小説『IS 転生を繰り返す銀の光』
作者:ルージュ()

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第8話 誘拐事件(後) 終結












周囲に窓が存在しない、わずかな蛍光灯の光のみに照らされた薄暗い部屋の中央に、
椅子に縛り付けられる形で、座らされたユウの姿があった。

「……(ふぅ、とりあえず誘拐犯のアジトと思われる場所で縛り付けられてるわけだが…気絶したフリも意外と疲れたな。…見張りはいないが情報集めないといけないし、つか足痛いわ)」

なお、余裕そうに見えるが(実際余裕だが)彼女の左足の骨は前回から折れたままである。

「(さて、ここから先はどうなるかね?切嗣とシアが俺を見つけるのが早いか、依頼したってやつがくるのが早いか。…まあ、魔術的な移動された所為で、ここが元いたところからどれだけ離れてるかも分からんから、後者の方が早いとは思うが……ん?人の気配か?)」

しばらく、ユウが考え込んでいると、扉の向こうになにやら人の気配を感じたのでそちらの方に意識を集中させる。
そして、扉が重く響く音を鳴らして開けられると、
そこから入って来たのは、ユウをここに連れてきた3人の誰でもない……
白い白衣を着た、パッと見て20代前半といった感じのいかにも研究者といった雰囲気を漂わせる男であった。

「なんだ目を覚ましていたのか、まあ、流石に縄を解いて脱走するまではできなかったようだがな、カカカッ」

入ってきた男はユウの姿を確認すると、
その様子を見て不気味に笑うと、
ユウが縛られている椅子の目の前で立ち止まる。

「まさか、ここまで簡単にお前を連れてこれるとは思わなかったぜ。まあ、もう1人のターゲットのシャルの方は捕まえられなかったみたいだが、そっちは後々どうとでもなるからな」

そう語る男の目は、濁ったような感じになっており、
見る人が見たら引くことは間違いないだろう。
そんな男の様子を下からのぞきこむ形でみていたユウは、
そんなことを気にする様子もなく男に対して声をかける。

「一体あなたの目的はなんですか!誘拐を依頼してまで私を攫ったり、シャルロットまで一緒に狙ったり!お金が目的なんですか!?」

ユウが男に対してそのように言葉をかけると、
先ほどまで笑っていた顔が一瞬で不機嫌な感じになるが、
すぐに元の気持ち悪い笑みを浮かべる。

「その態度むかつくな、お前今の状況理解してるわけ?お前の命は俺が握ってるんだぜ?でもまあ、死ぬ前に質問に答えてやるよ。今の俺は結構機嫌が良いからな」

そういうと男はユウの髪を掴み彼女の顔を自分の方に近づけて話し始める。

「ッ!」

ユウは髪をつかまれ引っ張られた痛みで顔を若干歪めてしまう。

「俺の…いや俺達転生者の目的は…お前を殺すことだ」

「…(まあ、ほぼ予想通りって感じだな)」

「俺達転生者は全員元の世界で事故とかで突然死んだわけだが、神と名乗るやつが俺達をこの世界に条件付で転生させたんだよ」

「…その条件が私の死…ですか」

「そうだ、しかも転生させた髪のやつがせこくてな、お前を殺したやつかその時協力したやつだけに報酬として願いを叶えてやると言ってきやがったんだよ」

「……その割にこの誘拐事件に絡んでるのはあなた1人だけに思えますが?」

「よく分かったな。だが俺は1人で目的を達成した。他のやつはISが登場するまで待ってからお前を殺しすとか言ってたが無駄に終ったってわけだ」

「ならあなたもそのISとやらが出てくるまで待てばよかったのでは?こんな危険を冒してまでやるとは普通とは思えませんが」

ユウがそのように言うと、
男は途端に顔を歪めてユウの髪をさらに強く引っ張る。

「残念ながら俺は男のまま転生したからISには乗れないんでね。他のやつは女の身体になってISに乗れるっていうのに神のやつがサポート要因として一部のやつを男のままISに乗れない状態のまま転生させやがったんだよ。かわりにいくつかの特殊な力を付けてくれたが…割にあわねえ」

