小説『テイルズ オブ エクシリア2 〜BAD END ver2〜』
作者:じーく()

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テイルズ オブ エクシリア2 〜BAD END ver2 〜




























仲間達に刃を向けるルドガー。

ユリウスを……

自分の兄を家族を殺す事などできない……。

全てを捨ててでも、

ユリウスを選んだのだ。

たとえ、自分の手が血塗れになっても。

その血が……嘗ての仲間達のものであっても!





「お…落ち着いて!ルドガー!話を!」




ジュードは、必死に説得をしようとするが、ルドガーは止まる事は無い。




「ルドガーっ!なにをしているのかわかっているの!」




レイアもジュードを援護しながらも、叫ぶ。

それでも……止まらない


そこに割って入るように、

ミラの斬撃・精霊術が飛ぶ!





「もう 遅い!ルドガーは本気だ!」





ミラはそう判断する。

今まで、数々の世界を壊しここまで来た。

カナンの地を出現させるまでに至った強い人間。

そんな男がそう≪選択≫したのだ。

選択した以上……

言葉などでは止まらない。





「事、此処に極まっては是非も無し!」





ローエンも、ルドガーに刃を向ける覚悟を決めた。

嘗ての仲間だが……

これが初めてではない。

ナハティアガルの時も同じだったんだから。





「くっ……ルドガーーー!!!」





ジュードは……それでも叫ぶ。

だが、ルドガー止まらない。









そして、嘗ての仲間に骸殻の力を容赦なく使う。







その力は、大精霊にも匹敵する力を秘めている。


当然だ。


その力を与えたのは時空を総べる大精霊クロノス。

……ルドガーのその力は人間を遥かに凌駕しているのだ。






皆は圧倒されるが。





「なんで……なんでこうなっちゃうんですかっ!」





エリーゼの精霊術がルドガーを捕らえた!


「くっ……!」


辛うじて、防ぐ事が出来たが、その次に!





“ガァァン!!!”





銃声が木霊する。





「くそっ!お前もオレと同じ袋小路になっちまったのか!」





アルヴィンが、正確な射撃でルドガーを捕らえた。

形勢は徐々にではあるが、傾きつつある。

ルドガーは体勢を立て直そうと、跳躍するが……。

空から不穏な気配をルドガーは感じていた。






「……そうまでして、」

「ッ!!」





頭上に感じたのは、空間を圧縮するような重力球。

それが振り落ちてきたのだ。




「……そうまでして、お兄さんを守りたいのね。」




ミュゼは構えながらそう呟く。

自身も姉である立場。

ルドガーの兄を救いたいと言う気持ちはわかる。

でも、彼の選んだ≪選択≫をそのままにさせるわけにはいかないのだ。





「ッア!!」





骸殻を身に纏い、ミュゼに襲い掛かるが。





“ガキィィィ!!!!!”





長剣によって阻まれる。






「最早、剣は引けんぞ!」





突きの構えでそう宣言するのはガイアスだ。

リーゼ・マクシアの王。

民を守るためにも、ここでカナンの地へ行かねばならない。

許しは請わない。

守るためなのだから。

だが、それはルドガーも同じ。






「うおおおおおあああああああああ!!!!」








兄を守るため。

世界を守るため。






個人か、世界か。




互いの信念のぶつかり合い。


それは嘗ての仲間だからだとか

最早関係ない。





≪選択≫をしたのだから。





他人からみれば愚かな選択だったのかもしれない。

だが……それでも。

最後の一遍でも悔いは無い。

選んだのだから。

選ばなければ変わりもしない。

伸ばした手の向こうに。

伸ばした手の光の向こうに。

……願っている未来があると信じているから。












終わりは……訪れた。











“ガジュッ………!”









誰の一撃だったのか。

それはわからない。

今の今までの、彼が積上げた歴戦の傷が開いたのかもしれない。

だが……地に伏しているのは……。






「ッ………」


“ドサッ………”


ルドガーだった。










「もう……やめろっ!オレの為なんかに……やめるんだ!ルドガー!」



兄であるユリウスは……

最早、立つ事さえ出来ぬ体だった。

だが……最愛の弟が倒れている。

なぜ?

……何よりも大切だった弟だ。

自分が……心を病み、荒れていたあの時、

料理をぶちまいても……自分の為に作ってくれているあの姿を見て、

ユリウスは変われた。

立ち直れた。

そんな弟が……。


「やめ……てくれ!」


二本の剣を……支えとし、

立ち上がった。


ルドガーも懸命に立ち上がろうとし、

構えるが……。


その前に、兄が……。






「オレの……命だけで十分だ。もう……弟に手は出さないでくれ……。」

ユリウスが……7人の前に立ち……懇願する。






「ッ………。」



ルドガーは動けない。

また……兄に頼ってしまうのか?

