小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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 七武海のラーズと黒ひげティーチ。二人の戦いの先手を取ったのはティーチだった。

「闇水(くろうず)!」

 ティーチがラーズに左手を向けた瞬間、ラーズは吸い寄せられる様に飛ばされる。

(っ! 能力の発動が速い!)

 あっという間に翳した左手に捕まる。ティーチはすでに右手を引きラーズの腹部目がけて拳を振りぬこうとしていた。
 だがその拳が届く前に、ラーズは武装色の覇気を纏い全身を硬化させていた。

「くっ!」

 並大抵の攻撃ならダメージ無く対処出来るラーズだが、ティーチの一撃は重かった。喰らった衝撃でそのまま後方に
弾き飛ばされる。ティーチも普段なら追撃するのだが、今の自分の攻撃の感触に違和感を覚えていた。
ラーズは飛ばされながらも態勢を整えティーチを見る。

「今の感じ……テメェ覇気使いか!」

「使えないなんて言った覚えはねェけどな。次はこっちの番だ。白火・一閃!」

 そう言うとラーズの尾から炎を収束させたレーザーがティーチ目がけて飛んでいく。ティーチはその技に驚いた
顔を見せたが何とか回避しようとしている。だが一閃の速度は恐ろしく速く、九発同時に放った一閃の内
二発がティーチの右肩と左足を撃ち抜く。

「ぐあああァ!」

 ティーチは痛みに叫びながらもその足取りは大して変わらない。それを見たラーズも違和感を覚える。
 過大評価する気は無いが、自分の一閃もそれなりの威力。そのはずなんだがアレはどういう事だ?
 そう考えてる内にある仮説を思いつく。

「……攻撃が当たった瞬間から俺の炎を闇に引きずりこみやがったのか」

「ハァ、ハァ。よく分かってるじゃねェか。しかしこの辺りの海にここまで覇気を使いこなす奴がいるとはなァ」

(となると一撃のダメージはそこまで期待出来なさそうだ。実際に戦うと本当に厄介だな。エースがやられたのも納得だ) 

 ならば手数で圧倒するしかない。そう考えたラーズは「剃刀」で上空に跳びあがり、今度は尾での「嵐脚」を放つ。

「ちぃっ!」

 ティーチはその場から転がる様にして飛んで来る斬撃を回避する。それと同時にラーズに向けて掌を向け
ラーズを引き寄せる。

「何度も大人しく喰らうと思うな!」

 引き寄せられながらも覇気を纏いながら体勢を整える。ティーチの左手に右肩を捕まえられながらも、顔面に向けて
放たれる拳を左手でガードする。そのまま空いている脇腹に強烈な蹴りをお見舞いする。

「がはっ!」

 今度はティーチが後方の瓦礫まで吹き飛ばされる。しかしラーズも追撃までは出来なかった。先ほどガードした左手が
ティーチの攻撃で痺れて直ぐには動かせないでいたのだ。

(なんつー腕力してんだよ。全力の覇気を纏ってるってのにこの威力か。単純な力だけなら今までの奴で一番かもな)
 
 そうしてティーチが起き上がるのを待つ。今の所ティーチの使っている能力は相手を引き寄せる「闇水」のみ。
あれだけが能力の全てでは無いだろう。狡猾なティーチの事だ。ラーズの知ってる能力の他に隠し玉の一つや二つ
持っていても不思議ではない。
 やがてティーチがゆっくりと起き上がる。

「……その戦い方。どうやらおれの能力を知ってるってのは嘘じゃねェみたいだな」

 瓦礫の中から起き上がりながら口に付いた血を拭いティーチが話す。

「そりゃ勝算もなしに挑む程馬鹿じゃねェんだよ」

「面倒な野郎だ、エースより戦いにくいとはな」 

 話しながらもティーチの体からは黒い瘴気が滲み出てきている。何かするつもりかとラーズは警戒を強める。

「ならこれはどうする!? 解放(リベレイション)!」

 ティーチが叫ぶと同時に大量の木材の残骸がラーズ目掛けて飛んでくる。ティーチは自身の能力で引きずり込んだ物を
一気に解き放ったのだ。

「それがどうした! 焔弾ァ!」

 ラーズは体の前面に尾を展開し直径三メートル程の炎の塊を次々に撃ち出す。二人の中央で小規模な爆発が起こり
お互いの視界を煙が遮る。その瞬間にラーズは自分の攻撃に軽く舌打ちをする。 

(迎撃したのは失敗だったな。俺がアイツだったら……っ!)

