小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ラーズside〜〜


 空島での宴会は二日ぶっ通しで続いた。飲んで騒いでは疲れて眠って。また起きては飲んで騒いで。今まで抑圧
 されていたものから解放された人々は、これまでの様々なものを取り戻すかの様に楽しんでいた。

 ルフィ達もひたすらにそれに付き合っていた。お祭り大好き集団だし、俺も手が空いた時は参加していた。
 
 ちなみに黄金やら貝やらは随時メリー号に運んで行った。貝についてはガン・フォールの爺さんから色々と
 説明を聞いた。中でも気に入ったのは噴風貝(ジェットダイアル)だな。これがあれば何かと便利になりそうだ。




 そうして空島が平和になってから三日目。俺達はルフィに呼ばれて全員集まっていた。

「みんな、空島に思い残す事はないか?」

 ルフィが皆に質問する。って事はもうそろそろ出航って事だな。確かに黄金も頂いたし冒険もしたし。


「おれはいつでもいいぞ」

 ゾロが答える。とりあえず納得のいく敵と戦えたみたいで満足してたからな。

「おれも空は満足だ。空島独特の香辛料も貰ったからな」

 サンジもコックとしての仕事はきっちりこなしてた。

「私も!こんな冒険初めてだったし!」
「おれもだ!楽しかったぞ!」

 ビビとチョッパーは二人で行動してたって言ってたな。怪我もなかったし、色々と友達増やしてたし、
 コイツ等も頑張ってたんだろうな。

「私も目的は果たせたわ」

 ロビンは鐘楼も見つけて歴史の本文を読めたみたいで満足していたな。この島に来てからずっと楽しそうにしてたし。
 歴史ってそんなに楽しいもんなのか?まァ本人が楽しんでるならそれでいいか。

「財宝、黄金、お金持ち!夢が広がるわ!!」

 …ナミが一番嬉しそうだな。確かに船に積んだ黄金を換金したら幾らになるのか想像つかない。
 少なくても今後一味が金に困る事は無くなるだろう。


「おれ達はおやっさんの言葉を証明出来たんだ。それだけで十分だ」

 なんかビシッといい台詞を言ってるウソップ。別にカッコ良くはないけどな。

 そうしてみんな自分の感想を言い合った後、俺を見た。

「ならさっさと帰ろう。青い海が俺達を待ってるぜ」


「……別にカッコ良くはないけどな」

「うるせえウソップ!さっきの俺と同じ事考えんな!」

「そんな事知るかよ!?」

 アイツ俺の心まで読めるのか!?お前が一番恐ろしいぞ。



「よし!じゃあ帰るぞー!!」



 こうしてルフィの言葉で締めくくり、メリー号へと向かう。道中でふと思った事を聞く。

「ナミ。下の海に戻るっても、記録は大丈夫なのか?」

 記録指針が進路を指さないとどうにもならないからな。

「安心して。もう次の島を指してるみたい」

 なら大丈夫か。んで次の島ってどこだっけ?名前とかはすっかり忘れたな。その次はちゃんと覚えてるんだけど。

「次の島に換金所はあるかな〜〜」

 …ナミが非常にノリノリである。なんかお勘定の時の様な「カシャカシャカシャ、チーン!」みたいな音が聞こえるし。
 ここはそっとしておこう。


 そんな事を喋っていると船に着いた。みんなで出航の準備をする。


 帰り方は島の住人から聞いた方に進めばいいらしいから問題ないか。一路出口のある白海に進む…










  〜〜ウソップside〜〜


 おれ達はようやく下の海に戻ってきた…戻ってきたんだが、

「行きも帰りもまともな道は無いの!?」

 ビビが腰を抜かして座ったまま叫んでいた。安心しろビビ。おれも死ぬかと思って膝がまだ震えてるよ。

「まさかあそこから落下するとはなァ」

 おいゾロ、もう驚いて無い様な顔してんなよ。船が出口から落ちた時お前も叫んでただろうが!



 メリー号は空島から帰る時に、上空7000メートルからそのまま落ちてきたのだ。途中で雲から大きなタコが
 出て来て風船みたいになってなんとか無事に帰って来れたんだが。
 おれはてっきり雲の川が下まで続いてると思ってたから安心してたら、船はそのまま空に投げ出された。
 流石に死んだかと思ったぜ。マジで勘弁してくれよ。



「いや〜俺もびっくりしたな。まさかあんなとこから落っこちるとは」

 ラーズでも驚く事あるんだな。座り込んでるし、ゾロと言ってる事同じだぞ。


「それにしても…改めて見ると、とんでもないとこに行ってたのね」

 ロビンが空を見ながら呟いている。確かにすげーとこに行ってたんだな。もう一回なんて行けるのか?

「海が青いぞ…」

 チョッパーは何日かぶりの海を眺めていた。こんな冒険が出来るなんて思ってなかったんだろうな。

 おれも空を見上げる。空島…おれ達は本当に雲の上に行ってたんだなァ。まるで、

「まるで夢みたいだ…」



「なら現実に帰ってくるか?」

 おれの小さな呟きをラーズは聞き逃してなかった。見ると、楽しそうに右腕を振り回している。
 
「いやいやいや!大丈夫!!ばっちりおれは正常だ!」

 何で人を殴ろうとしてて顔が笑ってんだよ!

