小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ラーズside〜〜

 
 脇腹の傷も回復してきて、目覚めてから三日目。
 船は特に何事もなく順調に進み、懐かしい景色が少しずつ見えてきた。海軍本部のある、マリンフォード。

「まさかまた戻ってくる事になるなんてな」

 ここを出て行った時はもう見る事はないかと思っていたが、予想よりかなり歪んだ展開で帰ってきた。


「もう着くぞ。久し振りのマリンフォードはどうだ?」


 隣に居るクザンさんが口を開く。

「複雑な気分ですよ。半分誘拐されてきた様なもんですし。だからと言って海軍を強く恨んでるって訳でもないですし」

 確かに一味から切り離されたのはムカつくが、海軍全てが嫌いという事にもならないんだよな。八年間も世話に
 なって、海軍を抜けてからも気にかけてくれてる事には素直に感謝しているから。

「そりゃそうか…おっと着いたみたいだな。降りるぞ」

 言われてクザンさんの後ろを歩く。船から降りると、沢山の海兵達が横に並んで敬礼をしていた。



「…何ですかこれ?」



 多分今の俺の顔はかなり間抜けだろう。
 クザンさんって帰ってくる度にこんな感じで出迎えられてたっけ?昔も出迎えた事なんてないけど。

「言っておくがおれへの敬礼じゃないぞ。新しい七武海のお前への敬礼だ」

「まだ正式に決まった訳でもないのに、随分仰々しいですね」

「お前は海軍にいた頃から有名だったしな。そのお前がサカズキとやり合って逃げ切り、おれとやり合って重傷を
 負わせたとなれば、この反応も不思議じゃないだろ」

 …全く望んでない理由で有名になってしまったみたいだな。

「ハァ…んで、今からどこに行くんですか?五老星の爺さんのとこにでも行くんですか?」

「見事なまでに失礼だなお前。とりあえずはセンゴクさんのとこだ」

「うぃーっす」



 そんな話をしながらセンゴクさんの所に向かう。しばらく歩いていると、目的の部屋に着いた。

「センゴクさん、入りますよ」

 そう言ってドアを開ける…確か昔ガープさんもノックしてなかった気がするが。そんな適当でいいのか?

 開けられたドアの向こうには、久し振りに見る顔があった。相変わらず頭にカモメ乗せてるんだな。




「久し振りだな…ラーズ」

「お久し振りです、センゴクさん。今回は作戦負けしましたよ」

 変わらない姿で椅子に座っているセンゴクさん。でも、前よりちょっと老けたか?

「そう嫌味を言ってくれるな。そもそも青雉にお互い死にかける程戦えなどと言っておらん」

 …ん?

「どういう事ですか?クザンさん」

 俺はクザンさんを睨む。

「いやー本気出すつもりはなかったんだが、お前が予想よりかなり強くなってたからああでもしないと倒せなかった
 んだよ。おれも危なかったしさ」

「やれやれ…んでセンゴクさん。俺は今から七武海って事なんですか?」

 そうしてセンゴクさんの方を向く。

「そうなるな。何か問題でもあるのか?」

 ありますよそりゃ、俺とナミを引き離したんだから。まァ今更言っても変わらない。

「…まァ色々とありますけど。とりあえずは何かしら召集があるまでは自由にやっていいんですよね?」

「そうだな。すぐに指令が来なければ特に規制はない」

「なるほど…なら、幾つかお願いがあるんですけど」

「何だ?」

「まずは、船足の速いのを一隻準備して貰えますか?今の俺には海を移動する手段なんてないですし」

 とりあえず移動手段が無いとどうにもならないしな。

「ふむ…なるほどな。明日までには用意させよう」

「後は……」




 俺のお願いにセンゴクさんは少し考えていたが、やがて返事をした。

「仕方あるまい。それくらいは認めてやろう。その代わり……」

「…分かりました。んじゃそれでお願いします」

 ちょっと納得行かないが仕方ない。これでもマシと考えるべきか。

「なるべく召集には応じるんだぞ」

「どうせそんなに遠くには行きませんから、用事が出来たら呼んで下さい」

「それとだな」

 まだ何かあるのか?






「アラバスタの国王が王女の誘拐犯としてお前の名前をしきりに叫んでいるのだが…何したんだ?」






 …あんのクソ親父ィ!!少しは空気読めよ!納得してねェのはお前だけなんだよ!

