第9章 到着
「あの加藤って言う奴、今朝海に捨てられたんだと。」
そんな噂が耳に入ってきた。
人生の最後くらい、家族に看取られて死にたかっただろうが、
加藤は、死に顔すら見せられないでこの世を去った。
昨日の惨劇から1日経ち、新は自室には戻らず、廊下のベンチで寝た。
自室に戻ると、池田を殺しそうで怖かった。
俺がはむかった所で、加藤の二の舞だろう。あまり無茶は出来なかった。
彼との思い出が頭をよぎる。
決して長い付き合いじゃないが、本当に良い奴だった。
新は考えれば考える程、余計涙が込み上げた。
家族もなくし、友人もなくし、俺には何も残らないのか・・・・・。
新は深く落ち込み、寝る事が出来なかった。
そして朝が来る。
一睡も出来なかった新は、そのまま食堂に一足先に進んだ。
すると、もう朝食はテーブルに置かれていたが、全員が集まり合掌しないと食べられないので、新は一人席につき、時間まで待った。
数分経ち、ドヤドヤと人が集まり出した。
その中には池田もいる。新は目を合わせないように下を向いた。
それからまた数分が経ち、やっと合掌をし食べ始める。
しかし、今日は珍しく、あの大崎が立ち上がったかと思うと喋り出した。
「今日は言うまでもない。もう1時間もすれば北海道につく。女共はもう所定の場所で我らを待っているだろう。その場所に着き次第、戦闘開始だ。」
所定の場所?
もうどこで戦闘するか決まっているのか。
多分、男性国の総理、尾高と、女性国の総理が決めた事だろう。
もう、そんなのどうでもいいが・・・・・。
とにかく、今は一瞬でも嫌な事は忘れたかった。
これ以上考え込んでいると、頭がおかしくなりそうだ。