〜〜ナミside〜〜
ルフィ達から奪ったメリー号に一人で乗っている。もう少ししたらココヤシ村だ。
「あいつら今までの中では一番いい海賊だったなぁ。」
一緒に旅をして、あんなに笑ったのは初めてかもしれない。
その分今回の裏切りの心の痛みは大きい。
「もう少し。もう少しで村を救えるんだ。」
村を買い取るための資金、一億ベリー。…あれから八年間必死に貯めてきた。
「私は頑張ってるよ、ベルメールさん。」
甲板から空を見上げる。
「……ラーズ。」
最後に発したのは、小さな小さな声だった。
〜〜ラーズside〜〜
アーロンパークに着いた。目の前には扉が見える。
「さて、正々堂々正面から叩き潰すか。」
扉を蹴り破る。盛大に破片が飛び散った。
「あぁん?何だ手前は!?」
名前も知らない魚人が何人か近付いてくる。見える範囲にはアーロンはいないな。
「アーロンを倒しに来たんだがどこに居るんだ?」
「人間がアーロンさんを?何の冗談だよそりゃ!」
魚人達がゲラゲラ笑っている。
「いや〜冗談じゃなくて本気なんだけどな。まぁいいや、アンタらは邪魔だ。」
尾を振り回し「嵐脚」でまとめて蹴散らす。建物やらプールやら四方に飛んで行った。
「なっ!?」
「テメエよくも!」
遠くにいた魚人達が向かってくる。
「何でアーロンも幹部もこの音で出て来ないんだよ…。」
言いながらも相手に「嵐脚」を飛ばし続ける。適当に飛ばしているので何発か建物にも当たる。
「にゅっ!?おいおい何だこりゃ。」
「人間相手に情けない。」
「チュッ。あいつらだめだなぁ。」
ようやく幹部連中のお出ましか。
「下等な人間風情がいい度胸じゃねえか。」
ついでにアーロンまで出て来た。昔と変わってねえな。
「アーロンさん、ここは俺達に任せてくれ。貴様、同胞をやった罪は重いぞ。」
「さっさと終わらせてくれ。」
相手の力量が分からないってのは悲しいな。
「喋ってないで早く来いよ魚野郎ども。」
あえて挑発する。
「にゅにゅっ!?テメエおれ達を侮辱しやがったな!許せねえ!!」
最初に来たのはハチか。生で見ると六刀流って面白いな。だが、
「悪いね、こっちの尾は九本だぜ。」
剣戟を全て尾で弾く。覇気を込めてるので痛くもない。
「んなっ!?」
驚いた一瞬で懐に入り腹部を殴りつける。
「がはっ!」
殴った勢いそのままに吹き飛ぶ。
「まずは一人。」
すぐに「剃」でとんがり唇(名前チュウだっけ?)の背後を取り背中に一撃。
「あん!?ブヘッ!」
うーん見事にポンポン飛んで行く。ここまで強くなってたんだな。
とんがり唇はワザとアーロンの棲家(アジト?)向けて飛ばした。
建物に穴が開く。
「貴様よくも!!」
空手野郎が正拳突きを放ってくる。余裕で避けれる。が、少し遊ぼう。
「なっ!馬鹿な!?」
正拳突きの途中の腕を尾で掴み動きを止める。
「遅すぎ。」
がら空きの顔面を殴りつける。きっちり建物にまた穴を開けてくれた。
「…さて、後はあんただけだぜアーロン。」
「貴様!同胞をここまで!!何が目的だ!?」
「目的って…。アンタ八年前何したか忘れたの?」
「八年前?……貴様、まさかあの時のガキか!!」
「いや〜あの時はホント死ぬかと思ったけどな。」
「…シャッハッハッハッ!!そのガキが何しに来た。まさかおれ様を倒せると思ってるのか?」
「……聞きたい事がある。」
「あん?」
本当は問答無用で薙ぎ倒してもいいのだが。
「アンタは幾らナミが金を積んでも解放する気はないんだろう?」
アーロンは嫌な顔で笑っている。
「ほぅ。よく分かってるな小僧。アイツは優秀な航海士だからな。
まぁ世界中の海図を書いたら返してやるよ。シャーハッハッハッ!」
「…その言葉が聞きたかった。」
「あっ?」
「これで容赦なくぶちのめせそうだ。殺したらすまんな。」
