小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ラーズside〜〜

 遂に悪魔の実を食べ能力者になった。…なったのだが。この能力、使いこなすのに
 随分と苦労した。ちなみに尻尾はひたすら出っ放しだ。

 以前からの「生命帰還」で戦闘用の体型になろうとした所、全く変わらなかった。
 つまりこの尻尾の出ている状態が既に戦闘に最適なのだ。

「全く厄介な能力だ。何かもっと主人公っぽい能力が良かったよ。」

 歩きながら呟く。最初は役に立たないと誰もが(正直俺も)思っていた。身体能力の強化も感じられない。
 尻尾をモフモフして落ち着く位しか使い道がなかった。しかし、

「能力って色々応用効くんだな。」

 二年近く突き詰めて特訓していたら、幾つか使い方が出てきた。主には

1・「生命帰還」で尻尾を自在に動かせる。尻尾で「嵐脚」を飛ばせる。

2・尻尾の長さを変えれる。長さは今の所一メートル〜五メートル程まで。

3・尻尾を体に巻き付けて、攻撃の補助を行う。

 これが今の所メインだ。まず一つ目だがこれは出来る様になった時は笑った。
 「嵐脚」が九発同時に飛んで行き、目標の大木が一瞬で切り刻まれた。飛ばせる距離は
 まだ二十メートルが限界だが、訓練次第で伸びて行くだろう。

 ちなみに一度、「月歩」で空に浮かび海に向かって尻尾で「嵐脚」を乱れ撃ちしてたら
 凄く楽しかった。腕を組んで自由に尻尾を振り回すのが、ゲームのボスっぽい感じだったんだよ。
 適当な雑魚ならこれだけで殲滅出来るだろう。

 二つ目は、全方位から攻撃が来た時などに、体の周りに尻尾を展開させて防げる様にした。
 どうも俺の尻尾は覇気と相性が良い様で、ある程度硬くしたら大砲くらいなら無傷で防げる。

 そして三つ目だが、これが今後の戦いでメインになって行くだろう。
 両手両足に一本ずつ、胴体にクロスさせる様に二本尻尾を巻き付ける。
 例えばパンチを撃つ時に、巻き付けた尻尾で腕を加速させ威力とスピードを上げる。
 防御時は腕から少し離して、腕と尻尾のダブルで防ぐ感じ。
 
 慣れるまでかなり苦労したが、モノにしたら戦闘力が格段に上がった。
 最大のポイントは「尻尾を操る」事だが、小さい頃からの「生命帰還」の修行の賜物で
 使いこなせる様になった。

 あっ、この悪魔の実だが動物系”コンコンの実”幻獣種「白狐(びゃっこ)」だ。まさにまんまだった。
 
 おかげなのか、最近では周りから「白狐」のラーズ、なんて呼ばれてる。
 まぁ髪も白いし尾も真っ白だからな。遠くから見たら白い塊が戦ってる様にしか見えないだろう。

 

 今俺はある人の所に向かっている。一度その人と真剣に話をしてみたかったからだ。
 待ち合わせ場所は訓練所。やがて目的の場所に着くと、その人は待っていた。



 「お待たせしました、クザン大将。」


 〜〜クザンside〜〜


 ラーズの事は入隊した時から知っており、アイツの並外れた努力にはいつも感心していた。
 ラーズは本部の中将や俺達大将からも可愛がられており、俺も何度も組手の相手をした。
 あの年で覇気を使うとして、海軍内での評価は本人が考えてるよりも遥かに高かった。
 そんなラーズが俺に話があるという。
 一体何だろうね?

「お待たせしました、クザン大将。」

「あらら、いつ見ても面白いなその尻尾。」

「もう慣れましたよ。」

「そうかい。で、話ってのは何なの?」

「はい。とても真剣な話です。」

 ラーズの顔つきが変わった。こりゃよっぽど真面目な話なんだね。

「実は……海軍を辞めようかと思います。」

 …!?これは意外だった。そんな素振りは一度も見た事がなかったからだ。

「理由はあるのかい?」

「はい。…まずは真実から話さなければなりません。俺が入隊した理由は知ってますよね?」

「ガープさん達から大まかには聞いてるよ。」

 確か船旅の途中で海賊に襲われた。だったっけな。

「それなんですが、半分は事実ですが半分はウソです。」

「…それはどういう事だ?」

「俺は東の海のコノミ諸島、ココヤシ村の出身です。ある日村に海賊が攻めて来たんです。
 その海賊の名前は…アーロンです。」

 その名前は聞き覚えがあるな。確か魚人でもけっこう強い方だったはず。

「俺の知り合いがアーロンに殺されそうになり、俺は反抗して戦いました。勿論返り討ちにあって
 海に投げ飛ばされました。そうして漂流している時にガープさんに助けられました。」

