小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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〜〜ラーズside〜〜


「いっぱーつ」

「ギャアーーー!?」

「にはーつ」

「「剃」でも軽く追いつかれる!?」

「さんぱーつ」

「ふ、服が焦げたー!?」



 今、俺は城の外にいるルフィとウソップを追い掛けている。一閃を撃ちながら。
 何でかって?勿論この前からかられたリベンジである。実に技の無駄遣いだ。
 どーせ下は雪だし撃ち放題だ。見たまえ、これがラーズの力だ!



「はっはっは。どこへ行こうと言うのだね?」

「「大佐ー!勘弁してくれー!!」」

「アンタ等は歪んでいる。そんな海賊、修正してやる!」

 命懸けの鬼ごっこはしばらく続いた。



「まぁ、こうなるわよね」

 ロビンが笑っていた。

「どうやら全快になったみたいですね」

 ビビも笑っていた。これからアラバスタに行って一大イベントがあるのだが、そんな緊張感は欠片もない。







 あれから寝てる間の話を聞いた。どうもカバ野郎は城に登ってくる事もなく下の町でルフィ達にボッコボコに
 されたらしい。ちなみにウソップが幹部の一人を仕留めたとか仕留めてないとか。どーもウソ臭いが。
 このメインキャラどもの成長には驚かされる。俺が強くなるのにどれだけ掛かった事か、全く。
 さて、次はウソップに何を仕込んでやろうか。そう考えるとニヤニヤが止まらない。


 チョッパーはちょいちょい様子を看に来てくれていたが、まだ人間に少し抵抗があるみたいだ。

 そろそろ城を出ようとした時はドクトリーヌとチョッパーが来てくれた。

「色々とありがとな、チョッパー」

「!?う、うるせい!褒められても嬉かねーぞ!」

 クネクネしているが喜んでいるみたいだ。何か可愛らしいな。ここで仲間に勧誘してみるか。


「なぁチョッパー、もし良かったら俺達と海に出てみないか?」

「えっ?」

「今まで能力のせいで辛い思いをしてきたかもしれないが、俺達の一味はすでに能力者も沢山いるしな」

「……」

「それに…俺にはナミや俺を救ってくれた借りがある。それをこれから一緒に旅をして返したいんだ」


「…だけど」

「ちなみに俺は動物系の狐人間、ロビンは色んなとこに体の部位を生やせるハナハナの実の超人、ルフィはゴム人間。
 そしてウソップは”鼻鼻の実”を食べた鼻人間なんだ」

「テメエ、ラーズ!リアルな嘘を交えるんじゃねえ!!チョッパーが信じるだろ!大体鼻人間って何だよ!?」

「え〜っと鼻が伸びて槍みたいに突き刺さる、とか?」

 「六式」でいう指銃、鼻だと鼻銃(びがん)だなっ。……気持ち悪いし怖い。

「この鼻は生まれつきだ!!伸びねえよ!!」

 チョッパーは混乱している。純粋が故にどうしていいのか分からないんだろうな。


「…でもおれは、人間じゃないし…」

 はぁ、なかなか傷は深いみたいだな。やっぱり小さい頃から人間にも嘗ての仲間にも虐げられてきたのだから
 仕方がない。心の傷ってのは他人が考えてるより根が深い。治そうと思って治せるものじゃない。




「よし、ウソップ。先にロビンと船に戻っててくれ」

 ウソップはいきなりの俺の発言に少し疑問を抱いたが、すぐに納得したみたいだ。

「なるほど、直ぐに準備する。行こうぜロビン」

「えっ、ええ分かったわ」

 ロビンはイマイチ分かってなかったがウソップについて行った。しかし今更だがウソップの奴、どうして俺が
 考えそうな事がここまで分かるんだ?つーか本当に分かってんのか?見聞色の覇気でもここまで読めないぞ、多分。



 そうしてチョッパーに向き直る。

「いいかチョッパー、俺が最初にお前に会った時に言った言葉覚えてるか?」

「……?」

 まぁそんなの覚えてる訳ないか。内心苦笑しながらはなしを続ける。

「言ったよな?『えっとこの城の『人』か?』って」

「!?」

 チョッパーの目が見開く。

「お前が喋るトナカイでも鼻が青くてもいいじゃねえか。世界中探したってお前みたいな不思議な奴は沢山いると思うぞ。
 ルフィは体が伸びるし俺は尻尾生えっ放しだし。俺はこれで町歩いてたらいつも気味悪がられるぞ」

 笑いながら語りかける。


「そうね、看病してくれたお礼もまだだし」

 ナミもチョッパー勧誘に賛成みたいだ。


「私も賛成です!!」

 ビビも同意していた。何か目が輝いているが何だ?ペット見つけたみたいで嬉しいのか?カルーはお役ゴメンか?


