〜〜ウソップside〜〜
こうしてラーズもナミも元気になり一行はアラバスタへと向かっている。…だがおれには不安がある。
一味の中でおれだけが弱い様な気がするのだ。他の男メンバー(特にラーズ)が強すぎるってのもあるんだが。
仲間の役に立てていない。どうしても劣等感が生まれてしまう。
そんな事を考えているとラーズが話し掛けて来た。
「おーいウソップー」
「どうした?」
ラーズはニコニコしている。まぁドラム島でナミと結ばれて有頂天になってるんだろう。幸せオーラがはみ出てるぞ。
あんな笑顔してレーザー撃ってくるんだからたまんねえよ。トラウマになるっつーの。
「実はウソップの武器のパチンコの玉を試しに作ってみたんだが」
「どんなやつだ?」
興味本位で聞いてみる。コイツの事だから下手したら碌でもないモノかもしれない。
「まぁ正確には玉じゃないけどな。ひとまず海に向かって撃ってみてくれ」
言いながら筒状のものを渡される。筒の片方には小さい穴が多数開いている。何だこりゃ?
「ほら、早く早く」
ラーズに急かされながら受け取って発射してみる。すると、撃った直後に筒の穴から多数の針みたいのが飛び出た。
しかもその針が小規模ながら爆発した。
「おっ、どうやら成功みたいだな」
「……何だいまの?」
「さっきの筒に鉄の針を仕込んでおいたんだ。んでその針の先端に爆薬を仕込んだ。発射したら針が爆発する様に
してみたんだ。ウソップはあまり対集団用の武器が少なかったから少しは足しになるかもってな。
ついでに今の爆発は視界を遮る事も出来るだろうから、それから「剃」で移動して狙い撃ちが出来るかも
なぁと思ってな。他にも考えてるんだが今んとこソレしか作れなかったんだ。
少し撃ちにくいかもしれないがそこは勘弁してくれ。」
「……」
おれは馬鹿だ。自分の実力不足を棚に上げていた。
ラーズはおれの為にこんな事まで考えててくれたんだな。嬉しくてちょっと涙が出そうになった。
「ちなみに必要な材料は色々とドラム島で手に入れておいたぞ。俺が作るよりウソップが作る方が性能上がるだろうし」
「ラーズ……ありがとな」
おれはますますやる気が出た。ラーズの為にもやってやるぜ!
そうしていると今度はチョッパーがやってきた。コイツはどうもラーズに懐いてるみたいだ。同じ様な能力者だから
気になるのか?
「なぁラーズ、その尻尾って戻らないのか?」
「あぁこれか。無理無理。何年か試したが一向に戻らない。最早体の一部だ」
「そっか…他には変身できるのか?」
「ん〜出来るけど獣体型にしかなれないぞ」
言いながら例の狐体型になる。しかしホントにデカイな。
「俺よりチョッパーが凄いんじゃねえのか?俺は部分的な変化なんて出来ないぞ」
「へへへっ、そうかな?」
「あぁ、それに医学にも詳しいなんてな。来てくれて助かったよ。あっ、そういやチョッパーって何か薬みたいなの
飲んで変身してるんだよな?」
「うん、そうだぞ」
「それなんだけどさ、少し修行してみないか?俺も最初は全然尻尾使えなったけど修行のおかげで今は自由自在だ」
「そうなのか!?」
チョッパーが羨望の眼差しで見つめている。
「あぁ、っても内容は瞑想みたいなもんだけどな。自然と一体になる様な、体を自在に操れるイメージを常に持ち続けるんだ。最初は無理だろうけどきっと出来る様になるぞ」
ラーズは元に戻ってチョッパーの頭を撫でていた。お互い動物系の実の能力者だし親近感があるんだろう。
「これで部分的な強化が出来れば毎回薬飲まなくてもよくなるしな。あれって制限時間とかあんのか?」
「うん。ランブルボールの制限時間は三分だ」
「チョッパー、お前はもう海賊だ。これから先、強い敵が出て来て戦闘になったとしてその三分で倒せない敵も
出てくるかもしれない。制限時間があると戦略にも限界があるからな。まずは腕でもいいし脚でもいい。どこか
一つずつ強化出来る様にやってみようぜ。俺もちゃんと見ておくからな」
「よーしやってやるぞー!」
チョッパーはやる気マンマンだ。おれも負けてられねえな!