「そうか?…チッ」

 舌打ちしてんじゃねェ!ちゃんと聞こえてんだよ!!ったくアイツ最近性格が歪んできてねェか?
 ラーズはつまらなそうにしてマストの上に跳んで行った。




「よーし野郎ども帆を張れー!次の島だ次の島ー!」

 ルフィが立ち上がって元気に叫んでいる。少しくらい休ませてくれよ。もう少し空島の冒険の余韻に浸らせてくれ。

「今回はルフィに賛成よ。準備して、波が少し変なの。ラーズ!?」

 ナミが言うとラーズは船の後ろを見ていた。そして返事が返って来た。

「後方から大きな津波が来てる!急がないと巻き込まれるぞ!!」

 …アイツそのために上に行ったのか?ふざけてんのか真剣なのか判断つかねェよ。
 そんな事を考えていると、本当に大波が見えるくらい近付いていた。しかもよく見ると、何か波の中に
 猿みたいなのがいねェか!?

「何だあの猿!?」

 サンジが驚いて大波を見ている。おれもびっくりだがそんな場合じゃねェ!

「とにかくオールを漕げ!」

 ゾロと人型に変身したチョッパーはすでに必死に漕いでいた。おれも手伝わねェと!




 …こうして何とか大波から逃げ切った。少しは海も安定したみたいだな。一息ついた所でナミが空島から持って来た
 「ウェイバー」を試している。こっちの海でも大丈夫みたいだな。ちなみにルフィも一度試したが、
 見事に失敗して沈んだ。アイツに繊細なコントロールは無理だろ。毎回助けるのも一苦労だぜ。

 貝はこっちでも問題なく使えるみたいだ。これならラーズの言ってたビビの武器も作れそうだな。




「さて、問題は宝の山分けよ」

 ウェイバーから上がってきたナミが話し出す。すると、腕を組んで聞いていたラーズが話し出した。

「正直身に余るくらい持って帰ってきたからな。山分けする前に、まずはメリー号の修理したらどうだ?
 けっこう痛んでるし。それでも余裕だろ」

 …おれはラーズの言葉に驚いた。アイツがメリーの事をそこまで考えてたなんて思ってなかった。東の海から
 ずっと一緒だったメリー。だからこそ、あちこち痛んでいる。やっぱり大きいのはジャヤでやられた傷だな。
 どうにか修理して頑張って貰いたいもんだ。


「なら、今度は”船大工”を仲間にしようぜ!メリーはおれ達の「家」でおれ達の「命」だ。メリーを守ってくれる
 船大工を探すんだ!」

 …ルフィもメリーの事考えてくれてたんだな。コイツ等嬉しい事言いやがって。
 見るとみんな賛成みたいだな。


「どんな船大工がいるか楽しみだな!」

 チョッパーが何かを期待している目をしているが…どんなのがいいんだ?びっくりスーパー!なヤツか?




 そうして話し合いも終わり、海を見ているとまたさっきの猿が海面から出て来た。また大波起こす気なのか!?

「こんにゃろさっきから!焔弾ァ!!」

 ラーズはデカイ猿に向かって、メインマストに登ってから沢山の白い炎の弾を撃ちまくっていた。

「!?」

 猿達は驚いて後ろに引いて行った。

「待てやコラァ!逃げんじゃねェ!!」

 叫びながら直径2メートルくらいの炎の弾を撃ち続けるラーズ。あれなら海王類が来ても大丈夫なんじゃね? 
 炎の弾は海面に当たると大きな音を立てて爆発していた……まさに人間兵器だなアイツ。



「ウソップ!船を反転させろ!あの猿仕留めてやる!」

「おい落ち着けラーズ!逃げて行ったんならいいじゃねェか!それにお前の弾も威力があるから波が大きくなる!」

 必死になだめると、ラーズも落ち着いたみたいだ。なんか急に壊れやがったな。

「まァいいか…ふぅ」

 そうしてマストから降りてくる。そして…ナミに拳骨をプレゼントされた。

「アンタはもう少し考えなさいよ!自分の能力ちゃんと理解してんの!?」

 ナミからの強いお叱り。ラーズは見事に落ち込んでいた。さっきまで強烈な炎の弾を出していた尾は
 すっかり下を向いている。実に尻に敷かれてんなァ。

「すみませんでした!」

 体を90度曲げて全力で謝るラーズ。ナミの前じゃとことん弱いな。

「全く…あら?」

 ナミが何かを発見したみたいだ。視線の先を双眼鏡で覗くと、一隻の船がいた。けど…


「船が見えるんだが…何かおかしいぞ?」

 海賊なら帆や旗を掲げてるだろうけど、あの船には「帆も旗もない」。しかも良く見ると、

「船員が全力でイジけてるぞ!なんだありゃ!?」

 どうなってやがんだ?とりあえずこっちを攻撃してくる意志はないみたいだが。


「攻撃してこねェんなら気にしないでいいんじゃねェか?」

 サンジの言うとおりだな。おれ達は海賊襲うなんてしないし。しかし気にはなるな。

「パッと見は海賊っぽいんだが…何かあったのか?」

 しかし船には戦闘した形跡もないし、ますます分からんねェ。

「無視しといていいだろ」

 ゾロも気にしないみたいだな。これ以上考えても無駄か。


 そうして記録通りに進んでいると、ようやく次の島が見えて来た。今度はどんな島なんだ?

































「…んで、アンタは何でいきなり乱れ撃ちなんかしたの?危ないじゃないのよ」

「いや、今の内に全力の確認をしておこうかと…」

「何で今そんな事してんの?」

「自分の力量を確かめておかないと…」

「だから何で今?」

「…いつ強い敵が襲って来るか分からないじゃん」

「アンタより強いのなんてそこら辺にいちゃ堪らないわよ」

「……だと楽なんだけどなァ」

「???」


-77-
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