翠「ご主人様・・勝つよな?」
愛「当然だ。必ず、ご主人様が勝つ」
星「我らに出来るのはもはや見守る事だけだ。信じよう。主の勝利を・・」
5人が頷き、引き続き2人の激闘を見守り始めた。
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※※※※
ガキィン!!!
昴「ぐぅっ! おぉぉぉぉーーっ!!!」
ギィン!!!
刃「ぐっ! はぁぁぁーーっ!!!」
互いが限界を超えた激闘を始めてから数分。両者の勢いに陰りが見え始めた。
ガキィィーーン!!!
両者の刀がぶつかり、2人は後ろに飛び、距離を取った。
刃「ハァ・・ハァ・・、お互い・・、限界が近付いて、来たようだね・・」
昴「ハァ・・、ハァ・・」
両者の体は傷だらけ。血も至るところから溢れだし、傍目から見れば立っているのも奇跡の状態だ。
刃「双方・・時間切れでは味気無い。決着は・・次の一撃でつけないか?」
刃が上段に刀を構えた。
昴「・・良いだろう」
昴は刀を鞘に納め、抜刀術の構えをした。
お互いがお互いの間合いに入り、そこで足を止める。両者が刀に己の全てを込める。
1分・・。
2分・・。
お互いが射程内で動かない。
風に流された木の葉が両者の間に流れ込み・・。
バチン!!!
木の葉が粉々に砕けた。その直後・・。
昴・刃「おぉぉぉぉーーっ!!!」
ガキィィーーン!!!
昴が鞘から刀を抜き、刃が刀を振り下ろし、激突する。その直後、その周囲に衝撃が走った。
ギリギリギリギリ・・。
両者の全力の一撃がぶつかり合い、鍔迫り合いが始まる。
昴・刃「ぐっぐっぐっ・・!」
両者が歯を食い縛りながら力を込める。
互いの力は互角。刀は1ミリも動かず、ぶつかり合っている。しかし、しばし鍔迫り合っていると、その均衡が崩れ始める。
ピシッ・・。
刃「っ!?」
突如、刃の村雨に亀裂が入る。
昴「刃。お前は強い。恐らくその力は全ての外史、守り手の英傑の頂点だろう。だが、お前の刀は軽い」
ピシッ・・。
昴「お前の武は所詮、己の欲求を満たす為の武。独りよがりの武だ」
ピシッ・・。
昴「俺の刀には、俺を信じてくれる者。平和の為に戦っている者。この国に住む者。そして、いつか、乱世が終わる事を信じ、散っていた者達の想いと願いが込もっている」
ピシッ・・。
昴「俺は1人じゃない。1人で戦っている訳でも、1人で戦ってきた訳でもない。俺はいつだって皆と共に戦ってきた」
ピシッ・・。
昴「お前の力が如何に強大でも、俺には勝てない」
ピシッ・・。
刃「そんな・・ものが・・!」
昴「お前も知っているはずだ! 大切なものを守る為に戦ってきたお前なら分かるはずだ! 俺は負けない! 俺の為だけじゃない! 俺を信じてくれる者の為に! 平和を願う者達の為に!」
『『『『『ご主人様(お兄ちゃん)(主)(昴)(昴様)(昴殿)(昴さん)(お館様)(お兄さん)(昴さん)(師匠)(隊長)(旦那)(センセ)(アニキ)(にぃ様)(にぃ)!!!』』』』』
桃『ご主人様!』
その時、昴の背中から、昴を想う者の声が響いた。その直後、昴の体から紅の光が溢れだし、昴を包みだした。
昴「七星閃氣・・。最終星・・。破軍・・。解放ぉぉぉぉーーっ!!!」
バキィィィーーン!!!
刃の村雨が折れ、刃が宙に舞う。昴が村雨を地に刺し、杖代わりにして体を支える。
昴「想いの力は無限大。これが、俺の・・、俺達の力だ」
刃が地に落下する。
雌雄は・・。
決した・・。