「あ、ウソップ。さっきの玉の作り方は紙に書いてるから後はお前のセンスでいじくってくれ。工作に関しては
お前が一味でダントツトップだろう」
「任せろ!ラーズがビビる様な新技を開発してやるぜ!」
こうしておれは武器の開発と修行を続ける。
〜〜ビビside〜〜
甲板でラーズさん達を見つめていたらナミさんがやってきた。
「どうしたのビビ?」
「いや、ラーズさんって不思議な人だなぁって」
「そう?」
「そうですよ。今もウソップさんやトニー君の面倒みてるし、ルフィさんやミスター・ブシドーとは組手ばっかり
してるし。かと思ったら他の人の気持ちもちゃんと理解してるし。でもどこか抜けてるとこもあってよく
からかわれてるし。敵だったロビンさんはいつの間にか仲間にしちゃうし。
まぁナミさんの事になると周りが見えなくなるみたいですけど」
最後は笑いながら答えた。するとナミさんは少し頬が赤くなった。
「私が初めて鯨の中で会った時から私の正体も見抜いてたみたいだし。何て言うか掴み所がないです。」
そう言うとナミさんは少しだけ考えていた。
「ビビもラーズの事良く見てるのね。それだけ分かるってのは」
笑いながらナミさんは答えた。
「……そうかもしれませんね。私が今まで出会った人であんな人はいませんでしたから」
「あんなのが何人もいたらたまったもんじゃないわよ」
ナミさんは苦笑する。
「私は今まで兄弟とかいなかったから…ラーズさんを兄の様に思ってるのかもしれません。もしお兄さんがいたら
こんな風だったのかなぁ、なんて。大事な事はちゃんと伝えてくれるし一緒に居ると落ち着きますし。
何より…信頼出来ます」
そう、ラーズさんは必要な事はきちんと教えてくれ、私の国も救ってみせると言っていた。
不思議と私は信頼出来た。
「……それって恋じゃないの?」
ナミさんは少しだけ、ほんの少しだけ困った様な顔をした。
「…最初は少しそうだったのかもしれません。けど今はもう、そんなのじゃないと思います、きっと。
だってラーズさんの心の中にはナミさんしかいませんから」
「……」
少しの沈黙の後ナミさんは答えた。
「私も一緒よ。私の心の中はラーズしかいないわ」
ナミさんは笑顔で自信満々に答えた。
「ふふっ、ならナミさんは私のお姉さんみたいなものですね」
言って二人で笑った。
「あら、二人で楽しそうな話してるじゃない」
いつの間にかロビンさんも近くに来ていた。
「ロ、ロビンにラーズは渡さないわよ!」
ナミさんがロビンさんにビシッと人差し指を指す。
「これから長い船旅ですもの。チャンスは幾らでもあるわよ。それに彼は私の…」
変なタイミングで言葉を止めた。明らかにナミさんを挑発する気マンマンだ。
「私の…何よ!?」
「ふふっ、何でしょうね?」
「ムキーー!!」
第二回ラーズさん争奪戦の勃発ね。やれやれ。二人はしばらくギャーギャー言っていた。と言ってもまたナミさんが
熱くなってロビンさんは冷ややかなままだったけど。この二人も案外仲良いのかしら?
私のお兄さんはモテモテな様です。
その頃ドラム島ではドルトンとドクトリーヌが話し込んでいた。その手には二枚の紙切れがあった。
「あの小僧、ここまでの器だったとはねえ」
「しかしあの時の姿勢、態度。とてもその様には見えませんでしたが」
「人には色々あるからねえ。奴等はモーガニアではなくピースメインなんだろう」
「しかしこれは余りにも……」
「仕方ないだろう。あそこの船長も大物みたいだしね、ヒーッヒッヒッヒ」
「そ、それはどういう?」
「これも全ては”D”の意志なのかね…」
ドクトリーヌは空を見上げながら呟いた。
懸賞金4000万 ”麦わらのルフィ”
懸賞金1億5000万 ”白狐のラーズ”
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