 ラーズが考えようとした瞬間、再び体が自分の意志とは関係なく吸い込まれる様に飛んで行く。煙の中を突き抜けて
終着点はティーチの翳している左手。右拳を構えたティーチにまたもや捕まえられたラーズは咄嗟に
防御の姿勢をとろうとするが

「なっ!?」

 今度はティーチの右手に引き寄せられる。「闇水」が使えるのは左手だけではない。ティーチの予想外の行動に
バランスを崩してしまうラーズ。勿論ティーチがその隙を見逃すはずがない。

「隙ありってなァ!!」

「がはっ!」

 ティーチの重い拳がラーズの右脇腹に突き刺さる。その一撃はラーズを後方の瓦礫の中へと軽々と吹き飛ばす。

(今のは確実に入った!)

 拳から伝わった感触に歪んだ笑みを見せるティーチ。しかしその笑みは直ぐに崩れてしまった。

「ぬあちちち!」

 ティーチに向けて飛んで来た拳大の炎の玉が幾つも命中する。思わずその場で転がり回る。

「ゲホッ、一撃入れた位で、油断してんじゃねーよ」

 瓦礫から出てきながら口元の血を拭うラーズ。吹き飛ばされながらもティーチ目掛けて白火・崩を放っていたのだ。
 しかしその炎の玉もすぐにティーチの体から消えて行った。

「畜生が……さっきからエースみたいな技使いやがって」

「んな事知るかよ。お前のパンチ喰らったんだからこれでお相子だろ」

「まだへらず口が叩けるとはなァ。エースよりは骨が折れそうだ。ゼハハハハ!」

 ティーチの卑下た笑いを聞きながらもラーズは有効な攻撃法を思索していた。

(しかしどうする?アイツの攻撃はそう何発も耐えれるもんじゃない。正面からやり合うのは愚策、とてもじゃないが
力勝負で勝てる気がしねェ。決め付けるのは危険だが「闇水」が使えるのは恐らく両手のみ。ならば速さで
撹乱しつつ一閃を撃ち続けるか)

 同時にティーチも笑いながら考えていた。

(さっきの一撃は上手く入ってくれたが「白狐」の覇気は相当厄介だ。そう易々と油断してくれそうにないしな。
しかし奴の能力は本当に動物系か?初めて見るあの白い炎……感じる痛みだけならエースより上だ。
このおれが負ける事はねェと思うが一応保険も掛けておくか)

 顔には出さないがティーチは少し焦っていた。ラーズの持つ能力が完全に分からない事、予想以上の覇気。そして何より
「闇水」で触れたにも関わらず衰えない身体能力。悪魔の実の能力を無効化しているはずなのに自分の一撃を
喰らいながらも反撃してくるラーズの実力を考え直していた。

 実際はラーズの身体能力は悪魔の実に全く依存していないので、「闇水」で触れられても防御力が
格段に落ちる事はない。
 しかし動物系の悪魔の実の能力は身体能力の向上が基本の為、例外であるラーズの事は理解出来ないでいた。


少しの膠着を先に破ったのはラーズ。「剃刀」で三次元の動きをしながら今度は掌から一閃を撃つ。更に撃った瞬間に
その場から移動しティーチを撹乱しようと試みる。

「ぐああ! 熱ちち! ッテメエ!」

 体に一閃を喰らいながらも片っ端から白い炎を闇に引きずり込んでいく。そうしながら必死にラーズを捕らえようとする。

「「闇水」の範囲はそんなに狭くねェんだよ!」

「ちぃっ!」

 そう言いながらティーチは炎のレーザーが放たれた場所に掌を翳す。勿論ラーズは掌の直線上には既にいなかったが、
想像以上に「闇水」の範囲が広くまたしてもティーチに向かって吸い寄せられる。
 このままティーチに捕まり攻撃を受けるかと思われたが、ラーズは捕らえられる直前に尾からティーチの
左腕に向けて一閃を放つ。
 そして顔面に向かって飛んで来た右拳を覇気で硬化させた両腕で防ぐ。

