〜〜ナミside〜〜
「白狐のラーズ!!お前を指名する!」
…はい?あの割れ頭は何言ってるの?突然の事で頭がついていかない。
「フェッフェッフェ!さァ白狐よ、今からお前はフォクシー海賊団の一員だ!!」
ラーズを見ると、やっぱり意外そうな顔をしていた。その足元にはチョッパーがしがみついている。
「おれラーズと離れるの嫌だァ〜〜!」
「兄さん行かないで下さい!!私のせいなのに!」
ビビもラーズの腕にしがみついている。ラーズは二人の行動に戸惑っているみたいだ。
私はそんな光景を見てもまだ信じられなかった。
ラーズが船から居なくなる…?
「さァこっちに来い!」
「ラーズー!」
「兄さん!」
アイマスクをした海賊達がビビとチョッパーを引き離してラーズを連れて行く。ラーズの背中が遠くなっていく。
「すまねェラーズ…」
「ちっ」
ウソップは申し訳無さそうに下を向いて、サンジ君は悔しがっていた。
なんであんな奴等にラーズを取られないといけないの?今まで一緒だったのに、また私からラーズを奪おうとするの?
…段々と事態を把握しながら怒りが湧いてきた。さっきはビビを泣かせて、今度はラーズを奪って。
「……ない」
「?」
隣にいたロビンが私の言葉を聞き取れなかったのか、不思議そうな顔をしている。
「許せない」
「……」
今度はロビンにも聞こえたみたい。
「許せない!」
完全に頭にきた。もう海賊のプライドとか暗黙のルールとか関係ないわ!そんなものでラーズと離れるんなら
喜んで破ってやるわよ。
私は天候棒をセットして相手に乗り込む準備を始めた。どんな事をしてでもラーズを返して貰うんだから!!
「おいナミ、落ち着けよ」
「黙ってて」
ゾロが私を止めようとしてるけど、私は止まらない。
「だから落ち着けって」
「ラーズを取られたのよ!?落ち着いてられないわよ!」
ゾロに向かって叫ぶ。
「おれだって分かってる!だがこれは勝負に負けた結果だ!」
「そんな勝負なんて関係ないわよ!」
私はすでにヒートアップしていた。大体何でアンタはそんなに冷静なの!?ラーズの事ちゃんと考えてんの!?
〜〜ラーズside〜〜
アイマスクの連中に連れられて割れ頭の所へ行く。もしかして俺も変なアイマスクつけんのか?…嫌だなァ。
「ようこそ我がフォクシー海賊団へ」
「さっきといい先手ばっかり打って来るな。見事なもんだよ」
割れ頭に歓迎の言葉を貰ったが大して聞いていない。
「一味の最高額の賞金首がいなくなれば圧倒的にこちらが有利だからな!フェッフェ」
「まァそんなに間違ってはいないが…俺がいなくてもアイツ等は強いぞ?」
俺はこっちに取られてしまったが、そんなに心配はしていない。元々誰が取られても次で取り返せばいいと考えてたし。
今のゾロとサンジなら俺がいなくても勝負に負ける事はないだろう。
自分でビビの分まで戦えないのは残念だが。
そうしてルフィ達の方を見てみると、
「……なんか喧嘩してねェか?」
こっちから見る限りでは、暴れようとしているナミを、ゾロやウソップが必死に止めようとしている。
どうしたんだ?ナミがあんだけ暴れてるって事は…もしかして俺の事か?
