小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ラーズside〜〜


 今のは効いた。クザンさんの腕が脇腹を貫通してるのが分かる。
 吐血したって事は内臓のどこかも傷ついたかもしれない。


  「だがこれで終わりだ」


 すぐ近くでクザンさんの声が聞こえる。今、クザンさんは完全に油断している。勝つにはここしかない!


 ずっと待っていたタイミング。決定打が出せないまま疲労していく体。逆転の一手を打つ為にはこれしか
 思いつかなかった。俺は「生命帰還」で傷口を少しでも収縮させ、クザンさんの腕を固定する。
 すぐに左手で貫通している腕を掴んだ。更に尾から炎を出し腕を絡め取る。絶対に離さない様に。

「ん…?ラーズ…お前まさか!」

「…俺は今、実体を、掴んでます…これなら、ハァ…逃げられないでしょう?」

 俺の考えを理解したクザンさんに焦りが見えた。

「はぁぁぁァァァ!!」

 体中から炎を出し、右手の掌に集める。

「させるか!」

 俺の体と繋がっている箇所から凍らせようとしているが、俺の方がわずかに速い!

 俺は右手をクザンさんの胸に突き出した。


「白火・爆散掌!!」


 開放された炎は巨大な爆発を起こした。途中でクザンさんの腕が抜けたのを感じた。俺も爆発の勢いで
 後ろに飛ばされる。衝撃に耐える程の力が残っていなかった。


 後方に飛ばされた後、何とか膝をついて立ち上がる。普通なら今の一撃で倒してるハズだ。同じく自然系のエネルは
 これで倒せたが相手は鍛えに鍛えた海軍大将だ。

「これなら……どうだ?」

 そうして視線を上げると…










「お前が、あんな隠し技を持ってるとはな…」


 爆発の煙の中から声が聞こえてきた。全く冗談じゃないぜ。

 
 クザンさんは立っていた。しかし、頭や口、足からも血を流している。捕まえてた右腕はおかしな方向に
 曲がっていた。おそらく衝撃をまともに受けたんだろう。アレでも腕一本かよ。

「これでも…立ってくるんですね」

 かろうじて会話は出来るが脇腹の損傷が辛い。「生命帰還」でも止血で精一杯だ。

「今のは危なかった。腕も折れたみたいだしな」

 口の中の血を地面に吐きながら少しずつ近付いてくる。


「…ま、まだだ。ゲホッ」

「強がるな。今の状態が分からない程馬鹿じゃないだろ。これ以上続けたら死ぬぞ」

 ほとんど余力は残ってない。けど、それでも戦う事は止めない。

 俺が負けたら…




「俺は…」

 みんなの為にも

「まだ…」

 俺の為にも

「負けて…」

 ナミの為にも

「られないんだァ!!!」




 再び体から炎を噴き出す。自分の生命力の続く限り諦めてたまるか!

「うぉぉぉォォォ!白火・焔弾ァ!!」

 九本の尾を前面に持ってきて、巨大な炎の弾を作る。最後の力を振り絞ってクザンさんに放つ。



 飛んで行く炎を見ながら、俺の視界が薄れていく。

 その炎の結末を、最後まで見届ける事は出来なかった。




 すまない…ナミ…







  〜〜クザンside〜〜


 あのラーズの一撃は危なかった。まさか、わざと隙を作って俺を捕まえるとはな。右腕も見事に折れ、全身を痛みが
 走っている。ここまでダメージを喰らうとは。気を抜いたら倒れそうだ。
 攻撃の直前にラーズの手と体の間に少しでも氷の壁を作ってなかったらやられてたな。

 にしても、なんて恐ろしい能力なんだ。アイツの炎の攻撃はこっちの防御がまるで意味をなさない。
 能力者になってからここまで深手を負わされる事になるとはな。


「うぉぉぉォォォ!白火・焔弾ァ!!」


 まだ力が残ってるのか!?どこまで成長してるんだアイツは!?

 今の状態であの炎の弾を喰らったら間違いなくおれがやられる!


「アイス塊・暴雉嘴!!」


 巨大な氷の雉を炎にぶつける。その瞬間、お互いの技は水蒸気となって辺り一面を覆った。



「何とか…防げたか」



 ラーズを見ると、すでに地面に倒れていた。まさに最後の一撃だったんだな。それを見て膝をつく。
 おれもかなりダメージが残っている。おれがここまで追い込まれるとは…本当に強くなったな。

