〜〜ビビside〜〜
Mr・ブシドーと遺跡を歩いていると、ルフィさんを見つけた。
「ルフィさ〜ん!」
「おう!ビビにゾロ!お前達も着いてたんだな」
ルフィさんは少し服が汚れていた。別れた後に戦ってたのかしら?
「私もいるわ」
いきなり後ろからロビンさんに声をかけられた…脅かさないでよもう!でも、これでみんな遺跡に着いたのね。
「あら?船医さんは?」
「トニー君なら「お〜〜い!」…あそこです」
トニー君はホーリーと一緒にノラの頭に乗っていた。みんな仲良しになったみたいね。
「また大蛇だー!でも何でチョッパーがアイツに乗ってんだ!?あの犬はなんだ!?」
まぁルフィさんも驚くよね。最初は私だって蛇と話せるなんて思ってなかったのだから。
「…いつの間に仲良くなったの?流石に呆れるわね」
ロビンさんも驚いてノラを見ていた。
「おれもココまでアイツの頭に乗ってきたからな」
「ずりーぞ!おれも乗せてくれーー!」
「ジュラ〜〜」
そうしてルフィさんもノラに乗った。ホーリーとはすぐ仲良くなったみたいで、ノラの上で遊んでいる。
「ところでロビンさん。遺跡に黄金はありました?」
「気になる事はあったのだけど…後でラーズにも調べて貰いたい事があるわ」
って事は何か見つけたのかしら?
「おそらくこの辺りが黄金都市シャンドラよ。この下の雲のせいで隠れてるけど、下には嘗て栄えただろう
都市の名残があるわ」
ならココがノラの故郷なの!?ノラに向かって叫ぶ。
「ノラーー!アナタの故郷はこの下にあるみたいよ!!」
「ジュララ!?」
「今から下に行ける様にしてみるからちょっと待っててね〜!」
「ジュラー!」
私にはノラの言葉は分からないけど、何となく通じ合ってる気がした。何だか喜んでるみたいだし。
「じゃあMr・ブシドー。この辺りの雲を斬ってくれない?」
「あん?何でおれが?」
「ノラに乗せて来て貰ったのは誰だったっけ?」
「…少し待ってろ。あのサイズだから少し時間がかかる」
そう言ってMr・ブシドーは下に向かって雲を斬り始めた。少しはノラに恩を感じてるのね。
「…ところで、さっきから不思議に思ってるのだけど」
ロビンさんが顎に手を当てたまま話し始めた。何かあるのかしら?
「私達探索チームが全員ココにいるのに、森から爆発の様な音が聞こえるのはおかしくない?」
…そういえば確かに。ココに来るまでに出て来た敵はノラが倒してくれたし、神兵が味方同士で戦うなんて事は
ないし。どうなってるの?
「妹さん達は”神”と名乗る相手に出会った?」
「いえ…少なくても私とトニー君は会ってないわ。Mr・ブシドーは?」
「おれも会ってねェぞ。出てきたら戦ってみてェが」
何でそんなに戦いが好きなのかしら?Mr・ブシドーは不思議ね。
「多分だけど、船長さんも会ってないわ。もし会ってたら言ってくるでしょうし。ココに来る途中から一緒だったけど、
神兵ばっかりでつまらなそうにしてたわ」
となると今戦ってるのは誰と誰?
「…もしかしたら神と呼ばれるエネルは船に向かったんじゃないかしら?」
「!?」
そうかもしれない。多分神兵でまだ動ける人はほとんどいないハズだし、エネルが船を攻撃してる可能性は大きい。
だとすると船は大丈夫かな?兄さんもいるから滅多な事は起きないかもしれないけど…
「となると、森から聞こえるのはエネルとラーズが戦ってる音かもしれねェな。どんな奴かは知らねェが、
神なんて言って空島の住人に恐れられてるくらいだから相当な実力なんだろ」
Mr・ブシドーの考えに納得する。兄さんも凄く強いけど、やっぱり心配だわ。
「…ラーズはエネルが自分のとこに来る事まで予想してたのかもね。最初に神の島に入ったのも彼だし、
神兵を最初に倒したのも彼。エネルの標的になってもおかしくないわ」
兄さんならそこまで考えてたかも。
「それでも…例え相手が神様でも、兄さんならきっとやっつけてくれますよ!」
私は兄さんを信じている!これまでも兄さんは、いつだって困難を乗り越えてきたんだから。
「そうね…私も信じてるわ」
ロビンさんも同じ気持ちなんだろう。
「アイツなら問題ねェだろ」
Mr・ブシドーはあまり心配してないみたい。いつも一緒に稽古してる彼だからこそ、兄さんを信じているんだ。
頑張って!兄さん!!絶対負けないでね!
