小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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 〜〜ラーズside〜〜

 目が覚めてから十日が経った。起きてからは「生命帰還」を強く意識して行ったおかげか、
 傷はほとんど癒え体もきっちり動かせる様になった。

「ラーズよ。体の調子はどうじゃ?」

「もうほとんど問題ないです。」

「あの傷がもう問題ない、か。」

 ガープさんは小さな声で何か言っていた。

「?どうかしましたか?」

「いや、気にするな。それより今からラーズに会って欲しい奴がおるんじゃが。」

「会って欲しい人、ですが。お世話になってますし大丈夫ですよ。」

「ならば付いて来てくれ。」

 そのままガープさんの後を付いて行く。
 少し歩くと一際立派なドアが見えてきた。

「センゴク、わしじゃ入るぞ。」

 センゴク!?あの元帥!?何か大仏に変身してた海軍のトップだよな?
 そんなお偉いさんが俺なんかに何の用だろう?
 ガープさんはノックもせずにドアを開ける。

「全く貴様は…。いい加減ノックを覚えろガープ。」

 部屋の奥から声が聞こえた。椅子に座ったままこちらを見ている。本物のセンゴク元帥だ。

「ぶわっはっはっ。細かい事は気にするな。」

「…。まぁ良い。で、その少年か?」

 俺を見る視線が鋭い。流石世界の海軍を束ねているだけはある。

「初めまして。ラーズと言います。今回は海軍の方々に助けて頂き感謝しています。」

「ふむ、ガープと違い礼儀はしっかりしておるな。私は海軍元帥のセンゴクだ。さて、ラーズ。
 幾つか君に聞きたい事があるがいいか?」

 まぁ当然だろうな。

「はい、答えられる事は全て答えます。」

「うむ。では一つ目だが、君達の船を襲った海賊の事は分かるか?」

「…いえ、分かりません。海賊に出会ったのも初めてなので。」

「成る程。二つ目だが、君の船で君以外の生き残りはいるかね?」

「…すみません。俺は早くに海に投げ出されたので他の人の事は…。」

「そうか…。では最後の質問だ。」

 その瞬間、周りの空気が重くなった気がした。






「君は何者だ?」






 …!?心臓の鼓動が速くなる。しかし全てを話しても到底理解出来ないだろう。
 ここは修行の事を正直に話すしかない。

「…俺は小さい頃から一人で特訓や修行をしていました。とは言っても内容は走り込みや筋トレなど、
 大したものではありません。ただ、「六式」も独学で訓練し、「剃」だけは使えます。
 それから多少「生命帰還」の心得もあります。」