そこで一旦言葉を切り男は一息ついてからまた言葉を紡ぐ。

「だが今のIS自体が登場していない時代なら科学者っていう立場でもてめえを殺すチャンスが授かった力のおかげで回ってきたってわけだ」

「なら何故シャルロットまで狙ったんですか?あの子は今回の件に関係ないでしょう?」

「あー?そんなの簡単だ他のやつはてめえを殺した後報酬で元の世界に戻ろうと考えてるらしいが、俺はこの世界に残る気満々だからな。デュノア社の社長の下について原作どおりに行くくらいなら、俺様が先に引き取って有効に利用してやろうって算段よ」

「……(とりあえずこいつが救いようがないことは分かった。てか他の転生者に関してもすでに元の世界で死んでるんなら戻ったところで意味が無いと思うが…)」

男がそういい笑い、ユウが敵のことを考えていると…


突然建物全体がゆれるほどの爆発音が響き渡った。
その音に男は一瞬疑問を浮かべたが、すぐに原因に思い当たったのか懐から銃を取り出しユウに向けて構える。

「どうやらお前の父親が助けに来たみたいだな。予想よりは早いが上にはそれなりに腕のあるやつがいるからてめえを殺す分の時間くらいは稼げるだろうよ」

「……(さてさて準備はこっちも整ったが切嗣がくるのが確かに予想より早いな………ああ、そういえばシアがいたな)」

「じゃあな。運が無かったと思ってあきらめな」

そういいながら男の持っている銃から放たれた弾丸は……ユウの額の中心に当たり血を噴出しながら椅子ごと後ろに倒れこむ。

「さて…これで目的は達したわけだが…やつがここに来る前にとっとと逃げるか」

そう言って男は踵を返し入ってきた扉とは別な方に向かって歩いていく





しかし、そんな男の背後で突然『ブチッ』っという何かが切れる音が聞こえて男は慌てて振り返る。
するとそこにいたのは額から血を流しながらも、どうやってか縄を切り左足に何かを纏って立っているユウであった。
その姿に男も流石に慌てた様子で声を上げる。

「な、なんで頭を打ち抜いたのに生きてやがる!?」

「あー?そんなの額にあたる直前に弾いたに決まってるだろ。まあ、若干遅れて少しかすったがな」

そう言って近付きながらユウは両手両脚背中と全身の所々に装甲を纏っていく
それがなんなのかすぐに分かった男はさらに慌てて銃を適当に乱射するが、
それは全てユウに当たる前に何かに阻まれて弾かれる。

「な、ななな、なんでそれが今ここにあるんだ!?ふざけん…」

男が何かをいう前に一瞬で距離を詰めたユウが両手に出現させた爪のようなもので切り裂く。

「ぎゃあああああ!?ま、待て!待ってくれ!?俺が知っていることならなんでもしゃべるから殺さないでくれ!」

命乞いをする男の声には先ほどまでとは、うって変わって恐怖に染められていた。
そんな男に対してユウはいい感じの笑顔を浮かべると…

「人を殺そうとしておいてそれは、都合がよすぎるんじゃないか?まあ、あれだ……“運が無かったと思ってあきらめな”」

「や、やめr」

男の懇願の声を無視して振り下ろされた右腕は男の命をあっさりと奪う

「さて、結局たいした情報は得られなかったな…まあ、元々大して期待してなかったが…後はっと」

そこまで言ってユウは壁際まで近づくと、壁に向けて自身の腕を振りかざし大きな穴を開ける。
そして、そのまま椅子が倒れているところまで近づくと纏っている装甲を解除して椅子の上に倒れこむ。

「これで後は切嗣が来る前にあいつを表に出しておわりっと…まあ、気絶してるが別にいいだろ…つか血が足りねえ」

そういって目を閉じて意識を闇に沈めていくユウ。


それからしばらくして慌てて入ってきた切嗣によってユウは保護され、そのまますぐに近くの病院に運ばれるのであった。


……男を殺した者が誰かはわからないまま。





後書き

今回で誘拐事件は終了。
とりあえず今回一応敵側の目的が判明…といってもあくまで転生者の目的であって敵の神の目的ではありませんが。
簡単に転生者の目的を言うと神に協力してユウを殺して願いをを叶える事。
ただしそのためには人数が限定されている。
願いはそれぞれ違うが大抵は元の世界に戻ること。

あと今回ユウが途中で纏ったやつは…まあ、あれです正式に登場するのはもうちょっと後だけど。

残りは後日談的なもの書いて、もう1つ閑話書く予定。
それが終れば話がもう少し進む予定。

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