〜〜ラーズside〜〜
お互いの攻撃で森が、地形が変わっていく。先程まで辺りは森だったが、気がつけば木々は薙ぎ倒され平地が
広がってきていた。これじゃ小規模の戦争クラスだな。
「ふぅ、アンタのエネルギーに底はないのか?こんだけ攻撃しておいて」
少し距離が開いた時に話しかける。エネルは自分の攻撃が当たらない事に顔を歪ませていた。
「黙れ!攻撃さえ当たれば貴様など!神の裁き!!」
「おっと」
エネルの雷攻撃を再びかわす。こっちも一閃やら焔弾、炎で固めた手足で攻撃してるが中々当たらない。
直撃しそうな遠距離攻撃はエネルが発する電光(カリ)でかき消される。
最初の一撃以外はお互い避けたり防いだりしている。エネルは、意外にも棒術がそれなりで、俺の攻撃も
上手く捌かれている。能力者になる前から使ってたのか?
「6000万V…雷流(ジャムブウル)!!」
「ちっ!焔弾ァ!!」
飛んで来た雷の龍に下から弾をぶつけ、かろうじて上空に軌道を逸らす。俺の技の熱量じゃ相打ちすら出来ない。
何とか方向を変えるのが精一杯だ。雷の龍は空に向かって飛んで行った。
「全く、ここまで攻撃が当たらないとは…貴様も”心網”を使えるのか?」
「いいや、使えれば便利なんだがな。生憎俺は使えないぞ。大体アンタの攻撃喰らったら即丸焦げだ」
見聞色の覇気は使えないが、雷の回避方法は分かっている。
「なァエネル、先駆放電(ステップトリーダー)と先行放電(ストリーマ)って知ってるか?」
「…何だそれは?」
自分では気付いてないんだな。だから俺が雷を避ける理由が分からないんだろう。
先駆放電ってのは雷が発生する際に、最初に流れる弱い光だ。そして雷の放電先に現れる先行放電(ストリーマ)と
呼ばれるモノと結合して、メインの威力ある電撃が飛んでくる。
つまりエネルが攻撃して来る時は、必ず俺の周りに微弱な光が流れる。俺はそれを察知して素早く避けている。
自分の周りに微弱な光が現れた瞬間に「剃」で移動している。まァ一瞬でも反応が遅れたら丸焦げだろうけど。
勿論エネルが移動して近くに現れる瞬間も同様だ。その為、俺は今まで避け続けられている。
「知らないならそれでいいさ」
しかし流石は自然系だな。見聞色の覇気もありなかなか決定的なチャンスが出来ない。
こちらはダメージは無いっていっても、少しずつ疲労が溜まっていく。
あんまり長い時間戦うのは俺に不利だな。
「…ただ能力が優れていた訳ではないのだな…。今更だが、私は貴様を認めよう。今まで出会ってきた中で
貴様は一番強い、私の配下の誰よりも。それに私の部下は貴様の仲間に全員やられてしまった様だ」
ルフィ達は敵をきっちり倒したみたいだな。アイツ等は強いからあんまり心配してなかったけど。
しかし、エネルが俺の事をこんなに認めるなんて…何か不思議な感じだ。
「過大評価をありがとな」
しかしどうやってエネルを仕留めるか。中途半端な攻撃はそこまで効果ないし、厳しいが俺も多少リスクを
背負うしかないな。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
俺は今まで体全体に纏っていた炎だけでなく自分の出せる炎を全て右手に集め、その炎を圧縮する。
限界まで圧縮した炎は手の平サイズまでに小さくなっていた。圧縮した炎を掌に留める。
「それが貴様の切り札か?」
「まぁね。傷一つ無くアンタを倒すのは難しそうだからな」
「…ならば私も自身の最大の技をだそう!決着をつけようじゃないか!!」
そういうと、エネルの周りから電流が迸り始めた。
「MAX2億V!放電(ヴァーりー)!!」
全身から溢れ出る程の電気。あんなの喰らったら、跡形も残らないだろうな。
「この攻撃でも避けれるか!青海人よ!!」
今までより遥かに強烈な雷の放出に向けて、俺は真正面から突っ込んで行く。今までみたいに避けてばっかりじゃ
エネルに隙が出来ない!ギリギリを見極めるんだ!
