〜〜ウソップside〜〜
夜が明けて間もなく、メリー号の強化は完了した。あちこちツギハギになっちまったけどメリー号には
今からまた頑張って貰わないとな!
んで、そろそろ出航の時間になろうとしているんだが…ルフィが森から戻ってこない。
夜にラーズと海賊をやっつけてから、森にカブトムシ捕りに行ったらしいが。
「おいラーズ、ルフィが戻ってこねェぞ」
「その内戻ってくるんじゃな〜い?」
…ラーズは幸せそうな顔してのほほんとしている。そんなにナミと膝枕の約束したのが嬉しいのか?
きっとそうなんだろうな。その証拠に、尻尾が未だ嘗て無いほど揺れている。しかも九本全部。
お前は幸せかもしれないけど、その尻尾のせいで砂埃舞ってるから!ゲホッゲホッ。
「…今のお前に聞いたおれがバカだった」
「ん〜そうだな〜」
おれのイヤミに一言もツッこまないなんて!!本格的に壊れやがった。しばらく放置しておこう。
「お〜〜い!やったぞ〜!!」
声の方を向くとルフィが走って戻って来た。時間ピッタリに戻ってくるなんてルフィらしくねェぞ。
「ヘラクレス捕まえた〜!!」
右手にヘラクレスを掲げ、爽やかに走ってくる…ルフィもいい感じに壊れてるな。いや、コイツはこれが基本か。
ルフィはパワーアップしたメリー号を見て驚いていた。
「うわっ!すっげェな〜〜!!」
「ゴーイングメリー号・フライングモデルだ!!」
目を輝かせたルフィに説明をする。コイツはメリー号の完成度を高く評価してるみたいだな。
「飛べそーー!!」
「だろう!?」
興奮するルフィを尻目に、ナミは溜息をついていた。
「…私あれ見ると不安になるんだけど」
「まァそうだな。鶏よりハトの方がまだ飛べそうな…」
「それ以前の問題でしょ!バカね!!」
ゾロの発言に青筋立ててツッこむナミ。お前も色々と大変だな。
「おっさんありがとうな船」
「礼ならあいつらに言え」
ルフィがおやっさんに礼を言うと、おやっさんは猿山連合軍を指差した。
「ああ!ありがとうおめェら!ヘラクレスやるよ!!」
「ホントかよ!?いいのか!?お前メチャクチャいい奴じゃねェか!!」
猿山連合軍はざわめいていた…そんなにヘラクレス欲しかったのか?
それはいいとして、おれも船に乗り込むか。いつの間にかみんな乗り込んでたし。
こうして準備も整い、空島へ向かう態勢は完璧だ。
出発する寸前におやっさんがルフィに話しかけてきた。
「小僧!おれァここでお別れだ。だが一つだけ、これだけは間違いねェことだ」
ルフィもおれも黙って話を聞いている。
「黄金郷も、空島も、過去誰一人”無い”と証明できた奴ァいねェ」
「うん」
「バカげた理屈だと人は笑うだろうが、結構じゃねェか!それでこそ」
「”ロマン”だ!!!」
おやっさんの言葉はおれ達の胸に響いた。”ロマン”か…なんか良いな。
「金を…ありがとよ」
「ししし。じゃあなおっさん!」
おやっさんもルフィも笑っていた。おやっさん!必ず黄金郷を見つけてくるぜ!!
〜〜ロビンside〜〜
船は突き上げる海流に向けて順調に進んでるみたいだけど…コックさんは肩を落として露骨に落ち込んでるし、
ラーズはすでにやりきった顔をしてるわね。この二人大丈夫かしら?
コックさんはともかくラーズは心配ね。
「園長!マズイっす!南西より”夜”が来てます!積帝雲です!!」
「よしっ!順調にきてるな。麦わらァ!今から波が高くなるぞ!振り落とされるなよ!!」
お猿さん達が慌ただしくなったと思ったら、急に船体が揺れ始めたわ。
「突き上げる海流の前兆だ!気をつけろ!」
お猿さんが叫んでいる。空島はあの積帝雲にあるのかしら?
「航海士さん!記録指針はどう!?」
「…!!ずっとあの雲を指してる!」
やっぱりあの雲で間違いないみたいね。
「麦わらァ!今からあの渦の軌道に船を連れて行く!流れに乗れ!逆らわずに中心まで行きゃなる様になる!」
「何よこの大渦!?飲み込まれるなんて聞いてないわよ!?」
「やめだァ!引き返そう!帰らせてくれェ!!」
確かにこの渦はとんでもない大きさね。この船で耐え切れるのかしら?
航海士さんと長鼻くんはパニックに陥っているわ。
「はっ!大丈夫だ!レディーはおれが守る!!」
「観念しろウソップ…船長がすでにノリノリだ」
コックさんはようやく元に戻ったみたいね。剣士さんは…諦めたのかしら?
「兄さん!そろそろ戻って来て下さ〜い!!」
「いや〜大きな渦だな〜。はは〜ん」
「……」
王女様は何とかラーズを現実に戻そうとしてるけどダメみたいね。
船医さんは目がキラキラしてるけど、何か楽しい想像でもしてるの?
