小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ラーズside〜〜

「んで、敵の強さも規模も分からない、と」

「非常に申し訳ない」

 俺達は神の島の隅の方、メリー号を泊めれる場所の近くでキャンプをして夜を明かす事になったのだが…俺はナミに
 説教を受け、地面に正座している。他のみんなは夕飯を食べているのに。

「折角敵の情報を知るチャンスだったのに…」

「とってもごめんなさい」

 昼間に戦った相手から情報を引き出す前に倒してしまったので全力で非難されている。


「ひとまずココが黄金郷の島って分かっただけでもいいんじゃない?」

 ロビンがニコニコしながら助け舟を出してくる。さっきの事がよっぽど嬉しかったんだな。

 昼間この島を探索してる時に幾つか遺跡らしきモノを見つけた事と、この島に歴史の本文がある事を
 伝えたんだが…ロビンのテンションが異常に上がった。まさか鼻歌を歌うとは…


「まぁ今更言っても仕方ないわね」

 ナミは諦めたのか、説教タイムは終了した。あっ、足が痺れてる…




「んで”心網”ってのは何なんだ?」

「こっちの動きが読まれるってことか?」

 ゾロとサンジが聞いてくる。

「俺も正確には説明出来んが、相手の気配をより強く感じる事で視界に入らない敵の位置や数を知る事が可能だ。
 それに相手が次に何をしてくるかも先読みする事が出来る」 

「おいおい、空島の奴らは化け物だな」

 サンジが唸っている。そりゃ普通なら攻撃を読まれたら勝ち目ないからな。

「ん?じゃあテメエはどうやって敵に勝ったんだ?」

 疑問を抱くゾロ。

「俺の移動速度は心網でも読み切れないからな」

「何だそりゃ?相変わらずデタラメな野郎だ」

「それはともかく、一対一は少し厳しいかもしれないから十分気をつけろよ。あっ、ちなみにウチで似た様な
 技を使えるのが一人だけ居るぞ」

 どうせお前だろ、的な二人の視線を浴びる。ところがどっこい俺も使えないんだよね。



「そいつは…」
「キャプテ〜〜〜ン・ウソ〜〜ップだ!!」

 ウソップが待ってましたとばかりに登場。ゾロとサンジは目が点になっている。
 余りにも予想外だったんだろうな。


「…お前が?」
「冗談だろう?」

「おいそこ!またウソかよ、みたいな視線はやめたまえ!」

「ゾロもサンジも認めたくない気持ちは分かるが事実だ。俺もコレは出来ないからな。今のとこ敵の攻撃を
 少しでも読めるのはウソップだけだ」

「はっはっはっ。俺が今までどれだけラーズに殺されそうになった事か…全てはこの力のために!」

 ウソップがやたら偉そうにしている。こんな時くらいはいいか。ウソップも完全ではないが
 多少は読めるみたいだしな。「剃」もいい感じに成長してるし立派になったもんだ。


「まァとにかく敵の攻撃が読めるのはあっちだけじゃないって事だ。お前らものんびりしてると
 ウソップに負ける日が来るかもな」

 軽い挑発を込めてゾロとサンジを見る。

「へェ…」
「おもしれェ…」

 これで馬鹿二人は今後更に気合が入るだろう。


「「おいウソップ、ちょっと付き合えや」」

「あん?何でゾロは刀抜いてサンジは蹴りの構えして…ギャアーーー!!」

 ウソップは馬鹿二人に攻撃されていた…あいつホントに見聞色の覇気成長したな。けっこうマジに
 二人が攻撃してるみたいだけど当たってねェし。そう考えると今のウソップの「剃」と相性ばっちしだな。
 覇気で攻撃を先読みして高速で移動して狙撃…かなり強い気がする。


