小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ルフィside〜〜


 おれは今まで何やってたんだ!?ずっとみんなで楽しくやって行けばいいと思ってた。誰かがいなくなっても
 おれ達ならきっと大丈夫だって思ってた。海軍にだって負けやしないって思ってた。




 だけど、ラーズが船からいなくなった。




 海軍の大将との戦いを見て分かった。ラーズはおれが考えてたよりずっと強かった。攻撃、防御、どれを取っても
 今のおれじゃ敵いそうになかった。多分おれのギアを全力で使っても勝てない。
 海軍の大将はそんなラーズよりも強かった。おれは見てる事しか出来なかった。
 ラーズの約束が無かったら、多分おれ達一味は全滅してた。


 ここまでの旅で、色んな敵と戦った。船ではラーズにも鍛えて貰った。海に出てから格段に強くなったつもりだった。

 ラーズがいれば何とかなる。

 心のどこかにラーズへの甘えがあったのかもしれねェ。おれは船長なのに、ラーズに守られてばっかりだ。
 これじゃダメだ。これから先、もっと強い奴が出てくるかもしれねェ。その時に誰かに頼ってちゃダメなんだ。


「このままじゃ船長失格だ」


 おれには仲間がいる。いつまでも一緒にいて欲しい仲間が。

 おれが誰よりも強くならなきゃ、また誰かを失っちまうかもしれねェ。そんなのはもう嫌だ。

 もう誰も失わねェ。絶対に遠くに行かせねェ。

 もっともっと強くなってやる。


 ラーズだって、必ず取り返してやる!!






  〜〜ゾロside〜〜


 おれは『鷹の目』に負けて、世界のレベルを実感したんじゃなかったのかよ!?何の為の鍛錬だったんだ!?
 何の為に船に乗ったんだ!?こんなんで大剣豪になるなんざ到底出来る訳ねェ。
 もう負けないと心に誓ったハズなのに。

 この旅で、甘かった所は無かったのか?強敵も倒してきたと、自分で満足してなかったか?

 自分の強さなんて、ちっぽけなモンだった。大事な仲間一人、助ける事が出来ない情けないモンだった。


 
「おれは弱い…」



 あの海軍大将とルフィが戦おうとするのを止める事しか出来なかった。
 あそこでラーズを取り戻せなかった事が、おれの弱さを示している。

 今までアイツを頼りにし過ぎたツケがここで回ってきた。おれの弱さが、アイツを船から引き摺り降ろしてしまった。


 もっとおれが強ければ。ラーズの負担にならなければ。

 
「…強くなる」


 アイツの隣で戦える様に。アイツが船に戻ってこれる様に。



 おれはお前に誓う。






  〜〜サンジside〜〜


 あのラーズでも勝てない敵がいるなんて思ってなかった。アイツならきっとやってくれると信じてた。
 ローグタウンの時より成長したラーズなら、と思っていた。

 おれは最近になってアイツを認め始めていた。
 最初は気に入らない奴だったが、アイツの思いを理解する毎におれは納得していった。


 アイツは体の強さだけじゃない。心も強かったんだ。だからこそ、一味のみんなはアイツに惹かれた。

 一味の事を考え、みんなで笑える事をいつだって望んでいた。自分の事は考えもせずに。

 だが、おれはアイツの重荷になっちまった。

 肝心な所で全く役に立たなかった。

 アイツは自分がやられても、それでもおれを守った。

 
「畜生……」


 アイツに借りを作ったままで終われるかよ。

 勝ち逃げなんてさせねェ。必ず決着をつけてやる。


 この船に戻してから。






  〜〜ウソップside〜〜


 信じられねェ。あのラーズが負けちまった。逆境を悉く跳ね除けてきたアイツが、負けた。
 ローグタウンの時だって。空島の時だって。どんな時だって必ず船に戻ってきたアイツが。  
 
 戻って来なかった。

 アイツにはどれだけ世話になったか分からねェ。

 一味でも弱かったおれを鍛えてくれて。色んな事を教えてくれて。一緒に沢山馬鹿な事やって。
 
「何がスーパー狙撃手だよ…」

 大事な所で足が震えて。助ける為の一歩が踏み出せなくて。伸ばしたい手は動かせなくて。

 アイツにどれだけ頼ってたか実感した。自分の情けなさも痛感した。どん底まで叩き落された。

 でも、



「這い上がってやる」



 無様でも。情けなくても。かっこ悪くても。


 またアイツと一緒に笑う為に。立ち上がるんだ。






  〜〜チョッパーside〜〜


 初めておれに驚かなかったラーズ。おれを海に誘ってくれたラーズ。おれは一人じゃないって教えてくれたラーズ。
 どれだけ頼ってしまってたのか、やっと分かった。

 おれはラーズを”救えなかった”。
  
 大事な仲間がいなくなってしまった。誰を頼っていいのか分からなくなった。

 沢山泣いた。沢山叫んだ。

 でも、ラーズは戻って来ない。もう、おれと一緒に修行する事はないんだ。ボール無しで変身出来ても
 褒めてくれる事はないんだ。



「…ラーズを助けるんだ」



 沢山おれに与えてくれたラーズに。今度はおれが返す番なんだ。ラーズを救う事が、おれの恩返しだ。

 おれは、万能薬だから。

 ラーズを救う為の薬になるんだ!その為に頑張らなきゃ!!前を見るぞォ!






