小説『幼馴染みは航海士!?』
作者:じゃパーン()

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  〜〜ゾロside〜〜


 とりあえず日課の鍛錬も終わったし、少しゆっくりするか。船にはおれ以外誰もいねェし一眠りしよう。


「失礼」


「ん?」

 甲板で寝ようとしてたら、誰かがメリー号に乗ってきた。あの鼻は…なんだウソップかよ。戻って来たんなら
 一声かけやがれ、ったく。


「んー大分傷ついておるなァ。マストも差し替えじゃな…」


 アイツ何か口調変わってねェか?大体鼻が四角いし…鼻が四角い?鼻が四角い!?

「ちょっと待てェ!誰だてめェは!?」

「おォすまん、起こしてしもうたか」

 慌てて起き上がる。一体どこのどいつだ!?ウソップの親戚か?

「ワシはカク。お前達の仲間から船の修理依頼を受けてな。一足先に査定に来たんじゃ」

 …なるほどなァ。なら専門家に任せておくか。しかしあの鼻は何なんだ?

「何かあったら呼んでくれ」

 そうしてまた一眠りしようとすると、何かまた騒がしくなってきた。今度は何だ?



「着いたぞフランキー!これがおれ達のゴーイング・メリー号だ!」

「きっちり見てくれよな!」

「今週のおれは特にスーパーだからな!任せておけ!」

 ルフィと…今度は間違いなくウソップだな。鼻が丸いし。後一人は…変態か?何で海パン一丁なんだ?
 三人は船に上がってきた。

「おいルフィ、誰だソイツは?」

「コイツはフランキーってサイボーグなんだ!パンチは飛ぶし火は吹くしすげー奴なんだぞ」

 コイツ等は何しに町に行ったんだ?

「ルフィ、説明が足りねェ。このフランキーは解体屋で、船を見る目もあるらしいんだ。それで仲良くなったついでに
 メリーを見て貰おうと思ってな」

 そういう事か。でも船には四角鼻がすでにいるぞ。


「何じゃ騒がしいと思ったら……フランキーか」


「あん?何でこんな所に”山ザル”がいるんだよ」

 四角鼻と海パンの間に険悪な空気が流れる。コイツ等は知り合いなのか?

「ワシはこの船の査定じゃ」

「奇遇だな。おれも船の具合を見に来たんだよ」

「ほう、ならどちらが正確に査定出来るか勝負するか?」

「上等だ!スーパーなおれ様に敵うと思うなよ!」

 何か二人でやり始めたんだが…大丈夫なのか?

「おいルフィ、ウソップ。アイツ等大丈夫なのか?」

「あの四角い鼻はともかく、フランキーは問題ないと思うぞ」

「フランキーに任せとけば大丈夫だ!」

 ルフィの奴は何であんな海パン変態みたいなのばっかり見つけてくるんだ?まァ考えても仕方ねェし、
 査定とやらが終わるまでゆっくり待つとするか。




 しばらく待っていると、二人が船内から戻ってきた。どうやら終わったみてェだな。


「ひとまず査定は終了じゃ」

「……」

 四角鼻が話しているが、海パンは無言のままだ。どうしたってんだ?

「メリーはどうだった?修理にどれくらいかかりそうなんだ?」

 ウソップが四角鼻に聞いている。

「そうじゃな…手っ取り早く言うと、この船は戦いのキズが深過ぎる。どこかで一度激しく損傷した事はないか?」

 思い当たるとすれば…ジャヤでベラミーの奴等にやられた時か。あの時はメリー号を真っ二つにされかけてた
 からな。他にも色々あるだろうし。

「山登ったり空飛んだり色々あったからなー。ちゃんと直してやりてェんだ。もしかしてけっこう時間かかんのか?」

 ルフィが四角鼻に尋ねている。ウソップも何だか落ち着かないみてェだな。





「いや…はっきり言うがお前達の船は、ワシらの腕でももう直せん」





「「「なっ!?」」」

「例え無理矢理修理したとしても、次の島に辿り着く前に確実に沈む」

 確かに少しガタがきてるとは思っていたが、まさかそれほどとはな。ルフィも驚いているが、それより
 驚いてるのはウソップだ。

「おいおい、冗談だろう?メリーはここまでだってちゃんと航海してきたんだぜ?
 それが…それがもう限界ってのかよ!」

 声を荒げたウソップが四角鼻に詰め寄る。


「待ちな、長っ鼻」


 さっきまで黙っていた海パンがウソップを止める。

「残念だがおれも山ザルと同じ意見だ。この船はもう限界を迎えている」

「おいフランキー!冗談でもそんな事言うんじゃねェよ!」



「冗談なんかじゃねェ!!」



 海パンの返しに怯むウソップ。

「おれだって大事にされてきたであろうこの船を、何とかしてやりてェとは思う。だが、それでもこの船は
 これ以上の航海は出来ねェ」

 二人が言うって事は本当なんだろうな。しかしメリー号に何が起こってるっていうんだ?