「おれもいいぞ。医者がいるのは助かる」
「おれも賛成だ」

 ゾロとサンジも大丈夫だな。


「ドクトリーヌ…」

 チョッパーは窺う様な視線を向ける。

「アンタの決める道だ…それにもう答えは出てるんだろう?ヒーッヒッヒッヒ」

 ドクトリーヌは笑っていた。そしてルフィ必殺の殺し文句が炸裂。



「うるせえ!!一緒に行こう!」



「へへへ…」
「うるせえって…勧誘になってねえじゃねか」

 ナミとビビは笑って、ゾロは呆れていた。俺も笑いながらチョッパーを見る。チョッパーは目から
 洪水が起きそうな勢いだった。

「ってな訳で船員がみんな賛成なんだが…どうだ?」

 そこにドクトリーヌが止めを刺した。




「湿っぽいのはキライなんだがね……行っといで『バカ息子』…『仲間』が呼んでるよ」


 ドクトリーヌの目には涙が滲んでいた。この人もまた、チョッパーを本当の家族の様に思ってたんだな。
 俺もちょっと泣きそうだ。


「うっ…」



「うおおぉぉーーーーー!!!」


 そしてチョッパーは号泣した。

 こうしてチョッパーが仲間になった。



 



 そうして新たな仲間を連れて船に戻って行く。

「ラーズー、準備はばっちりだぞ」

「こういう事だったのね」

 ウソップは甲板に大量に酒と食い物があった。こいつ完璧に理解してやがった。この能力何かに使えないかな?

「さぁァァァァすがァァァウソップゥゥゥゥ、以心伝心だなァァァ!!!」

「イエス、ユア・マジェスティ!」

 ウソップが片膝つけて右手を胸につけていた。どこの騎士だよ。


「「オール、ハイル、ムギワァァラァァァァァァ!!!」」



「あれだけでよく分かったわね長鼻くん」

 ロビンが少し呆れていた。そりゃそうだよな。

「って事でルフィ」




「「「宴だー!!!」」」

 そうしてチョッパー歓迎会が始まった。







「いいかチョッパー、おれには他に八千人の部下がいるんだ」

「そうなのか!?すげー!」

 チョッパーは感動の眼差しをウソップに向けていた。

「何平気でウソついてんだよ長っ鼻」

 ゾロが突っ込む。


「白髪!いつまでナミさんの隣にいるんだよ!?」

 あのマユゲまだ諦めてないのか?このラブラブな空間に土足で入り込んでくるとは。ある意味コイツも
 尊敬に値するかもしれないな。

「恋人の隣にいて何が悪い」

「ぐぬぬぬぬ」

 これでもまだ諦めねえのか?ふふんっ、と鼻で笑って俺は勝ち誇った様に隣に座っているナミの手を握った。

「あっ…」

 ナミは少し照れていた。


「はいはい、他人の恋路を邪魔したら馬に、いや狐さんにやられますよ?」
「そうね、コックさん新しい料理を持って来てくれるかしら?」

 女性陣のフォローで消えて行くサンジ。二人に呼ばれて何だか嬉しそうだしあれはあれでいいだろ。
 ちなみにナミの手を離すつもりは全くない。


 そうしてワイワイ騒いでいると空から音が聞こえた。ドラムロッキーの頂上に桃色の”花”が咲いた。
 …これがヒルルクの研究の成果か。非科学的な事はあまり信じたくないがこれには納得せざるをえない。







 それは、あまりにも美し過ぎた。









「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 
 チョッパー号泣&絶叫。二人には俺達には理解出来ない程の絆があったんだな。 





「うおー!すげー!」

「こりゃ見事だ」

「あら、素敵ね」

「ええ、とっても…」

「風情があるじゃねえか」

 ルフィ・ウソップ・ロビン・ビビ・ゾロも感動していた。ちなみにサンジは絶賛料理中だ。勿論誰も呼びに
 行かない。あのマユゲにはいい天罰だ。こんなものを拝めないとは。


「……綺麗だな」
「…うん、凄く」

 俺もナミと手を繋いだままドラム島に咲いた”サクラ”を見上げた。それはとても幻想的で美しかった。
 全員が遥か上空の景色に見惚れていた。

「ナミ」

「ん?」

 呼び掛けてこっちを向いたナミに優しく二度目のキスをした。勿論誰も気付いてない。


「!?」

 ナミは驚いた後、頬を赤く染めた。

「好きだぞ」

 他のみんなには聞こえない様な小さな声で呟いた。ナミは頭から湯気が出て来そうな勢いだった。
 俺も多少恥ずかしくなって照れた。体温が上昇するのが分かる。

「……もうっ」

 ちょっとツンとしていたがさっきよりナミは近付いてきて肩と肩が密着していた。

「こんな時ぐらいは…いいよな?」

「そうね」

 俺もナミも笑っていた。握ったその手は、離さないまま−−





 こうして色々あったドラム王国を去る。さて、次はようやくワニと対決か。どうやってボコボコにしてやろうかな?
 今のルフィなら苦戦せずに倒せるだろうし。それまでにウソップを愛の教育的指導で強化してやろう。



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