「がっ!」
「くっ!」

 この攻防はラーズの勝ちかと思われたがティーチの振り下ろした拳は重く、ラーズはその勢いで地面に
叩きつけられる。ティーチがダメージを受けている間にすぐさま「剃」で距離を取り体勢を整える。

「さっきから小癪な攻撃ばっかりしてきやがってェ!」

 致命傷になりそうな攻撃は全て闇に引きずり込んでいるが、それでも少しずつティーチの体にはダメージが
蓄積されている。
 だからこそティーチから怒りの色が窺えた。

「そっちこそアホみたいな怪力しやがって。なんて面倒な奴だ」

 先ほどの攻撃で痺れた両手を振りながら軽口を叩くラーズだが、こちらも自分の攻撃が悉く吸い込まれていく事に
少し焦りがあった。
 どうすれば致命傷を与える事が出来るか?ラーズもティーチも自分と相手の能力を考えながら足を止め考える。



 
 お互い決め手に欠けたままの攻防が続き持久戦になるかと思われたが、一人の男の声によって戦場が変化した。



「船長! 向こうから海軍の船が来る。あの船首は……「英雄」ガープの軍艦だ!」



 それを発見したのは先ほどティーチと共に歩いていた男、ヴァン・オーガー。黒ひげ海賊団の狙撃手でもある。
 
「さて、今の俺にとっては援軍だな。どうする黒ひげ?このままだと逃げ場が無くなるぜ?」

 本当は一対一で仕留めたかったラーズだが、今の状態では千日手になりかねない。ガープが着き次第助力を乞う考えだった。
 普通ならこの状況は王手だ。しかしティーチの表情はさほど焦っていない。

「ゼハハハハ! 確かにこのままなら捕まっちまうかもなァ! だが……さっきからおれ様から何が出てたかちゃんと見てたか?」

 それを聞いて何かに気付き辺りを見回すラーズ。そして理解した。



「テメェ! 街にまで手を回してやがったのか!」



 そう。ティーチは先ほどからラーズと戦いながら戦場近くの街に自分の瘴気を流し、いつでも住民ごと引きずり込み
押し潰せる様にしていた。自分が不利になったらいつでも民衆を人質として使える様にしていたのだ。

「念の為にと思っていたがしっかり役に立ってくれて良かったぜ! 七武海様は一応民衆の味方なんだろ?これ以上
おれを攻撃すると間違って闇の中にまとめて引きずりこんでしまうかもなァ?」

「貴様……!」

 ティーチの卑怯な手段に、怒りで握った拳を震えさせるラーズ。しかしティーチもここで捕まる訳には
行かないので必死なのだ。

「おれが船に乗れば能力は解除されるからそれまで大人しくしてくれれば手を出さねェよ。ガープまで来やがったんなら
流石に分が悪い。ここは逃げさせて貰うぜ」

「クソ野郎が……」

 ラーズはティーチの逃亡を止める事が出来ない。悪態をつくのが精一杯だ。
 そうしてティーチはラーズに背を向け自分の船に戻ろうとしたが、途中で振り返ってラーズに言葉を投げる。

「今回は引き分けにしといてやる。だがなァ……」









「テメェは必ずおれが仕留めてやる。必ずだ」

 







 ティーチのその言葉は、とても重々しかった。無言のままティーチを睨むラーズ。ティーチの船はそのまま海に向かって
進んで行く。黒い瘴気もいつの間にか消え去っていた。ラーズは小さくなって行く船を立ち止まったまま見ていた。



 こうして白狐対黒ひげの戦いは一旦幕を閉じた。しかしこの戦いによりラーズもティーチもお互いをより
敵視する事となり、それによって後に二人は再び巡り合う。その時に笑うのはラーズかティーチか、白か黒か。