「…適当に流しておいて下さい」

「そ、そうか。まァなるべく国との面倒事は避ける様にな」

「気をつけます」 

 そうしてセンゴクさんとの面会は終わった。




「…お前何考えてるんだ?」

 クザンさんが気になるのはさっきのセンゴクさんとの会話の事だろうな。

「秘密です。まァ別に変な事じゃないですから。センゴクさんの条件も呑んだんですしね」

「あんまり派手に暴れるなよ。センゴクさんも…」

「分かってますよ。俺の事気にかけてる事くらい。礼儀くらいはわきまえてるつもりです」

「ならいいんだがな」

 廊下を歩きながら話していると、向こう側からまた知った顔が出て来た。




「おやぁ〜久し振りだねぇ、ラーズ君」

「ご無沙汰ですね、ボルサリーノさん」

 相変わらず飄々としてるなこの人。

「まさかラーズ君が七武海になるなんてねぇ〜」

「俺もそんな事考えてなかったですよ」

「まぁわっしら海軍はラーズ君に借りもあるし、君のやりたい様にやればいいさ〜」

 借り?もしかしてクロコダイルの事でも言ってんのか?

「まァのんびりやらせて貰いますよ」 

 ボルサリーノさんは手を振りながら歩いて行った。


 再びクザンさんと歩く。

「これからどうするんだ?麦わらの一味なら、多分「ウォーターセブン」に向かったと思うが」

「今俺が「ウォーターセブン」に行ったら、今度こそアイツ等が全滅するでしょ。それより幾つか気になる所に
 行ってこようと思います」

「…だったらいいんだがな」

「そうだ。クザンさんにお願いがあるんですけど」

「何だ?」

「サカズキさんの事です。あの人が俺だけ追ってたんならいいんですけど、もう俺に手出し出来ないじゃないですか。
 その分が一味に向かうと厄介なんですけど。あの人どこ行ったんですか?」

「サカズキか…サカズキなら」

 クザンさんは俺の後ろの方を指差した。










「お前の後ろにいるぞ」
「ここじゃあ」


「うわっ!!」

 俺の真後ろにサカズキさんがいた。

「なんじゃそんなに驚いて」

「ローグタウンであんだけ痛めつけられてたら驚きもしますよ」

「ふんっ、やっぱり貴様は厄介だったな。あそこで仕留めておくべきじゃったのお」

「まァ今は七武海なんて称号貰いましたから。もう襲ってこないで下さいね」

「…わしは貴様以外の小物には興味はないわ」

「だといいんですけど」

「相変わらず生意気な奴じゃ」

 鼻息を荒くしながらサカズキさんは去って行った。小言言いに来たのかあの人?



「小言なんぞ言いに来とらんわ」

 遠くで俺を睨みながら喋っている。あの人俺の心でも読めるのか!?つーかさっき去って行ったじゃんよ!全く。




「クザンさん、いるなら早く教えて下さいよ。心臓飛び出るかと思いました」

「いやー何か楽しくなりそうだったからな。まァあれならサカズキの心配も無用だろ」

「どうでしょうね。それより何で一日で海軍のトップ全員と顔合わせる事になったんですか?」

「みんなお前の事が気になるんじゃないのか?」

「サカズキさんだけは意味が違う様な気がしましたけど」

「まァそうかもな」

 全く、何て趣味が悪いんだこの人は。まァとりあえず顔見せも終わったし、もうする事はないな。
 クザンさんとも別れ、明日を待つ。


「さて、どこから行くか」





 そんな事を考えながら次の日、センゴクさんに用意して貰った小型の船の所に行く。
 どれどれ、船底には海楼石も敷いてあるし、蒸気機関で両側の外輪が動くのか。これなら俺の炎を利用してガンガン
 進んでいけそうだな。気に入ったよセンゴクさん。電伝虫も置いてあるみたいだが、あんまり鳴って欲しくはないな。
 どうせ碌な用件じゃないだろうし。


 まずは寝てる間に考えてたとこに行こう。マリンフォードからなら一時間もあれば着くだろうし。
 永久指針も幾つか用意してあるし準備はオッケーだ。


「さっさと出発するか。他にも行くとこあるし」




  第一に目指す先は、シャボンディ諸島。


 

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