〜〜ナミside〜〜
目の前で起きた現実は、とても信じられるものじゃなかった。ベルメールさんを助けようとしたラーズ。
でも、そのラーズも海賊にやられてしまった。そして私はラーズの方を向く、銃口に対して無力だった。
「やめてぇーーーー!!!」
叫ぶ事しか出来ない。発射された弾丸はそのままラーズを撃ち抜いた。肩から凄い血が出てる。もう、
涙を我慢出来なかった。
「ラーズ!ラーズー!!」
駆け寄ろうとしたが、二人に止められた。
「このままじゃラーズが死んじゃう!!」
「分かってる!でもアンタがあそこに行っても死ぬだけ!ラーズは私達の為にあんなになってるの!」
「でも…でも!」
ベルメールさんは悔しそうに顔を歪めている。ノジコもいつの間にか泣いていた。
「ラーズは多分、村の誰よりも強い。でも、あの海賊はそれより遥かに強いんだ。それでもアイツは逃げない。何でか分かる、ナミ?」
こっちを向くベルメールさん。分からない。分からない分からない分からない分からない。
「きっとナミ、アンタのためだよ。」
「グスッ、私?」
涙混じりに聞き返す。
「アイツの夢は聞いた事あるんだろ?ラーズにとって大切な人ってのはきっとアンタの事なんだよ。
さっき私を助けたのだって、私を失って悲しむナミを見たくなかったんだって思うわよ。
とにかくアンタを守りたいんだよ。だからさっきも「来るな」って言われたでしょ。
今ナミが傷ついたら、ラーズはきっと後悔する。」
ようやく理解した、ラーズの考え。でも、ラーズが傷付いてるのを見る事しか出来ないのは辛い。
すると、あの海賊はラーズを持ち上げ始めていた。
「運が良ければ生き残れるかもな。」
海賊はラーズを海に向かって投げる、投げ捨てると言った。ただでさえ大ケガをしているラーズ。
あんな状態で海に投げ出されたら…
「止めてーー!!ラーズー!!」
私の叫びも届かず、ラーズはうみに投げられた。その瞬間、涙が止まってしまった。
悲しかったハズなのに
苦しかったハズなのに
辛かったハズなのに
私は遂に現実を受け入れられなくなった。思考がほぼ停止してしまった。
--ラーズが死んだ--
私の心はそう判断してしまった。もう会えない。笑った顔も、ちょっと怒った顔も、もう見れない。
…そして、ベルメールさんも殺された。もう私は泣けなかった。心が空っぽになってしまった。
村の人が海賊と戦ってる中、何も出来なかった。
そのまま私は海賊達に連れられて行った。
〜〜???side〜〜
「んっ?あれは?」
見張りの男は海上に浮かぶものを発見した。
「あれはまさか人間?遭難でもしたか?どの道報告だな。」
見張りの男はマストから降り、報告に行く。
「海上にて遭難者と見られる人物を発見!いそぎ向かい、保護しようと思います。」
「任せたぞ。」
男の船が遭難者に近づき、ソレを引き上げる。改めて見るとその遭難者は全身に傷があった。
奴隷だったのだろうか?特に肩の銃創が不味い。
「とにかく治療だ!急げ!このままでは死んでしまう!」
迅速に応急手当をしていく。この分だと、助かったとしても意識が戻るまでに時間が掛かりそうだ。
ひとまず報告だな。
「先程の件ですが、遭難者は全身に傷があり、意識不明の重体。二〜三日が峠と見られています。」
「…そうか。何かあったら報告しろ。進路はこのままじゃ。」
「はっ!失礼しました。」
見張りをしていた男は敬礼をして去って行く。
「こんな時代じゃ。一人でも多くに生きて貰いたいんじゃがな。」
小さな呟きは、波と風の音に流されて行った。
船は真っ直ぐ進んで行く。目的地は
--海軍本部--