  〜〜ビビside〜〜


 兄さんが、居なくなった。絶望に呑まれていた私を救ってくれた兄さんが。

 兄さんはいつだって私を心配してくれていた。アラバスタでは国民を犠牲にする事なく、反乱を止めてくれた。
 血は繋がってないけど、本当に兄の様に優しくしてくれた。
 嬉しい時は一緒に笑ってくれて、悲しい時や辛い時は頭を撫でて慰めてくれた。

 そんな兄さんに何もしてあげられなかった。

 いつも戦ってるのを見てるだけで。いつも守って貰ってばっかりで。いつも迷惑ばっかりかけて。

 折角一緒に旅が出来る様になったのに、私のせいでその旅が終わってしまった。

 まだまだ一緒にやりたい事が沢山あるのに、その願いは潰えてしまった。


「…でも、諦めない」


 兄さんは私が旅に出る為に色々してくれた。今度は私が兄さんと一緒に旅をする為に頑張る番なんだ!

 きっと、きっとやってみせる!






  〜〜ナミside〜〜


 私達は全員船に戻ってきた。けど、誰も何も言わなかった。チョッパーはずっと泣いていた。そんなチョッパーに
 声をかける事も出来なかった。


 ラーズが、船にいない。


 私はその事実を受け入れられずにいた。この感覚は八年前に味わったモノと同じ…ううん、ラーズと恋人同士に
 なった事で、更に酷いモノだった。神様は意地悪だ。幸せを見つけたと思ったら目の前から消し去る。

 ベルメールさんを、ラーズを。

 ラーズはいつだって私の事を考えてくれてた。いつだって私を見てくれていた。いつだって笑ってくれてた。
 小さい頃からずっと隣にいて、再会してからはいつも一緒だった。
 嬉しい事も辛い事も分かち合ってきた。ずっと離れないと思ってた。

 でも、現実は残酷だった。私の心に大きな穴が空いてしまった。私の中のラーズが大き過ぎて、反動に
 耐え切れない。これからどうすればいいのか、何も分からない。

 ラーズは最後まで私を守ってくれた。自分を犠牲にしてまで助けてくれた。私はその想いに答えれていたの?
 私はラーズの為になった事はあったの?ラーズの隣にいていいの?

 今はもう感じない、ラーズの手の温もり。今はもう見れない、ラーズの笑顔。
 今はもう聞けない、ラーズの声。

 私の中には今は迷いしかない。どうすればいいんだろう。



 
「みんな、私の話を聞いてくれる?」




 沈黙を打ち破ったのは、ロビンだった。みんな、何も言わずにロビンの方を見る。

「私はみんなに、そしてラーズに救われたわ。初めて会った時も、今回も」

 みんなが顔を上げてロビンを見ている。ロビンはそのまま続ける。

「みんなも少なからずラーズに救われた事があると思うの。私が入る前から、みんなもラーズを信じてただろうし。
 だからラーズがいなくなった事にショックを受けてると思うの。どうしようもない位に」

 多分、ロビンの言う事は当たってる。


「でも、それでも私は前に進むべきだと思うわ」


 ロビンはラーズの事を何だと思ってるの!?そんな簡単な事なの!?

「青雉の、敵の言葉を借りるのは気が引けるけど、ラーズの為にも私達は進むべきだと思うわ。私達が立ち止まって
 しまったら、彼が船から離れた理由が無くなってしまう。命を懸けて戦ってくれた行為が無駄になるから」

 …ロビンの言ってる事は間違ってないと思う。でも…


「すぐに気持ちを切り替えなくてもいいと思うわ。だから、悲しみはこの島に置いて行きましょう。そして、
 ラーズの想いをしっかり受け取って出航しましょう。それが、今の私達に出来る事だと思うの」 


 ロビンはラーズの事を理解し、ラーズの想いを受け取っていた。確かに、私達がこんなに落ち込み続けてたらラーズが
 悲しむハズよね。ロビンに教えられたな。





「…三日だ。三日経ったら次の島に行くぞ。おれ達の為に、ラーズの為に」





 ルフィはそれだけ口を開いた。他のみんなは何も言わなかったが、納得してる様な気がした。


 

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