「お前の覚悟、確かに伝わったぞ」

 聞こえないと分かっていても、ラーズに言葉を放つ。







  〜〜ナミside〜〜


 二人の戦いから音が消えた。片方は地面に伏して、片方は片膝と手を地面について満身創痍の状態。



 だけど−−−私の恋人は倒れていた。


「ラーズ!!」


 私だけじゃなくて、一味のみんなが駆け寄る。近くでみたラーズの体は酷かった。あちこちに裂傷がある。
 特に脇腹の傷が一番大きい。このままじゃ…

「ラーズが危ない!急いで処置しないと!」

 チョッパーが医療器具を取りに慌てて船に戻る。ラーズの顔色が悪い。何とか呼吸だけしている様に見える。


「お前ーー!!」


 叫び声の方を見ると、ルフィが青雉に攻撃しようとしていた。

「待てルフィ!」

 ゾロは歯を食いしばりながらルフィを必死に止めている。

「今はラーズの体が優先だ!」

 サンジ君もルフィを抑えている。




「ラーズはよく戦った」




 いつの間にか青雉が私達の近くに来ていた。改めて見ると、青雉も重傷みたい。右腕を押さえ、頭や足から
 出血している。こっちもギリギリみたいね。


「おれをここまで追い込んだのはコイツが初めてだ」


 ラーズを見ながら話す青雉。

「おれがラーズの代わりにぶっ飛ばしてやる!!」

 まだ止まらないルフィ。

「まァ待て。今のおれの状態でもお前等なら相手にすらならない」

 
 ロビンが言っていた。青雉は自然系の悪魔の実の能力者で、普通の攻撃は一切効かないって。戦えるのは
 ラーズだけだって。だけど…

「だからって、仲間をやられて黙っていられるかァ!」

 ルフィも目の前でラーズが負けて、少なからず動揺している。でも私も気持ちはルフィと一緒だった。

「ったく、話を聞かないのは一緒だな。それに…」

 青雉が話を続けようとしたら、チョッパーが走って戻ってきた。何だか慌ててる様にも見えるけど。


「か、海軍が沢山いておれ達の船を取り囲んでる!」

「ようやく来たか…」

 どういう事!?青雉が海軍を呼んだって事なの!?

「お前!一体何をしたんだ!?」

 ウソップが叫ぶ。

「さて、お前達はどうする?今から大将のおれと本部の軍艦三隻分の海軍を相手にするか?瀕死のラーズを庇いながら。
 それとも、ラーズを見捨ててでもおれを倒そうとするか?モンキー・D・ルフィ」

 青雉の言葉にルフィは何も言い返さない。
 どうしよう。ただでさえ海軍の大将なんて勝ち目がないのに、更に海軍までいるなんて。ラーズもこのままだと
 危ない状態だし…。私だけじゃなく、みんなもどうしていいか分からないみたい。
 青雉はそんな私達を見て話を続けた。



「…安心しろ。今はお前達を捕まえない」



 ……どういう事?いきなり何を言い出すの?

「ラーズとの約束だからな。ここでお前達に手を出す事はない」

「おいそりゃどういう事だ?」

 サンジ君が問い詰める。


「…アイツと戦う前に約束をした。『自分が勝ったら自由にする。負けたら七武海に入る代わりに、ここで一味に
 手を出すな』ってな。アイツはお前達をおれ達から守る為に戦ってたんだよ」


「そんな…」

 ビビも口に手を当てて驚いている。

「今のお前達じゃおれに勝てない事を分かってて、自分が負けても仲間が無事になるようにな。本当ならそんな要求
 聞かなくてもいいんだが、元とは言え弟子の頼みを聞かない訳にはいかない。それにラーズには借りもあるからな」

 …ラーズは「また」私達の為に戦ってたのね。

「お前達がおれを恨んで攻撃してきても構わんが、そうなったら全滅するのはお前達だ。さっきの戦いを見ても
 おれの力量が分からん程弱くはないだろ?」

 何も言えない。ルフィですら大人しくなっている。






「それに…お前達が全滅したら、何の為にラーズは戦ったんだ?」






「!?」

 …私はなんて弱いんだろう。いつもラーズに助けられて、いつもラーズに守られて。悔しくて拳を握りしめる
 事しか出来ない。


「おっと来たみたいだな」


 私達の周りには大勢の海軍達がいた。青雉はすぐに指示を出した。

「医療班は白狐の応急処置を終えたら直ぐに船に運べ」

「はっ!」

 海軍の人達がラーズの治療を始める。

「大将も治療を受けて下さい!」

「おれはコイツ等と話をしてから船に戻る。その時でいい。それからコイツ等には手を出すな」

「しかし、この一味にはまだ三人の高額賞金首がいますが…」

「手をだすな。これは大将命令だ」

「はっ!失礼しました」

 敬礼をして去って行く海兵。



「ラーズをどうするつもり?」

 青雉を睨みながら質問する。

「今から海軍本部に行き、新たな七武海の加入を全世界に知らせる。アイツとお前達の旅はここまでだ」

「そんな……」


 ラーズと別れなくちゃいけないの?

 …嫌だ。

 もう離れたくない。


「…お前達がアイツを少しでも想うなら、前に進め。それに、お前だろ?ラーズの『大切なモノ』ってのは」

「……」

 青雉は私を見ながら話を続ける。

「アイツは海軍に入った頃から馬鹿みたいにずっと同じ事ばっかり言ってた。『大切なモノ』を守るってな。
 その為にひたすらに強くなった。あんな小さかったガキが、海軍大将と渡り合える様になる程に成長した。
 あの若さでだ。あのまま海軍にいたら、将来の大将候補まで上がってきてただろうな」 
  
 私は黙って話を聞いている。


「だが、アイツはそれを蹴って海軍を抜けた。恐らくはお前の隣に居る為に、お前を守る為に」 


 返す言葉がない。ただ、ラーズを想うと涙だけが流れてきた。



「お前達も強くなってみせろ。ラーズに守られてばっかりじゃなくて、自分達でも戦える様に。この先の海は
 甘えは通用しない」

 そう言って歩き始めた青雉。すると、ロビンの前で足を止めた。



「ニコ・ロビン。お前の居場所はそこか?」

「…ええ。ラーズが体を張って守ってくれたんだもの。何があっても私はこの一味と生きていく。でないと、
 私はラーズを裏切った事になるもの。そんなのはもう嫌よ」 

「そうか…アイツにはまた借りが出来たな。おれが今後お前を追う事はない…生きてみせろ。
 必死に生きて”オハラ”まだ滅んでいないと、おれとラーズに証明してみせろ」


 そうして青雉は海軍と共に去って行った。






 
   ラーズを連れて

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