エネルに向かって進んでいたが、完全には避けきれず、左腕が当たり、腕を伝って全身に激痛が走る。
だけど、今止まったらチャンスを失う!止まる訳には行かない!!痛みを堪えつつエネルの懐に飛び込む。
「なっ!?」
「喰らえ!白火・爆散掌(ばくさんしょう)!!」
おれはエネルの懐に掌を突き出し、圧縮していた炎を一気に開放する。その瞬間、俺の全力を注ぎ込んだ炎は
辺り一面を巻き込んで盛大な爆発が起こった。
爆発の周りは綺麗な平地と化し、爆発の中心には地面を抉り取って直径50メートル程の大きなクレーターが出来ていた。
自分の技ながら笑えない威力だな。俺にも爆発の余波で被害が出るし、慣れるまであんまり多用は出来そうにない。
もう少し改善しないといけないなァ。
「……何とか仕留めたか?」
体を引きずりながら、爆心地から遠く離れた場所に横たわってるエネルの所へゆっくり歩く。さっきの攻撃は、
少し俺にもダメージがある。左腕は電撃で焼け焦げてるし、全身にも傷を負った。
そうして倒れているエネルの様子を窺う。これでまだ反撃してくる力があったら勝ち目がないな。
見ると、意識はあるみたいだが体は動かせないみたいだ。俺が近付いてきても反応がない。
「…まさか、あんな技を…隠して…いたとはな」
「あれ位しないと勝てそうになかったんでね。まァ半分自爆技みたいなもんだけどな。俺もダメージあるんだし。
下の海の人間に負けた気分はどうだ?」
「そうだな…何故か…不思議と、悪い気は…しない」
エネルは負けたのに、どこか嬉しそうだった。倒れたまま話し続ける。
「人生は長いんだし、一回くらい負けてもいいんじゃねェのか?俺も今までけっこう負けた事あるぞ。
いい経験だと思えよ」
「そうだな…初めて負けたのがお前で良かったかもしれない…今更だが、改めて名前を教えてくれないか?」
「そういえば自己紹介すらしてなかったな。俺はラーズ。下の海では”白狐”なんて呼ばれてるよ」
「そうか…ラーズ。お前の名前は決して忘れないだろう」
エネルはどこか笑っている様な気がした。
「ところで、アンタはこれからも神を名乗り続けるのか?」
そうされると空島の住人達も不安で仕方ないからな。
「いや…しばらくはスカイピアを離れて旅にでも出てみようと思う。お前のいる青海にも興味があるからな」
「そうか。下の海は楽しいぞ。アンタの経験した事ない出来事が沢山あるだろうからな」
「楽しみにしておく」
エネルは何でか改心したみたいだな。戦ってボロボロにしてしまっただけなんだが…まァいいか。
「なら、いつかどこかでまた会う機会があるかもな」
「今度は負けない様に鍛えておく。能力者になってから修行などしていなかったからな」
エネルが本気で修行し始めたら勝てる気はしないんだが…
「出来れば俺より強くならないでくれよ」
「それはどうかな?」
エネルはこっちを見てニヤけていた。この野郎、今の内に一閃で頭撃ち抜いてやろうか。
「とりあえずスカイピアの住人には、もう”神”はいないって伝えるからな。今はお前改心してるみたいだけど、
住人にとってお前は恐怖の対象なんだからな」
「それは構わない。気付かれないように出て行くさ」
「なら…またいつか下の海で会えるといいな」
「そうだな…人と人の巡り合わせとは分からないものだ。私がこうしてお前と戦ったのも何かの縁なんだろう」
「次はあんまり雷ぶっ放すなよ。まともに喰らったら丸焦げなんだから」
「ヤハハ。気をつけるさ」
コイツ意外と面白い奴だったんだな。最初の印象とまるで違う。戦ってる内に何か変わったのか?
「あっ、そう言えば聞きたいんだけど」
「どうした?」
「この島に黄金ってあるのか?」
俺の質問にエネルは少し考えたが、やがて答えた。
「この島に黄金はあった…しかし、私がその黄金を使ってしまった」
「使った?一応原型とかあるのか?」
「あぁ。しかし私が計画していた船にほとんど使ってしまったんだ」
何かエネルが申し訳無さそうにしているな。
「なるほどねェ。まァどうにかなるだろ」
「?どういう事だ?」
「金の融解温度は大体1000度ちょいってとこだ。俺の炎ならそれくらいは軽く出せるからな」
「そうか…お前は本当に大した奴だな」
「んでその船はどこにあるんだ?」
「遺跡の近くだ。その近くの洞窟にある」
「なるほど…サンキューな。お前も早めに逃げとけよ」
「あぁ」
そうして何だかエネルと少し仲良くなってからその場を去る。遺跡の場所は分からんが、空に上がって探せば
その内見つかるだろう。
ひとまずこれで空島の冒険は一区切りついたな。一旦船に戻ってナミ達に報告するか。