「テメエ!見た所悪魔の実の能力者みたいだが、それでこのおれ様に勝てるとでも?」
こいつは本当に馬鹿だな。
「あの時の女みたいにテメエも殺してやるよ!」
決めた。こいつは徹底的に痛めつける。
「もういい。さっさと始めるぞ。」
尾を巻き付け戦闘モードに入る。
「死ねえ!」
力任せに拳を振るってくる。だが、
「この程度か?」
片手で軽く受け止める。
「なっ!?」
「八年前とは…違うんだよ!」
もう片方の手でボディブローを打ち込む。
「がはっ!?」
「悪いな。少し強くなりすぎた。」
ここからは一方的な暴力。蹴りを、拳を、肘を、膝を。全身に当て続けた。
反撃する暇を与えず、攻撃し続ける。
しばらくするとアーロンが倒れたまま動かなくなった。
「ハァ…。ハァ…。ば、かな。」
「八年前とは立場が逆転したな。鮫のアンタが食われ、たかが人間の俺が捕食者だ。」
「こ、この…おれ様、が。」
「もうベルメールさんは戻って来ない。村の人を恐怖で縛り続けた。そして…」
「アンタはナミを傷つけた。それが一番許せない。」
全力でアーロンを殴り飛ばした。どうせ賞金首だし死んでも問題ない。
そのまままた建物に当たり、アーロンパークは完全に崩壊した。
「ようやく終わったよ、ナミ。」
静寂が訪れた後、一人呟いた。
〜〜ナミside〜〜
外れに船を停めてアーロンの元へ向かう。途中で大きな音が聞こえ始めた。
「…何だろう?海軍は来ないハズだし、ルフィ達はまだ追い付いてないわよね?」
どこぞの賞金稼ぎでも来たかしら?たまに来るけど誰もアーロンには敵わないわよ。
再び音が聞こえた。今度は一際大きな音だった。
「そんなに派手にやってるのかしら?」
軽く考えていたが、直ぐに違和感に気付く。
「アーロンパークが…無くなってる!?」
いつもは見えるが今日は見えない。何があったの!?急いでアジトに走る。
そして見た光景は信じられないものだった。そこら中に倒れている魚人。
アジトは完全に叩き潰され見る影も無くなっていた。
…!?よく見ると遠くに倒れているのはアーロンだった。
アーロンに勝てる奴がいるなんて…。
「一体誰が?」
少し離れた場所に誰かがいた。あの人が倒したのだろうか?周りには誰もいない。
一人でアーロン一味を全滅させたっての!?見ると何やら尻尾みたいなのを生やしてるし
あの人も悪魔の実の能力者なのかしら?
するとその人はこちらを振り向き近付いてきた。もしかして私も仲間と思われてるの!?
少し下がり警戒する。
しかし、その人は攻撃してくる事はなかった。
「…ナミ?」
私の事を知ってる?
「アンタ誰?」
こんな知り合いはいない。…いないハズだが。
「まぁ分かんなくて当然だよな。あれから八年経ってるし。」
…八年?八年前ってもしかして!?
「アンタ…。ラーズ??」
「あっ思い出した?久し振りだな。」
そう言って笑っていた。信じられない。だってあの時あんなに怪我して海に投げられて…。
「ベルメールさん、守れなくてすまなかった。」
もう間違いない。本当にラーズだった。死んだとばかり思ってた。生きてた。生きててくれた!
色んな感情が溢れ出て上手く言葉が出て来ない。
「助けに来るの遅くなってごめんな。」
…!!!申し訳なさそうな顔で頭を撫でられた瞬間、涙が流れ出てきた。
思わずラーズの胸に飛び込む。
「ずっと死んだと思ってた…。ずっと辛かった!ずっと苦しかった!!ずっと痛かった!!!」
子供の様に泣き続けた。もう、我慢しなくていいんだ。
ラーズは私が泣き止むまで黙って頭を撫で続けていた。
私を包む様なその手はとても暖かかった。
私の走り続けた八年間
今ようやく足を止めて休める
全てはこの幼馴染のおかげで
−−長い長い時を経ての再会−−