「お前達、”竜骨”って分かるか?」

 海パンが話を続ける。竜骨?何だそりゃ?ルフィもどうせ知らないだろうが。

「…船底にある大きな木の事か?」

 ウソップは少しは知ってるみたいだな。

「そうだ。竜骨は船首から船尾までを貫き支える、船においては最も重要な木材だ。船作りは竜骨を中心に
 緻密に組み上げていく。言ってしまえば、竜骨は船にとっては「命」だ。その「命」が酷く損傷したからって
 簡単に変える事は出来ねェ。仮にこの船そっくりな船を作ったとしても、それはあくまで似ているだけで、
 世界のどこでも同じ船を造る事は出来ねェ。使う木材が同じって事はねェからな。この船はその大事な竜骨が
 直せない程に損傷してるんだよ」

 …そんなに重傷だったのかメリー号は。海パンの隣にいる四角鼻が黙ってるって事は間違ってないんだろうな。


「そんな……」


 ウソップは今のが相当ショックだったみたいで俯いている。

「おれは信じねェ!メリーはお前等が思ってるよりずっとすげーんだ!今までだって、これからだってメリーは
 絶対に頑張ってくれるんだ!」

 ルフィもウソップと同じ気持ちみてェだな。おれだって、出来るなら何とかしてやりてェが…






「ふざけるなよ兄ちゃん!!」






 海パンがさっきより大きな声で叫んだ。


「この船が沈むまで乗り続ける気か?それでお前は満足なのか?なら…この船の気持ちはどうなる!?
 お前達が愛してくれたこの船が、お前達を一緒に沈めてしまう事になるんだぞ!それが船にとってどれだけ
 辛い事か分かるのか!?そんな事になったらこの船には後悔しか残らねェんだぞ!!」


「!!」

 海パンの言葉にルフィは反論出来ないでいる。この海パンも、見た目は変態だが言ってる事は正しいと思う。

「お前達は死にかけた仲間に鞭打って、まだ戦わせようってのか?この荒れ狂う偉大なる航路相手に」

「……」

「よく考えるんだ兄ちゃん。船と人間は違う。船は痛みを抱えて走るが、いつか必ず限界が来る。お前達が
 この船を仲間と思うんなら、楽にしてやれ。この島まで航海出来たのも奇跡みたいなもんだ。この船は良く頑張ったと
 思うぜ。きっとお前達の為にここまで必死に走ってきたんだろうよ」 

 おれ達は何も言えなかった。信じたくねェ気持ちはあったが、この海パンの言葉はおれ達の胸に突き刺さった。
 ラーズだけじゃなく、メリー号にもおれ達は守って貰ってたんだな。


「…わしの言いたい事はフランキーが言ってしもうたし、一旦お前達の仲間とアイスバーグさんに報告をしてくる
 からのう。どうするかはお前達で決めてくれ」

 そう言って四角鼻は去って行った。それでもおれ達は黙ったままだ。

「お前達のこの船への愛情は十分伝わった。この船はお前達に乗って貰って幸せだっただろうよ。山ザルの言うとおり、
 この船をどうするかは兄ちゃん達が決めるんだ。アイスの野郎でも、おれでも手伝える事があったら呼び出しな。
 ただ、これだけは言っておくぞ。この船は、もう限界だ」

 海パンもそうして去って行った。アイツ何だか涙ぐんでなかったか?




「お前…もう駄目なのか?」




 ウソップの言葉だけが、おれ達とメリー号に響き渡った。








  〜〜ナミside〜〜


 そんな…メリー号がそんなに酷い状態だったなんて。

 私達は造船所を後にして、メリー号の所に戻っている。さっき四角い鼻のカクさんからメリー号の話を聞いた。


「あの船はもう航海を続ける事は出来ん」

 どうもルフィとウソップも査定の場に居合わせてたらしく、二人も話を聞いたみたい。相当ショックを受けてたって
 言ってた。ウソップは特にメリー号に思い入れがあるから心配ね。
 

「この先の海は更に厳しくなるぞ」


 アイスバーグさんも言っていた。確かに、このお金で新しく船を買い替えた方がいいのかもしれない。だけど、
 そんな簡単に割り切れるモノじゃない。今までメリー号には沢山頑張ってきて貰ったんだから。

「ルフィさんは…どう決断するのかしら?」

 ビビも話を聞いてから落ち込んでいた。

「おれも未だに信じられねェからな。東の海からここまで渡ってきたってのによ」

 サンジ君も少し動揺してるみたい。ラーズがいなくなって、今度はメリー号がダメだって言われて。何だか
 私達の旅に少しずつヒビが入っていってるみたい。

「ひとまず船に戻りましょう。話はみんなが揃ってからでも出来るわ」

 ここで議論してても仕方がない。町の入口に戻って来て、レンタルしてたヤガラを返して船に戻る。



 船にはロビンとチョッパーも帰ってきてた。ロビンはあまり慌ててないみたいだけど、チョッパーは話を聞いた
 みたいね。こっちに急いで走ってきたし。

「ナミー!メリーがもう駄目って本当なのかー!?おれメリー号が好きなのに!」

「チョッパー…」

 私はチョッパーに何も言ってあげる事が出来ない。

「ルフィ、お前の考えはどうなんだ?」

 サンジ君がルフィに尋ねている。

「…少し考えさせてくれ」

 ルフィは下を向いたまま静かに返事をした。すぐに答えなんて出せないよね。


「メリー…」


 ウソップも甲板に座り込んで、俯いたままだ。やっぱりウソップにはショックが大きいみたい。だけど、
 私達じゃ上手く慰める事は出来ない。メリー号の状態をしっかり聞かされてしまったから。


 「今日はひとまず休もう」と、ゾロの言葉にみんな従う。これからどうしたらいいんだろう?
 ラーズなら、ラーズがいてくれたら何かいい答えが出たのかな?


 ……ダメだ。何かあったらすぐにラーズの事ばっかり考えてしまう。もうラーズは船にいないのに、つい頼ろうと
 してしまう。今まで私達が困った時はいつだって答えを導いてくれていたから。


 頭の中がモヤモヤしたまま、その日は眠りに着いた。私達がこうしている間に、事件が起きている事に気付かず。

-94-
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