今まで、兄がいたから……

何でも出来た。

そう思っていた。

もう駄目だって、全ておしまいなんだってなってたあの時。

兄がいたから……そんなんでも、なんとかもう一度と思って進めた。

兄がいたから………。









「……わかった。」

ガイアスは剣を向けた。

「剣を向けられた以上、引けないのだが。……オレにもその気持ちくらいはわかる。お前達の気持ちはな……。」

そう言い……刃を構えた。





「………許しは請わない。」


「構わない。……弟を守れるのなら、もう尽きるこの命。意味のあることに使いたいんだ……。」






ガイアスの剣を穏やかな表情で見る。

先ほどの必死の形相は最早息を潜めていた。





「すまない………。」





ミラも……目を瞑る。

元は原初の三霊であるオリジン・マクスウェル・クロノスの三体が提示したものなのだから。







「ッ……」






ジュードも何もいえない。

ルドガーと歩んできたこれまでの道。

それを思うと、彼の望みを聞きたい。

だけど、時間も無い。

……どうすれば、良いのかわからない。

出来たのは、向かってくるルドガーを多勢により制しただけ。

無力な自分を呪いたい気分だった。






「申し訳ございません……。」






ローエンも、自分の経験がまるで通用しないこの事態に胸を痛めていた。

何の為に歳をとったのだ。

未来を担う若者を自分より先に逝かせてしまって……。







「うぅ……僕もどうすればいいのかわかんないよ……」

「ルドガー……仲良くなったばかりなのに……。なんで、なんでこんな……」






エリーゼとティポ。

彼女も幼いながら色々なものをかかえ、それでも前を向いて生きてきた。

様々な別れも経験して……自身の両親の事も知って。

それでも 前をむいて生きてこれた。

今回は……今回の事は……どうしても、心に残ってしまいそうで。






「クソ………。マジで無力だな、オレは。」







アルヴィンもそうだった。

ルドガーの暴走。

嘗ての自分自身にぶれて見えた。

自分は、今いる仲間達のおかげで乗り越える事ができた。

だが……ルドガーは?

……兄もいなくなって、どうやって乗り越えればいい?

仲間も、兄を奪った存在だ。

兄の為に全てを捨てようとしたルドガー。

かける言葉なんて……見つかるはずが無い。





「私……どうしたらいいの……?正しい事って何なの……?世界の為に、犠牲にするのって……本当に正しいの?……世界を守るから、今は死んでって言わなきゃいけないの……?」

「……彼が選択したように、私達も選ばなければいけないの。……それがどんなに苦渋な決断だったとしても……。」





涙を流すレイアの肩を掴むのはミュゼだ。 

わからない。

だから、涙を流すしか出来ない。

苦悩する事しかできない。

それで、何か変わるわけじゃないのに……。


ミュゼも、苦しむレイアを見て……

自分も同じ思いなのだと言う事。それを改めて実感していた。

悲しいのだから。

それほどまでに、ルドガーと言う人間に関わったのだから。






















ガイアスの剣は、ユリウスを見据えていた。

「……………。」

ユリウスは無言で……

目を瞑っていた。

全ては弟の為に。

ただ1人……弟の為に。







“ヒュンッ………”







剣を振るうときの空気が裂けるような音。

聞き覚えのある音。

それを聞いて、いよいよなのだと、

一瞬身を強張らせた。








“ザシュ………”







自分を貫く刃。

それを……落ち着いた気持ちで感じる事ができた。

これで 意味のある終わりを出来ると安堵すら感じていた。







「「「「「「「「!!!」」」」」」」」






だが……

驚愕の事実。

ルドガーが……

兄を庇うように、ガイアスの刃の前に背を向け……

そして、ユリウス諸共に刺さったのだ。







「あ……あ………っ」



ユリウスは言葉にならない。

いや……もう、言葉すら出ない。

もう……目すら開けれないほどにだった。

その時最後に見たのは……



ルドガーの……弟の微笑みだった。



最後まで……ずっと一緒。

そう言うかのような、笑みだった。









皆も……その事に言葉を失い。

ただ……立ち尽くしていた。

これで……エルを救えたとしても……

どう言えば良いのかわからない。

世界を守るために……兄弟を犠牲にした。

エルにとっては……

約束よりも大事な事があるといっていたエルにとっては……。



父を失い、そしてルドガーも失った結果となったのだ。



彼女に……合わせる顔などない……。



だが、

それでも……

今は前に進むしかない。
















カナンの地に向かって伸びるのは2本の道。


2人の魂の橋だ。


ビズリーがわたった時のそれを同じものだ。

皆は……何も言葉を発することなく。

魂の橋となった2人を想いながら……。

カナンの地へと向かっていったのだった。


















































世界は救えたのか?

審判は超えられたのか?

だが、審判を受ける資格があるのはクルスニクに一族だけ。

ルドガーがいない以上……

ビズリーだけとなってしまっている。

だから、彼の願いが叶ったのか?








誰にも、もうわからない。







ただ……。



この世界を包んでいるのは、人でも精霊でもない。




瘴気……。




それが世界中を覆っていたのだった。


世界は静かに……静かに沈んでいった。

















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