にしてもラーズはこの渦見ても変わらないのね。凄い精神力だわ。
「行くぞーーー!空島ーーー!!!」
船長さんも変わらず元気にやってるわね。見てて飽きないわ。
そうしていると目の前を大きな海王類が叫び声を上げながら…見事に渦の中に消えていった。
あのサイズがダメなら私達も戻るのは不可能ね。
「じゃあお前ら!後は自力で何とか頑張れよ〜!!」
「送ってくれてありがとな〜!!」
お猿さん達が遠くに離れていく中、船長さんは元気に手を振っていた。
あら、いよいよ夜になったわね。どんどん渦に引き寄せられてるわ。
「引き返そうルフィ!こんな渦じゃ死んじまうぞ!?空島なんて夢のまた夢だ!!」
「そうよルフィ!やっぱり私も無理だと思うわ!」
「私もそう思います!!」
「夢のまた夢…そうだな」
長鼻くんと航海士さん、王女様が必死に説得しようとしてる。けど…
「夢のまた夢の島!!こんな大冒険、逃したら一生後悔すんぞ!!」
船長さんには無駄みたいね。目が輝いてるもの。
「ホラ、おめェらが無駄な抵抗してる間に…」
「まに?何だよゾロ」
「大渦にのまれる」
「ぎゃあああああああ!!!………あ?」
長鼻くんと同様に、私も渦にのまれたと思ったのだけど…いきなり静かになったわね。
「航海士さん…コレは?」
「消えたんじゃない…もう始まってるんだわ。渦は海底からかき消されただけ…」
「待ァてェ〜〜!追いつめたぞ麦わらァ!」
あら、こんなとこに誰かしら?見ると遠くに、丸太の船に乗った海賊がこちらに向かっていた。
船長さんと剣士さん、航海士さんは知ってるみたいね。町で会ったのかしら?
それにしても変な笑い方ね。口の周りはヒゲだらけだし。
「おめェの首は1億2000万!海賊狩りのゾロは7000万!それからニコ・ロビンには7900万だァ!
そして白狐ォォ!!貴様には1億8000万が懸かってんだよ!!覚悟しろォ!」
私の懸賞金まで出回ってるなんて…どうやら政府に居場所がバレてしまったみたいね。
船長さんと剣士さんは嬉しそうにヘラヘラしてるわ。ラーズは…さっきと全然変わってないわね。
彼には懸賞金なんて関係ないのかしら?
「喜ぶなそこ!!」
航海士さんが怒ってるけど、多分無駄ね。
「おい待ておれは?おれは!?おれのもあるだろウソップ!?」
「ねえ」
「もっとよく見ろ!絶対あるだろ!?」
「ねえ」
コックさんは自分に懸賞金が懸かってないのが不満みたいね。剣士さんに先を越されて悔しいのかしら?
ヒゲの人と話している内に船体が段々浮き上がって来てるわ。もしかしてこれが!?
「全員!船体にしがみつくか船室へ!」
真面目になったコックさんが叫ぶ。
「ぎゃあああああ!!海が吹き飛ぶぞーー!!」
長鼻くんは元気ね。
すると、海の下から爆発的な勢いで海が吹き出してきた。これが突き上げる海流…想像を遥かに超えてるわね。
さっきのヒゲの人の船は大丈夫かしら?
空に向かって突き進んでいる海流に乗り、船はどんどん上に向かっている。
「これで空島に行けるぞーー!!」
船長さんは船首にしがみついて楽しんでいるみたいね。
「いや…ちょっと待て。船体が浮き始めている!このままじゃハジキ飛ばされるぞ!!」
コックさんの言うとおり、段々船が浮き始めたわ。この分だとマズイわね。上から色んなモノが降って来てるわ。
「でもどうすんだよ!おれ達は爆発の勢いで昇ってるだけだぞ!今更…」
長鼻くんが叫んでいると、
「帆を張って!今すぐ!!コレは立ち昇る海流なの!下から気流もあるし、私に任せて!!」
こんな時の航海士さんは頼もしいわね。ラーズは…これでもまだヘラヘラしてるわね。
今のこの状況、ちゃんと理解してるのかしら?
「野郎共!ナミさんの指示に従え!今すぐ従え!!」
そうして航海士さんの指示の元に動いていると…船が空を飛んだ。こんな事は今までで初めてね。
「すげェ!船が空を飛んだぞーー!!」
「マジかよ!?」
「ウオオオ!!」
「ナミさん素敵だー!!」
「凄いですー!!」
「へェ」
「やった…」
「おお〜」
皆それぞれに感動してるみたい。ラーズのあれは正常なのかしら?
「ナミ!もうすぐ空島に着くのか!?」
「あるとすればあの雲の向こう側よ!」
船長さんは楽しくて仕方がないみたい。でもこんな冒険も悪くないわね。
「積帝雲に突っ込むぞォーーー!!」
「「「うおおおォォオオ!!!」」」
船長さんの掛け声に、長鼻くんと船医さん、コックさんが反応した。
さて、空の上はどうなってるのかしら?私も楽しみだわ。