 世界はどちらを生かすのか―――――














  〜〜ラーズside〜〜


 ……ふぅ、黒ひげの能力は想像以上に厄介だったな。もしガープさんの援軍が来なかったらやられていたのは
俺だったかもしれない。
 ただの能力者だったら何人かかっても勝てそうにないな。しかしアイツの能力で気になる事があるんだが、確か
アイツが引きずり込むのは「能力者の実体」だよな?だとするとガープさんみたいな非能力者とかは
どうなるんだ?もしかしたら引きずり込めないから今回は退いたのか?一度戦った程度じゃ完全には理解出来ないか。

 しばらく黒ひげについて考えているとガープさんの軍艦がやって来た。「月歩」で甲板まで跳び上がりガープさんに報告する。

「お久し振りですガープさん。すみませんが黒ひげには逃げられてしまいました」

「元気そうじゃの。遠くからじゃが少しはお前達の戦いは見えておったわ。逃げられたのも理由があるんじゃろ?」

「ええ。民衆を盾に使われてしまったので追えませんでした」

「住民に被害が無いなら良いじゃろ……してラーズ。黒ひげはどうじゃったか?」

 何ヶ月か振りの挨拶もそこそこにして本題に入る。


「相当厄介です。自然系の実体を捉える事に関しては俺と一緒でしたが、黒ひげの能力は全ての能力者に対して
有効だと思います。少なくとも一対一は避けるべきです」

「お前でも苦戦する程か?」

 話を聞きながらガープさんが顔を顰めている。

「はい。ガープさんみたいに純粋な身体能力で勝負してる人相手は分かりませんが、こちらの攻撃は当たった
瞬間から吸い込まれていきました。致命傷を与えるには不意を突いた強烈な一撃が必要だと思います。
 俺の炎も片っ端から吸い込まれてましたし。今の所仕留めるのは厳しいかと」

 俺の出来る技で一番威力のある技は爆散掌だが、アレでも致命傷になるかどうか。今回使うヒマは無かったが
今度戦う事があれば全力で使用して倒さないとな。

「なんとも厄介じゃのう。それに……」

 ガープさんが変なとこで言葉を区切った。恐らくエースの事を考えているんだろう。自分の身内が捕まったんだ。むしろ
よく冷静でいられると思う。普段は自由人なのに自制心が強いのか?俺は黒ひげにけっこうぶつけてきたからな。

「黒ひげに関しては俺も追います。アイツを放っておくと今以上に面倒な事になりそうな予感がするんで」

 気のせいかもしれないが黒ひげはまだ何かを隠している気がする。アイツの能力かアイツの「計画」か、もしくは
その両方か。とにかく仕留めれる機会があったら今度は迷わず仕留めないと大変な事になりそうだ。

「まァ無理はするなよ。それからさっきセンゴクから通信が入ったんじゃが」

 センゴクさんから?今度は何の用だろ?また何かの仕事か?七武海に入ってからずっと上手く使われてる気がするんだが。



「安心しろ。ただの報告じゃ。…………エニエス・ロビーについてじゃよ」



 ルフィ達の事か。

「なら良かったです。また指令かと思いましたよ。思わずセンゴクさんに抗議する所でした」

 そう言ってホッとする。ひとまず俺の仕事も一段落だろ。

「ほォ。ルフィ達がどうなったのか知っておるのか?」

 ガープさんは俺を見ながらニヤニヤしている。何を考えてるか分かってるみたいだな。

「いえ、知りませんが……予想ならついてます」














「アイツ等がこんなとこで負けるはずが無いじゃないですか」






 そうだろルフィ?





























   あとがき



 まずはアンケートに協力頂きありがとうございます! 色々考えた結果、sideはやはり多少なりとも使用し、メインキャラの
心情を上手く描写していこうと思います。また地の文も厚くし皆様が想像しやすいような文章を作成していきます。

 更新しながら作者の書き方にも変化があり、読みづらくなっているかもしれませんが御容赦下さい。

こんな感じでじゃパ〜ンは頑張っていきます!

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