小説『IS 転生を繰り返す銀の光』
作者:ルージュ()

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プロローグ『闇』

剣と魔法が栄え人と魔物が長く対立している世界

そんな世界に存在する人間側でも数少ないほどしか存在しない巨大な城
その城の地下深く……そこに1人の少女がいた

「…………」

その彼女は元々は透き通るほど綺麗な白い肌に腰まで届く色艶やかな美しい黒髪を持っていた。
しかし、今ではそんなことはまるで感じさせないほどに汚れ右腕を鎖によって繋がれ吊るされていた。

そんな彼女は元々、極普通の村に生まれ特に不自由することなく村の人たちと普通に暮らしていた。

……だが、そんな暮らしも彼女の暮らしていた村を、たった1人の吸血鬼が襲ったことから崩れ去ってしまう

村を襲った吸血鬼はそこに住まう者たちに対し殺戮の限りを尽く、殺した者の血を吸って力を付けていった。そんな中その村で暮らしていた彼女のみを殺すことなく生かし、生かした彼女の血を吸い自身と同じ吸血鬼にしたあと廃墟となった村に彼女をそのまま残しどこかへ去っていった。

それからしばらくして彼女は事態を察知した国の騎士団に保護されるのだが…………これが彼女にとって悲劇の始まりだった。

保護された後、精密検査という名目で城の医師だけでなく研究者達の下に連れて行かれたのだが、そこで彼女を待っていたものは地獄と呼んでも差し支えないほどの行為だった。

元々、彼女が吸血鬼にされたことをどういった経緯でか知っていた城の研究者たちが様々な実験を彼女に対して行っていった。

例えば、吸血鬼の再生力を図るため両手両足を切り落として再生させてみたり
例えば、逆に再生させないように左腕を切り落としそこに回復魔法を掛けてすでに腕が回復していると錯覚させ再生しないようにしたり
延々と水の中に沈め窒息死を繰り返したり、延々と火あぶりにしてどこまで再生力が追いつくか試してみたり
etc

普通の人ならば絶望して心が壊れてしまうほどの行いばかりが行われた。
しかも、彼女自身吸血鬼としての適正が合致したためかその能力は今までに確認された物の中でも最高の物だった。
その能力は確認されただけで、他の吸血鬼とは比べ物にならない回復力・本来吸血鬼に存在する弱点の消滅・吸血衝動の消滅など恐ろしい物であった。

この研究者達の元々の目的は吸血鬼という種族を人の手で作り出しそれを完全に支配して魔物たちを滅ぼそうという物であった。
そういった意味では純粋な吸血鬼ではなくただの人から(元々彼女も普通の人ではないのだが)眷属ではなく純粋な吸血鬼にされた彼女の存在は貴重な物だった。
しかし、いくら研究しても彼女のスペックを完全に再現することはできず、吸血鬼となってもすぐに肉体が滅んだり、暴走してしまってこちらの制御を無視したりと散々な結果であった。
(それでも無差別破壊兵器という意味では成功だったのかもしれない)
その結果によって彼女を使った研究は中断され、彼女を城の地下深くに幽閉という形で封じ込めているのである(なお、殺さないのではなく殺せないため幽閉している)。

そのように彼女が幽閉されてすでに数ヶ月、研究は終了したとはいえ彼女が受けた心の傷は消えることなく、その心は黒くそして歪に歪んでいた。


「……(もう嫌だ。何度死んでも生き返って、同じことをいつまでも何回も何回も繰り返してまた死んでいく……ここでもそう……なんで私ばっかり!何で私ばっかり!他の〇はここまで酷い目にあっていないのに!……)」

絶望し焦燥しきった心で彼女は考える。
何度も繰り返されるこの絶望を終らせるために…。

「……(ああ、簡単じゃないか。今の『私』でこの連鎖を終わらせることが出来ないなら他の『〇』から奪ってやればいい)」

ある意味最悪の考えにいたった直後、彼女が幽閉されている牢の扉が開きそこから1人の男性が入ってくる
その人物は彼女に行われていた非人道的な実験に常日頃から反対していた変わり者の研究者であった。

そんな、彼は彼女に近付き、右腕につながれていた鎖をはずそうとする

「……な…んで…?」

「…………」

彼は答えることなく鎖をはずしていく

そしてしばらくして鎖が全て外れるとそのまま彼女を背中に背負い地下から出ようと歩き出す。

彼の目的は彼女をここから出すことである。
といっても、彼女を心配してとかそのような考えではなく、現在この国には今まで見たこともないほどの数の魔物が近づいてきていて彼女を囮に使用とする上からの命令だが……

ただしこの囮作戦には問題が2つ存在する。

1つめの問題それは……彼女は長く幽閉されていたため筋力が衰えてしまっていた。
それに加え彼女の両足の腱は切られてしまっているから自分では動けない。
なお、傷が回復しないのは彼女に現在魔力が残っていないからである。

吸血鬼の長所として膨大な魔力を得られるのと人が傷を回復するよりもはるかに少ない魔力で自身の傷を回復できるところにある(切られた腕をつなげるのに人なら10魔力を使うとしたら吸血鬼は0.1程度)。

魔力を回復させるには空気中の魔素を取り込む方法と睡眠等によって自然に回復させるなどの方法があるが、彼女が幽閉されていた場所は特別で魔素が入り込まない場所な上、睡眠は取れていても食事をさせてもらえなかったため魔力を回復させることができないのであった。


そして…2つ目の問題…

「よし!急ぐ…ぞ…?」

「……」

カプッ ジュルジュル

「な…なにを!?」

それはタイミングが悪かったということ
せめてもう少しタイミングが早ければ彼女の心は闇に捕われることなく脱出はこのまま成功していただろう。
しかし彼女は決めてしまった。

自らの目的を決行するためにまずはこの世界を滅ぼし自らの力とすることを…

「………」

ドサッ

「ああ、あなたの血はそこそこの味だったわよ。それにあなたは運が良いわ。これからあなたは、私と血と肉も一緒になるのだから…」

なお、吸血鬼に限らず血を吸うことを主とする種族は血を吸うことで魔力を回復することができる。

そして、男性の血を吸ったことにより魔力が戻った彼女が最初にしたことは……自らの右腕で左肩の付け根・両足の踝より下を切り落とすことだった。

普通であれば『何をしているんだ』ということになるが今の彼女は吸血鬼のため、次の瞬間には切られた部分からそれぞれの部位が完全に再生される

「ふぅ…久しぶりの五体満足ね。さぁ!腐った世界よ!私の目的のために滅んでもらうわよ!」

果たして狂っているのは世界か彼女か…それとも両方なのか…

このとき彼女の後ろ髪の先がわずかに白く輝いていたことに気がつくものは誰もいなかった。





その後、この世界はわずか半年と立たずに人も魔物も動植物…果ては大地まで死に絶え消滅することとなる。

世界が消滅したあとそこにいた彼女も一緒に消滅することになったのだが……。


彼女は世界を渡る。

自身の目的をかなえるために。

この呪われた連鎖を止めるために〇〇を殺し、その元凶となった者を完全に滅ぼすために……

-2-
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