小説『男女戦争』
作者:UMA.m()

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第10章 一人の男





何時間歩いたか。
やっと森を抜けた。
道中、A,Bチーム含め、地雷で数十名の命が奪われた。死んでない者もいたのだが、足を無くしているので足手まといだと言う事で、全員置き去りにされた。むごい話だ。

「もう森を抜けた。ここには地雷は設置されてないだろう。」大崎もホッと一息つく。

森を抜け、目の前に広がったのはどこまでも続く大草原だ。
ここが戦火で真っ赤になるのか。新は一つ溜め息をつく。

「あそこの丘の向こうに、女性軍が待機している。空砲とともに戦闘開始だ。いいな。」大崎がそう言った。
向こうの方に大きめの丘が確かにある。あそこに・・・・・。

すると、バズーカ砲のようなものを持ったAチームの一人が大崎の元にやってきた。
「よし。では、Cチームに今から武器を配る。間違っても変な行動を起こすなよ。おかしな行動をとった奴は撃つからな。」大崎がそう言うと、近くに停車していた軍事トラックから荷物が降ろされた。
そして、Cチームの一人一人に武器が配られた。

サバイバルナイフ
手璃弾3個
マシンガン
ピストル
予備の弾
包帯

全て持つとかなりの重さだ。

「いいか。それは貴様らの為に総理が、国が用意なさった物資だ。丁寧に使うのだぞ。」大崎は告げた。

いよいよか・・・・・。
思えば、短い人生で色々な事がありすぎた。
今じゃ、こんな軍服を着て戦争ごっこか・・・・・。
こんな非日常な人生・・・・・望んだ覚えなんか・・・・・。

新は深く考える。

そんな時、一人の男が声をかけてきた。同じCチームだ。
「いよいよだな。あんた、昨日友達目の前で殺されてた人だろ。」

いきなり喋ってきたと思うと、なんて馴れ馴れしい奴なんだと、新はその男をチラッと見た。
見ると、どう見ても自分より若い男だ。鼻や耳にピアスをつけている事から、チャラついた奴だと言う事が分かった。
困った。こういうタイプは苦手なんだが・・・・・。

「いやな?人目あんたと話したくて。加藤大、あいつの名前だろ?“夫の日苦労”では「WWW」だった男だ。」

“夫の日苦労”・・・・・?
何でこいつが知ってる・・・・・?しかも、加藤のユーザーネームまで・・・・・。
まさか・・・・・こいつも・・・・・?

「俺、あそこで書き込みしてたんだけど。「スパイク」って名前でさ。」
新はその名を聞いてハッとする。
いた。確かにそんな名前の奴がいた。
掲示板の中でも馴れ馴れしかったあいつは、みんなからも意味嫌われていたが加藤だけはよく接していたな。
そいつは、女性がいなくなった事を話す訳でもなければ、家族の事を話す訳でもない、サイトの趣旨を理解してない感じだった。
書き込んできたと思えば、「へぇ〜そうなんだ。」とか、「wwwww」だとか、一言返して来るだけで、
「今日のアイスクリームめっちゃうまかった!!」とか、関係ない話を書き込んでいた。

「戦艦の中で加藤っちとあった時はビックリしたよ。まさかパソコンの中の人と会うなんてね。あんたとも数回話した事あるよな。」男は言う。

確かに話した事はあるが、それは加藤が仲良く話してたからしょうがなく・・・みたいな感じで・・・・・。

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