 二人は少なからず驚いていた。

「そう言う事か。道理で傷の治りも早い訳じゃわい。」

 ガープさんは頷いている。

「ラーズよ。何故そんな事をしていたのだ?」

 センゴクさんは鋭い視線を崩さない。そりゃそうだよな。普通の子供とは違い過ぎる。

「…俺には大切な人がいます。その人を守りたくて努力してました。力がないと、
 大切な人どころか自分の意思すら守れません。」

 真っ直ぐセンゴクさんを見つめる。これだけは何があっても譲れない。

「そうか…。疑う様な真似をして悪かったな。」

 そう言ったセンゴクさんの雰囲気は柔らかくなっていた。少なくとも悪い人間ではないと考えたのか。

「ところでラーズはこれからどうするつもりなのだ?」

 あっ…全然考えてなかった。ここはグランドラインのど真ん中だし、帰る方法が全く浮かばない。
 一人考え込んでいると、センゴクさんが口を開いた。

「君さえ良ければ海軍に入って見ないか?」

 …これは予想外だった。ど、ど、ど、どうしよう。
 突然の事に迷う。

「ここには実力者も沢山いる。独りで鍛錬するよりは有益だと思うが、無理強いはしない。
 決めるのは君自身だ。」

 確かにここで揉まれれば今より遥かに強くなれるだろう。しかし…

「俺なんかが、良いんですか?」

「海軍は常に人材を欲している。それに君の”大切な人を守りたい”。その強い意志は
 我々にも通じるものがある。どうだ?」

「わしも賛成じゃぞ。」

 海軍のトップ二人に言われては、断る事も出来ない。

「…分かりました。では今日から海軍としてお世話になります。」

「こちらこそ、宜しく頼むぞ。」

「ならセンゴクよ、わしがラーズを預かってもよいか?」

「貴様が教えると碌な事にならん気がするが…。ラーズはそれでいいか?」

 ガープさんは純粋な身体能力で勝負している。能力者でない俺もその方が都合が良い。

「はい!お願いします。」

「うむ、よい返事じゃ。ならばラーズよ。今からわしと組手じゃ。お前の実力を知っておきたいからのぅ。」

 ごもっとも。

「私も時間があるし、ラーズの実力を見てみようか。」

 …海軍って暇なのか?そんな失礼な事を思いつつ三人で敷地内の訓練所に向かう。







 訓練所にてガープさんと向き合う。少し離れた場所でセンゴクさんが観戦している。
 しかし海軍本部って凄いな。来る途中サッカー場並の広さの訓練所が沢山あった。

「さぁいつでも掛かって来い。出し惜しみは無しじゃぞ。」

 勿論全力で行くさ。
 
 前傾姿勢になり、全力の「剃」で背後に回る。

「…!?」
「なっ!?」

 二人とも驚いていた。まぁ見た目子供だしね。素早く背中に蹴りを放つ。

「甘いわ!」

 動揺していたにも関わらず、恐ろしく速い反応で振り向きガードする。

「くっ!」

 なんつー反応だ。あのタイミングで防がれるなんて。流石は海軍の英雄。
 掴まらない様にすぐさま距離を空ける。

「なかなかの速さじゃな。さて、次はどうくる?」

 ガープさんは全然余裕だ。

「まだ…。これからです!」

 今度はフェイントを混ぜながら様々な角度から攻撃を仕掛ける。しかし、ただの一発も入らない。
 実戦経験の差も露骨に浮かんでいた。

「どうした?これで終わりか?速さはまずまずじゃが力が足りんな。それでは全然効かんぞ。」

 アーロンと同じ事を言われた。

 まだだ、まだ集中力が足りない。


 もっと硬く!
 
 もっと鋭く!!
 
 もっと強く!!! 


 イメージをより強くし、拳を握る。もっとだ。もっと!

 集中が高まった瞬間、拳に力が宿った気がした。
 これなら…!

 見るとガープさんがさっきより驚いた顔をしていた。
 構わず全力で懐に飛び込み拳を振るう。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うぬぅ!?」

 しかし、渾身の一撃はまたも左腕でガードされる。これでも駄目なのか…。内心へこんでいると、
 いつの間にかガープさんが戦闘態勢を解いていた。

「ラーズよ。今のは前から使えるのか?」

 今の?最後のパンチの事か?

「いえ。ガープさんに何とか一撃入れたくて拳に集中しただけですが。確かに初めての感覚でした。
 なんか拳が硬くなった様な強くなった様な…。何かおかしかったですか?」

「無意識下での発動…。一度死の淵まで行って潜在能力が開花したのか…?」

 ガープさんは何かブツブツ呟いている様だが聞こえない。その様子に戸惑っていると、
 いつの間にかセンゴクさんが近くまで来ていた。

「ラーズよそこまでだ。…ところでラーズは他の「六式」はどのぐらい使えるのだ?」

「えっと「月歩」は少し浮くくらいで「嵐脚」はまだ遠くまで飛ばせません。「鉄塊」や「紙絵」は
 相手がいなかったので覚えてません。「指銃」も使えないです…。」

 自分で言ってて改めて自分の力の無さを思い知らされた。やはりまだまだだな。

「分かった。では改めて、今日より海軍の一員として頑張って貰う。」

「はい!これから宜しくお願いします!」

「さて、住居だが私の部下に案内させよう。軍服も支給するから少し待ってくれ。」

 そう言ってセンゴクさんは電伝虫を取り出し、どこかに連絡している。

「ラーズよ。明日からはわしの下でビシバシ鍛えてやるからな。楽しみにしておれ!」

 強くなれるなら大歓迎だ。

「頑張ります!」

 などど、ガープさんと話している内に誰かがやってきた。恐らく案内の人だろう。

「では失礼します。センゴク元帥。ガープ中将。」

 挨拶をして、案内の人に付いて行く。一刻も早く強くなる為にも明日からまた
 気合を入れ直して頑張ろう!そう考えながら訓練所を後にした。


 〜〜センゴクside〜〜

 ガープが連れて来たラーズという少年。どれ程のものかとのんびり観戦していたらいきなり驚かされた。
 あの年であの速さは異常だ。どれだけ鍛錬を重ねてきたのか。あの子の意志は本物だった。
 …まぁ力の無さはこれから次第だろう。しかし何より驚いたのは…

「ガープ。最後のラーズの一撃だが…。」

「あぁ間違いなく”武装色の覇気”じゃった。しかもかなり強力な、な。」

 言いながらガープは左腕を見せた。ガードしたであろう箇所が大きく腫れている。

「意識して使った訳ではないみたいじゃが…。これからが楽しみじゃわい!」

 ガープは笑っていた。期待の新人が現れて嬉しそうだ。

「まだまだ荒削りじゃがな。」

 まぁ独りでやってきたにしては十分だろう。これからは更に伸びるに違いない。
 私としても非常に楽しみだ。

「ところでセンゴク。ラーズの階級はどうする?」

「そうだな。あれなら鍛えれば直ぐに上って来るだろう。年齢も年齢だし、伍長くらいからで良いだろう。」

「そうじゃな。ラーズにはわしから伝えておこう。」
 
「何かあれば私も力になろう。」

「なんじゃセンゴク。お前も楽しみなのか?」

「久し振りに原石を見たからな。きっと輝くぞ。…貴様が上司でなければ。」

「一言多いぞ。全く…。んじゃわしは医務室に行って来る。ラーズに腫れた腕を見せる訳にはいかんからな。」

 そう言ってガープは去って行った。

「私も期待しているぞ。ラーズ。」

 一人呟いて私もその場を去った。




 〜〜??side〜〜


 その二人の組手をたまたま通り掛かった男が見ていた。

「あらら、何か面白い事になってきたねぇ。」


 その男は気だるそうに喋っていた。

 その男はいつの間にかその場から消えていた。

 その男は青いシャツに白いベストを着ていた。

 その男の背負うは




  「だらけきった正義」





  −−これより以後、少年は加速的に進化して行く−−




-7-
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