小説『男女戦争』
作者:UMA.m()

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「あんたの事は加藤っちからよく聞いてるよ。凄い良い奴だって。だからそんな奴の顔、人目見たくてさ。声掛けたって訳。」男はそういう。

それでも新は口を開かなかった。
どうしてもこういうタイプは生理的に受け付けない。
夫の日苦労で、真剣に悩んでいた男達を尻目において、関係無い話ばかりしていたこの男だ。
ろくな奴じゃないとは分かりきっていた。
のだが・・・・・。

「あっ、まさか怒ってる?無理もないよな・・・・・。どうみても俺、空気読めてなかったもんな。」
男は溜め息混じりにそういう。何だ。自分で気付いてはいたんだな・・・・・。
「いやぁ、実は俺、家庭なんて持ってない癖にあそこの掲示板いってて・・・・・、でも、どうしても中に入りたかったんだよ・・・・・。だって・・・・・。」
「だって・・・・・?」そこで初めて新は口を聞いた。

「俺には妹がいたんだが・・・・・。案の定、あの法で別れ離れになってしまって・・・・・。俺ん家は、妹と俺と親父の3人で暮してた。お母さんは病気で早くから亡くしてて、親父が一人で俺達育ててきた。だけど、あの法で妹がいなくなってから1年後、親父は死んだよ。最後まで妹に会いたいって、泣いてたよ。」
そうか・・・・・。新は少し同情した。

「だから、その苦しみから逃げる為にあのサイト見つけて、気を紛らわしていたんだ。」
話すうちにその男は目に涙をためていった。

新は思った。
俺は少し勘違いしてたのかもしれない。
こいつも俺と一緒で、男女決別令の被害者なんだ。仲間同士なんだ。

新はフッと息を吐き、男に手を差し伸べた。
「ごめん。君の事、色々と勘違いしてたよ。お互い、頑張ろうよ。僕は友田新。よろしくね。」新は言った。
男は顔をパァっと明るくさせ、目を輝かせた。
「お、俺は西田 輝幸(てるゆき)って言います!!よ、よろしくっ!!」相変わらず馴れ馴れしいが、まぁ良しとしよう。
二人は強く手を握りしめた。

ここにまた変わった友情が芽生えた。
でも、喜んでばかりもいられない。戦いはまだ始まってすらない。
これから始まる戦争で生き残れるのか。それとも・・・・・。

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