〜〜ラーズside〜〜
あれから双子岬を出航して予定通りウイスキーピークに着いた。ビビとバット王子は途中で船からダイブして泳いでいった。
んでまた予定通り飲めや歌えやの大宴会が始まった。いつもならトリオの一人として活躍してるのだが、
今回はそんな気は全く起こらなかった。なぜなら
「ナミに避けられている…。」
あれからまだナミが口を利いてくれない。謝ろうとしてもどこかへ行ってしまう。
「俺はもう駄目だ…。」
一人で夜風に当たりながらチビチビ酒を引っ掛ける。ちなみにメリー号の甲板で、だ。
ちょっぴりナミが心配して来てくれないか、などと考えていたがそんな気配は全くない。
バロックワークスの雑魚共は俺がいなくてもゾロ達で十分だろ。今は戦うのすら面倒臭い。
大の字に倒れて月を見上げる。
「綺麗な満月だなぁ。」
軽く現実逃避しながら風情を感じる。
「んで、さっきから居るけど俺に何か用?バロックワークスの副社長さん。」
頭だけ動かすと、近くにニコ・ロビンがいた。
〜〜ロビンside〜〜
麦わらのルフィ・白狐のラーズ。二人の賞金首の事がフロンティアエージェントからの報告もあって島まで来てみた。
特に気になるのは白狐さん。偉大なる航路に来る前から6000万の賞金首になるなんて、私と同じ様な立場なのかしら?
海軍大将の赤犬ともやり合ったみたいだし、ちょっと興味があるわ。
どうやら近くに船があるわね。船員はみんな酒場で飲んでるでしょうし行ってみましょう。
静かに覗いてみると、誰かいるみたいね。あの白い髪は白狐さんかしら?尻尾もあるみたいだし。
「んで、さっきから居るけど俺に何か用?バロックワークスの副社長さん。」
あら、何でそんな事知ってるのかしら?
「いつから気付いてたの?」
「んー船に近付こうとしてたくらいから。サカズキさんとやり合ってから感覚が敏感になってるんだよね。」
「そう。それで白狐さんはこんな所で何してるの?他のみんなと騒がなくていいのかしら?」
「俺にも色々あってね。別に俺抜きでもあいつ等は強いから心配はしてないよ。」
そう言って立ち上がった。襲撃まで分かってるなんて、この人予想より遥かに頭が切れるわね。
「それより何でここに来たの?ミス・オールサンデー。…いや、ニコ・ロビンの方がいい?」
「アナタ私を知ってるの?」
少し警戒した方が良さそうね。
「一応元海軍だからね。ちなみに俺はアンタの組織の目的も知ってるよ。国家転覆なんて凄い事考えるね。」
…白狐さんは危険な存在ね。今のウチに片付けておこうかしら。
「あぁ能力なら使わない方がいいよ。俺は今アンタを攻撃するつもりはないし。」
能力を使おうとした瞬間、白狐さんは消えた。いや、いつの間にか私の後ろにいた。
「…随分と速いのね。」
「コレ位出来ないと大将達と戦えないからね。それにアンタの能力は俺を視界に捉えないといけないだろ?
俺はアンタが確認するより速く動けるぞ。」
この人は何を想定して戦ってるのかしら?他の海賊とは全然タイプが違うわ。私の能力の弱点まで知ってるなんて…。
「まぁいいや。俺もアンタに聞きたい事があるんだけど。」
「何かしら?」
「アンタ自身の目的の事だ。」
「!?…何の事?」
「……歴史の本文。」
「アナタそれをどこで!?」
何でそんな事まで知ってるの!?ここまで知られてると恐ろしくなるわ。
「安心してくれ。アンタの事は一味でも俺しか知らない。」
「これだけ知ってる人相手に安心は出来ないと思うけど?」
「そりゃそうだな。んー、なら俺が「歴史の本文」の在り処を知ってるとしたら?」
「知ってるの!?」
今のは一番驚いた。どこまで奥が深いのかしら?
「とりあえずアンタ達の根城のアラバスタにある、ワニも知らない具体的な場所。気になる?」
「当たり前でしょう!」
思わず声を荒げてしまう。私のずっと探してるモノなのだから。
「ん〜。なぁニコ・ロビン。気になるなら俺達の船に乗らないか?」
!?何をいきなり言い出すのかしら?
「私のメリットは?少なくとも今の組織よりは魅力的なのよね?」
「そうだなー。まずはワニ野郎の知らない「歴史の本文」の場所。あっ、多分ワニ野郎はその内倒すだろうしね。
これから仲間になる予定の子の国だからさ。
アンタが組織にいたままだと倒さないといけない。出来ればそれは嫌なんだよね。
こっちに付いてくれれば敵戦力も減るし。
それから俺の知ってる残り二つの「歴史の本文」の場所。後は…アンタの今の組織より居心地の良さを保障するぞ。」
最後の方は白狐さんは笑っていた。
「私が世界政府から追われているのを分かって言ってるの?」
「俺も同じく世界から追われてるしね。大将のサカズキさんが直々に。今更アンタが増えても大して変わらないさ。」
「…。」
「今まで逃げて続けてきたんだろ?たった一人で。少しくらい心から頼れる奴らを作ってみてもいいんじゃないか?」
「!?」
「アンタは生きて自分の夢を叶えなければならない。…亡くなったオハラの人達のためにも。違う?」
「アナタそれは二十年も前の話なのに…。」
「物知りだからね。」
私の事をこんなに理解して、それでも白狐さんは仲間に誘っているのね。…こんな事は初めてかもしれない。
この人達ならもしかしたら…
「私を追って青雉が来るかもしれないわよ?」
「あぁクザンさんか。昔は勝てなかったけど今なら少しは戦えるよ。勝てるかどうかは微妙だけどね。」
「青雉とも戦った事あるの!?」
「海軍にいた頃はしょっちゅう組手もしてたよ。軍を抜ける前はけっこうマジで戦ったし。」
あの青雉を恐れてる様子はないわ。本当にそう思っているのね。
「それでも…」
「バスターコールならきっと大丈夫だ。今の中将クラスなら十分戦える。俺も仲間も、今より強くなるさ。アンタにとっては
全てを奪い去ったトラウマだろうけど、俺達は負けない。」
…心が軽くなっていくのが分かる。今まで誰も掛けてくれなかった言葉。なんて暖かいのかしら。
「……後悔しない?」
「今まで十分してきたよ。これ以上する気は無いね。」
もう迷わなくていいのね。
「そう…。なら私も仲間に入れて貰えるかしら?」
「歓迎するよ、ロビン。」
そう言って白狐さん、いやラーズはまた笑っていた。
「ところで勝手に決めていいのかしら?」
「あっ。…まぁいいや、説明すれば問題ないだろ。別に悪人を引き入れる訳じゃないし。後はルフィに手でも
生やして遊ばせればいいだろ。アイツそういうの好きだし。」
「ふふっ、分かったわ。」
久し振りに笑ったわね。ラーズのお仲間さんも楽しそうだわ。
「ただ…、一人だけ納得しない奴がいるかもしれない。」
「あら、どうしようかしら?」
「いや、ロビンに責任はないと言うか多分俺が悪いと言うか…。」
「??」
「とりあえずソイツも根はいい奴だから嫌わないでくれ。」
「良く分からないけど分かったわ。これから宜しくね、ラーズ。」
「はっ!」
「どうしたんだいナミさん?」
「何か……嫌な予感がするわ…。」