再び君に逢えるから。
†
今日も、平凡な日常が始まる、そう思っていた。それ以外に考えられる未来はなかった。いつでも予想外のことは突然に訪れる。
強い衝撃を感じた。
朝、通学の電車の中、視界がめまぐるしく変化した。度重なる衝撃。その時、思考完全に混乱していて、状況を把握することなんて当然無理だった。
それが電車がある高架で脱線し下の大通りにまで落ちているなんて思いもしなかった。ありえない事故は、それでも起きてしまう。
気づけば色々なものの間に挟まっていた。身動きが取れない。首から下の感覚がない。意識は薄々としている。頭がひんやりと冷たい。血が流れている。
自分の血だけではないようだった。
「かず……くん…………」
か細い、しかし俺のことを呼ぶ声が聞こえた。意識が急に鮮明なものになる。
そこで気づく。
混乱していたせいとはいえ大変なことを失念していた。幼馴染の来栖希がいることに。いつも一緒に登校していた――今日も一緒に登校していた彼女がいることに。
身体は動かない。視界に入ってくるのは瓦礫ばかりだ。それでも彼女のことを探した。
昔彼女と約束した。
――絶対にお前を一人にしない。いつでも守ってやる――
幼い頃の馬鹿らしい……しかし純粋な約束。今でもはっきりと覚えている。
「希!」
叫ぶ。――返事はない。
「希――――!」
また叫ぶ。――返事はない。
「――――――!」
三度目はろくに声が出なかった。
口の中に血の味が広がる。目に赤いものが流れ込んでくる。
意識が遠のいていく。
セカイが遠のいていく。
畜…………生……!!
耳に入った最後の音は悲鳴、嗚咽、サイレン。
――暗転。