「なァ『船長』」
「おっ、ようやく認めたか?」
割れ頭はなんか嬉しそうにこっちを向いてきた。
「なんか俺の『元仲間』が揉めてるみたいだから、最後に少し話してきていいか?このままじゃ勝負が進まないだろ?」
「ふむ、確かにな。ならさっさとやってきてくれ」
俺の『船長』と『元仲間』って言葉に満足したのか、割れ頭は俺を止めなかった。やっぱバカだなコイツ。
「ならちょっと待っててくれ」
そう告げて「剃刀」で空に駆け上がり素早くナミ達の所に行く。
「どうしたんだ?」
「ラーズ!?どうしてここに!?」
俺が着くと後ろを向いたウソップが驚いていた。
「あの割れ頭を丸め込んでちょっとだけ来た。何だか騒いでたみたいだったからな」
「とりあえずナミを止めてくれ!アイツ誰の言う事も聞かねェんだよ」
全くその通りみたいだ。あそこまでナミが暴走してるのは俺も初めて見たな。
とにかく止めないと話にならないしな。俺はナミに近付く。
「ひとまず落ち着けよナミ」
「だから落ち着いてられないって……ラーズ!?」
ナミは会話をしたのが俺と気付いてびっくりしていた。
「何でこんなに暴れてるんだ?」
「アンタが取られたからよ!今から取り返しに殴りこみに行くんだから!」
おいおい殴りこみって穏やかじゃないな。それにそんな事してナミがケガでもしたら俺が困る。
しかしどうやってこの暴走姫を止めようか?まともに会話してもダメっぽいしな。となると…
「おりゃ」
「ラ、ラーズ!?」
「落ち着いたか?」
「う、うん…」
俺はナミをいきなり抱き締めた。効果は抜群だったみたいで、ナミは腕の中で大人しくなった。
「一回戦は負けて俺が取られたけど、次ゾロ達が勝てばすぐに戻ってくるからさ。その間だけ待っててくれないか?」
「でも…」
ナミは俯いたままだ。
「大丈夫だって。俺がアイツ等を信じてるんだから。ナミものんびり観戦でもしててくれよ」
「……」
う〜むこれでもダメそうだな。それならこうだ!
「ナミ、顔上げて」
「なに…んっ!?」
俺は顔を上げたナミにキスをした。ナミの目は大きく見開かれさっきより驚いていたが、段々と目を閉じていった。
ナミの体から力が抜けていくのが分かる。
沢山の視線を感じるが、関係なしに唇を重ね続ける。しばらくして唇を放した。
「…信じてくれるか?」
「…うん」
ナミはまだ目の焦点が合ってないみたいだ。今も口元に指を当てて呆けている。
そりゃいきなりだったし久し振りにキスしたからな。
「次はちゃんと俺が戻ってきてからだな」
「う、うん」
…予想よりナミが壊れてしまったが大丈夫だろ。頭から煙を出してるのは見なかった事にしよう。
これでひとまずは大丈夫として、次は頑張って貰わないとな。
「サンジ、ゾロ」
次の勝負に出る二人を呼ぶ。俺はもう割れ頭に取られたから出れないし。
「…お前は大物だな」
「ついに堂々とする様になりやがったか…」
二人が何か言ってるがあんまり気にしない。ナミが好きな事には何も恥ずかしい事はないからな。
「次よろしくな。のんびり観戦しとくから」
「まァ任せろ」
「そうだ!ビビちゃんを泣かせた事を後悔させてやるわァ!!」
ゾロはともかく、サンジはまたも燃えている。さっきもだがどうやって炎出してんだ?
まァこれなら俺の分まで相手をボコボコにしてくれるだろう。サンジに任せるとするか。
燃えるサンジを置いといて、
「なら俺は戻るからよろしくな」
ゾロに言葉を残して「剃刀」でフォクシーのとこに戻る。
「別れは済んだか?」
「あァ、よろしく頼むぜ船長」
「フェッフェッフェ!!おい、アイマスクを持って来い!」
割れ頭は手下にアイマスクを持ってくさせた。やっぱ着けるんだなァ。仕方ないか。大人しく装着する。
「これでお前も立派なフォクシー海賊団だ!!」
…このアイマスクそんなに違和感ないな。顔にフィットしてるし、意外と似合ってるかもしれない。
「とりあえず観戦用の椅子でもくれよ船長。後は酒とか」
「船長に任せろ!お前ら準備だ!」
何でコイツは悪巧みは上手いのに会話力はないんだ?こんなにポンポン使えるなんて…不思議な奴だな。
『さァ!取引も終わって盛り上がったデービーバックファイト!そろそろ二回戦が始まるよ〜〜!!』
これってデービーバックファイトって名前だったんだな。実況を聞いてようやく理解する。
さて、ゾロとサンジはどう戦うのか?つーかそもそも詳しいルール知らないから実況聞きながら見ないとな。
「……」
「航海士さん?」
「……」
「航海士さん?」
「……」
「ダメね、完全に違う世界に行ってるわ」
「……」
「ラーズって凄いのね…」
ナミは二回戦が始まっても戻って来なかった。