「…成る程ねぇ。でもそれならおれ達に言えばすぐに解決出来たんじゃないか?」

「最初はそれも考えました。ですがアーロンを倒してもまた別の海賊が来ないとも限りません。
 それに東の海の小さな村一つを常に見張れる程、海軍も余裕はないハズです。ならば俺が
 強くなって守れる様にしよう。そう考えました。」

「でもそれなら軍を辞めなくてもいいんじゃない?」

「俺には軍の人達にとても恩義がありますし、辞める事には抵抗があります。ですが、最近風の噂で
 俺の助けたかった人が、アーロンの一味に入れられた。という話を聞きました。
 もし、俺が海軍として討伐に行けば、事情はあっても助けたかった人まで捕まえなくてはなりません。
 それだけは絶対にしたくないんです。…例え世界を敵に回しても。」

 その人ってのは余程大事なんだろうね。話しながら覇気が漏れてるよ。

「…多少は事情も分かった。しかし何故おれに話した?ガープさんでも良かったんじゃないか?」

「それは、クザンさんに聞きたい事もあったからです。」

 …何だろうか?

「クザンさんは自分の正義を信じられなくなった事はありますか?」

「…ラーズ。お前は何を知っている?」

 まさか。いや、知っているハズがない。

「俺は世界の全てを知りません。ですが今の世界・海軍が全て正しいとも思いません。
 そうですね…。オハラの事もです。クザンさんはあの時の事を後悔していますか?」

 驚いた…。この子はどこまで知っているのか。

「俺は自分の中の大切な事は全てを捨ててでも守ろうと思います。」

「…そうだな。お前さんはまだ若い。自分の信じた道を進むのがいいだろう。
 おれはお前さんの考えを否定しないよ。」

「ありがとうございます。それともう一つ。これはお願いなんですが、僕と組手をして貰えませんか?」

「それなら構わないよ。」

 そーいや能力者になってからのラーズとはまだ組手をしてなかったな。
 どれだけ強くなったか見てやろう。

「それでは…行きます!」

 最後かもしれないラーズとの組手が始まった。


 〜〜ラーズside〜〜


 いやぁ、思いの他真面目に話してしまった。これから先の「計画」のための下準備のつもりだったが
 おそらく成功とみていいだろう。丁度クザンさんに試したい技もあったし。

「それでは…行きます!」






 −三十分後−


「いや〜やっぱクザンさん強いですね。」

 地面に仰向けになりながら話す。

「それはこっちの台詞だよ。ここまでとはな。」

「少しは成長しましたかね?」

「成長し過ぎだ。能力の相性もあるが俺が苦戦させられるとはね。もうアーロンくらい問題ないだろ。」

 クザンさんは立ってはいるが肩で息をしている。

「褒め言葉として受け取っておきますよ。それに自信にもなりましたし。」

「お前さんの実力は俺が太鼓判を押してやるよ。」

 そう言ってクザンさんは帰って行った。俺はまだ力が入らないのでもう少し休む事にした。
 防御がまだ弱いので、格上との戦いはやはりキツいな。

「ふぅ〜。次に会う時は、予定通りだと敵同士だろうな。」

 そのため今日はクザンさんと組手をしたのだ。新技の結果は上々。後は時間を掛けて鍛えるだけだな。

「ココにはお世話になったな。」

 いつもの訓練所。指導してくれた上官達。少しは申し訳なさを感じる。

「それでも。俺にとってナミは他の何より大きい。」


 準備は全て整った。俺が、俺の力で村を救う。八年前の悪夢からナミを助けるんだ。

「待ってやがれ、アーロン。」




 もうすぐ十八歳になる。全てはこの時の為に−−

 


-10-
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