小説『男女戦争』
作者:UMA.m()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

ハルカと長々と話している内に、やがて周りが静かになった。





男女戦争 最終日終了。





草むらから顔を出すと、両軍が撤退をしていく。
「私、いかないと・・・・・。」ハルカがそう言って立ち上がろうとした。
「待てっ!どこに行くんだ!?」新はそう言ってハルカの腕を掴んだ。
「どこ行くって・・・・・、女性軍に戻らないと、遅れたら拷問されるんだよ?」ハルカは困り顔で言った。
「ダメだ!!もう絶対離さないぞハルカ!!もう家族と離れるのは嫌なんだよ俺は!!」新の手に力が入る。
「私だって、父さんと一緒にいたいよ!!でも、そういう訳にはいかないじゃん!!」ハルカは涙を流しながら言った。
「いや、大丈夫だ・・・・・ハルカは父さんが絶対守る。必ずだ・・・・・」
「父さん・・・・・」ハルカは再び静かに草むらに入った。
「父さんに考えがある。イチかバチかの賭けだが、やってみるしかない。」新はハルカに強く言った。
それを聞いて、ハルカも強く頷く。

新は周りを確認した。
両軍がすでに撤退しており、周りに残ったのは両軍の死体だけだ。
新は近くで倒れていた男性軍兵士を見た。
「よし。あれだ。ハルカ、あいつの服を着るんだ。」
「!?     父さん、それって!!」ハルカは全てを察した。
なんと、新はハルカを男性軍に忍び込ませようというのだ。
「父さん!!いくらなんでも無茶だよっ!!」ハルカが首を横に振った。
それは新も百も承知である。しかし、ハルカを男性軍に忍び込ませるにはそれしかなかった。
「あぁ、無茶なのは分かってる。でもそれしかないんだ。お前と一緒にいれる方法は。」
ハルカは黙ってしまったが、数秒考えると、頷いた。
「よし。ありがとうハルカ。お前は・・・・・強くなったな。」
新は周りを警戒しながらソっと立ち上がり、倒れた男性軍兵士の近くに近寄った。
後からハルカも着いてきた。
新は男性兵士の軍服を脱がした。
「よし、ハルカ。急いで着るんだ。早くしないと処理班が死体を片付けにくるからな。」
新はハルカに脱がした服を渡した。だが、シャツ一枚になったハルカは何かうろたえている。
「と、父さん・・・・・、胸・・・・・」ハルカは恥ずかしそうに言った。
「あ、あぁ、そうだな。お前、見ないうちに胸も大きくなったな。お前が中1の時から会ってないから。3年経てば成長もしてるよなぁ。」新は冗談混じりに言った。
「もう・・・・・父さんってば・・・・・それよりどうするの?」ハルカは呆れ顔で言った。
「そうだな。胸で女だってバレたら元も子もないからな。ちょっと後ろ向いてみな。」
新はハルカに後ろを向かせ、腰から包帯を取り出した。
「ちょっと痛いかもしれないが、我慢してくれ。」
新は包帯をハルカの胸をシャツの上からキツく巻き始めた。
「痛い痛い!!父さん、痛いってば!!」
「我慢しろ!こうしないと男性軍に忍び込めないだろ。」
新はハルカの胸を極限まで包帯で締め付けた。可愛そうだが仕方ない。
「よし、これで胸でバレる事もないだろう。」
「もう・・・・・」ハルカはしかめた顔で言った。サラシにまだ慣れてないので痛いようだ。
「んじゃ、この軍服を着て、ズボンも着替えろ。お前の脱いだ奴はこいつに着させとく。処理班に怪しまれたら危ないからな。」新はハルカの脱いだ軍服を死体に着させた。
「父さん、着替え終わったよ。」ハルカが言った。
「どれどれ・・・・・」新が顔を向けると、そこには男性軍の軍服を着こなしたハルカが立っていた。
「よしよし。似合ってるぞハルカ。全然女性に見えない。男性が様にになってる。」
「良かった。」ハルカも安心したようだ。

さて、着替えも終わり、いよいよ男性軍に忍び込む時が来た。
森を抜け、目の前には男性軍の戦艦。
「いいかハルカ。極力喋らないようにな。声でバレたらいけないからな。」
「分かってるよ・・・・・」
新は、男性軍に入ってからの注意事項やその他もろもろの事をハルカに伝えた。
何回も聞いたとハルカもうんざりした様子だった。
「帽子を深くかぶれ。絶対脱ぐんじゃないぞ。」
「うん。」

いよいよ戦艦に入る。
新とハルカに緊張が走る。
「打ち合わせ通りやれよ。」
「分かってるって。」
ハルカは新の肩に手をかけた。足を負傷した真似をする。
そのまま戦艦に近づく。
戦艦内入口に見張り。最初の難関だ。
「誰だ!!」見張りがこちらに気づき銃を向ける。
「すまん!!負傷した兵士を運んでて遅くなった!!」新は言う。
「・・・・・ふん、入れ。」
どうやら最初の関門はクリアしたようだ。うまく見張りを騙せた。
そのまま戦艦に入った。
「やったね。父さん。」
「しっ!!喋るなって言ったろ。気づかれたらどうする。」
新はハルカに肩を貸したまま部屋を探した。
自分の部屋には池田がいる。なので空き部屋を探した。
そういえば池田に撃たれて死んだ加藤の部屋が空いてたはずだ。
加藤の見張りのAチームの兵士も男女戦争で死んだはずだ。
「よし。この部屋にしよう。」新は加藤の部屋に入った。造りは新の部屋と全く一緒だ。
やっと一息つける。戦艦内で数人の兵士にあったが誰もハルカを不審に思わなかった。
「よくやったぞハルカ。もう安心していいぞ。」
「ふぅ・・・・・。」ハルカは帽子を脱いでベッドに腰を下ろした。

-46-
Copyright ©UMA.m All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える