「ラーズテメエ覚えとけよーーー!!ってうおっ!?ゾロ!せめて峰打ちにしてくれーーー!」

 ウソップが何やら言っているが気にしない。




「見事なものですね」

 ビビが話しかけてくる。

「おい、俺を策士みたいに言うな。アイツらに事実を教えただけだ」

「なら私も鍛えて下さいね。一味の力になりたいんですから」

「黄金探してからだな。そっからは悲鳴上げるくらい鍛えてやるから安心しろ」

「…出来れば優しくお願いします」

 ビビは丁寧に頭を下げていた。普段のウソップの感じを想像したのか?さすがにあんなにエグい事はしないぞ。



 そうしてウソップ達三人の戯れも落ち着き、本格的な夜がやってきた。何気にウソップの奴頑張って
 ゾロ達の攻撃避け続けたみたいだな。
 
 メシも食って落ち着いたし残るは…

「さて、夜も更けたわ。用の無い火は消さなくちゃ敵に位置を知らせるだけよ」

 ロビンの言葉に俺とルフィ・ウソップは大きな溜息をつく。

「バカな事を…聞いたかラーズ、ウソップ。あんな事言ってらァ…火を消すってよ」

「仕方ねェさルフィ、そう言ってやるな。ロビンは今まで闇に生きてきた女…知らねェだけだ」

「これから教えていけばいいだろ?こんなに楽しい事なら知っておくべきだ」

「?……どういう事?」

 ロビンは本当に分からないみたいだ。そりゃウソップの言うとおり仕方ないな。


「キャンプファイヤーするだろうがよォ普通!!」

「キャンプの夜は、例えこの命尽き果てようともキャンプファイヤーだけはしたいのが人道!!」

 ルフィとウソップはロビンに向かって魂の叫びを放つ。ロビンは見事に困惑してるみたいだ。
 オロオロしてるロビンなんて珍しい。なんか面白くなってきたぞ。


「バカはあんたらよ!」

 ナミが青筋立てながらツッコむ。違うぞナミ!固定概念を脱ぎ去るんだ!!

「あんたらこの森がどんだけ危険か分かってるの!?」

「知らん」

 腰に手を当て堂々と宣言するルフィ。さすがウチの船長だ! 

「勝手に神の島に入ってるし敵もいるみたいだし…それにこの森には猛獣や化け物だっているかも
 しれないのよ!そんなのが襲って来たらどうすんの!?」

「オイ!ルフィ!!」

 二人の会話にゾロが混ざる。

「組み木はこんなもんか?」

「準備オッケーだぞ」

 サンジまでやる気まんまんだ。


「その木…いつの間に?」

「さっき切ってきた。ちょうどいい感じの木があって良かったよ」

 ゾロとサンジが組んだ木はあらかじめ俺が伐採してたものだ。

「ラーズもやる気まんまんなの!?」

「そりゃ男とキャンプファイヤーは大事な儀式だからな」

 あっさり俺は答える。


「ゴメン、言ってる事が全く理解出来ないわ」

「大丈夫だってナミさん。むしろ猛獣は火が恐ェんだから」

 サンジが松明を持ちながら説得しようとするが、

「後ろ後ろ!もうなんかいるわよ!!」

 言われてサンジの後ろを見ると、沢山の狼みたいなのがいた。火に寄ってくる獣も珍しいな。

「おぅ!お前達もキャンプファイヤーするか!?」

「ウオッウオーー!!」

 この狼達もノリノリみたいだ。

「ってな訳でナミ、諦めてキャンプファイヤーを満喫しろ」

「ハァ…何かあったらちゃんと守ってね」

「それは任せておけ」

 こうしてナミをなだめるのにも成功し、ルフィの掛け声を待つ。




「キャンプファイヤーの始まりだァーー!!!」




 そして飲んだり踊ったりのお祭りが始まった。ルフィやチョッパー、サンジは狼達と組み木の周りを
 回りながら踊っている。ナミとビビはそれを見ながらひたすら乾杯している。ウソップはいつの間にか
 樽に布を張って太鼓代わりにしていた。ゾロはその景色を酒瓶片手に眺めている。


「こんなのは初めてか?」

 ゾロと同じく、近くの木の根に腰掛けてキャンプファイヤーを眺めていたロビンに話しかける。

「そうね、今までこんな事した事なかったから」

「これからまだまだ幾らでも楽しい事なんて出てくるぞ」

「そうね…期待しているわ」

 ロビンは笑っていた。これなら随分と心の傷も癒えてきたかな?




「ところで」

「ん?」

「さっきから航海士さんと妹さんがこっちを見てるけどいいのかしら?」

 ……見ると般若の様な顔のナミと、ニヤニヤしてるビビがいた。



「ちょっと待ちたまえナミ君。私は一味のメンタルケアをしていてだな…」

「じゃあ私のこの怒りもケアして貰おうかしら」

「ナミさんはご立腹ですよ、兄さん?」

 なんかお前らチームワーク良くないか?


「まぁまぁ、お、落ち着きたまえ。ナミ君、何故天候棒を出しているのだね?」

「それはねラーズ君、浮気者を成敗するためなんデスよ」

 ナミはこちらに向かって走りながら天候棒を振り回してきた。何でこうなるんだよ!?


「待て!俺は神に誓って浮気などしていない!!」

「問答無用!悪・即・斬!!」

「ヒィッ!お前は俺の愛を疑うのか!?こんなに愛してるのにー!!」

「走りながら恥ずかしい事言うな〜!!」

「じゃあ追って来ないでくれ!いや、俺への愛としては追われたいんだが!!」

「何訳の分からない事言ってんのよ〜!!」




 こうしてナミと二人で走り回りながら、結果的にキャンプファイヤーをより盛り上げる事になった。






























「……」

「如何なされました”神”?」

「いや、青海人は不思議なものだな」

「はっ?」

「神ですら奴等の行動が読めぬとは…」

「そ、それほどですか!?何とも恐ろしいですね」

「あぁ、この私をこうも警戒させるとは。侮れんな」





   

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