第5章 檻の中
新が目を覚ました。
どうやら気絶していたようだ。
ここはどこだ?
やけに薄暗い。
夜になったのか?
それにしても地面が固くヒンヤリしている。
ガラスの無いかわりに鉄格子が取り付けられた細い窓からは、光が差し込んでいる。
という事はまだ昼だ。
じゃあ何故こんなに薄暗いんだ?
それよりここはどこだ?
確か、俺は警察に捕まって・・・・・
新が体を起こしてバッと周りを見た。
やはり。
目の前には何本もの鉄格子が張り巡らされており、そのすぐ外には監守らしき人物がイスに座りながら眠っている。
そうか。俺は捕まったんだな・・・・・。
新は改めて思った。
このまま俺は家族に会えないままここで生涯を閉じるのか?そんなの嫌だ・・・・・。
新はもう生きる気力も失ったようにうつろな目をして呆然と立ち尽くした。
すると、後ろから男の声がした。
「やっと気がつきましたか。」
新が振り返ると自分と同じ位の年の眼鏡の男が座っていた。こいつも捕まったのか・・・・・。
「ここはどこなんですか?」新が聞くと、
「見れば分かるでしょ?刑務所ですよ。」と男が返した。まぁ。そりゃそうだ。
「これから僕らはどうなっちゃうんですか?」と、新が聞くと、
「さぁ。運が良かったら懲役何年か、運が悪かったら死刑でしょうね。」男は言った。
新は再びうつろな目をして、黙り込んでいると、男がいきなり、
「私の名前は加藤 大。あなたは?」と聞いてきた。
そんな質問に答える気力もない新だったが、答えないと同じ檻の人物だ。後々気まずい。新は、
「友田 新。」と言って再び顔を戻した。
「何で捕まったんですか?」加藤は再び聞いてきた。うるさい男だ。俺は今それどころじゃないのに・・・・・。
「ネット上で女性の話をした疑いってだけでこのあり様ですよ。ほんと馬鹿げてますよ。」
すると、男が声をいきなり弾ませ、
「実は僕もそうなんですよ!!いやぁ、同じ理由で捕まった人と檻が一緒なんて奇遇だなぁ。僕は、「夫の日苦労」っていう掲示板で書き込んで・・・・・」
!?
夫の日苦労!?
それは、俺が毎日使ってたサイト名じゃないか!!
「ぼっ、僕もその掲示板の住人でした!!「Q」っていう名前で!!」新もいきなり声を弾ませた。
「「Q」!? QってあのQさんですか!?僕、「WWW」です!!!」加藤は歓喜の声で叫んだ。その時、眠っていた監守が起き、「うるさいっ!!!」と怒鳴った。
加藤は小さな声で、
「いやぁ、何て喜ばしい!!まさか、あなたと会う事が出来るなんて!!!」
「それはこちらのセリフですよ!まさかこんな所で・・・。」興奮気味に新も言った。
「あなたに書き込みをしてる途中、すぐに警察が突入して来ましてね。急いで返信だけはしたんですが、ちゃんと届いてました?」加藤が言うと、
「勿論! まぁ、結局捕まってしまったんですが・・・・・。」と、新は申し訳なさそうに言った。